78%のICT職種でAIスキルが必須化? Cisco、Microsoftなど大手10社が調査結果を発表:技術スキル不足が「危機的レベル」に
IT業界と人材業界の大手10社が参加するAI Workforce Consortiumは、G7諸国の求人データを調査、分析したレポート「ICT in Motion: The Next Wave of AI Integration」を発表した。
IT、人材に関するコンソーシアムであるAI Workforce Consortiumは2025年9月16日(米国時間)、G7(先進7カ国)諸国の求人データを調査、分析したレポート「ICT in Motion: The Next Wave of AI Integration」(変化が進むICT:AI統合の次の波)を発表した。同レポートは、AI(人工知能)関連職種がICT(情報通信技術)人材市場の成長をけん引していることを明らかにしている。
なお、AI Workforce Consortiumは、Cisco Systemsが主導し、Accenture、Cornerstone、Eightfold AI、Google、IBM、Indeed、Intel、Microsoft、SAPが参加している団体だ。
G7主要企業が示す未来のICT人材像とは
このレポートはG7諸国(カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国)における、2024年7月〜2025年6月のCornerStoneとIndeedの求人データに基づいている。50種類のICTと関連サポート職種について分析しており、AIに特化した新しい職種、地域の雇用創出、労働者が競争力を維持するために必要なスキルに関する新たな洞察を提供している。
レポートの主なハイライトは以下の通り。
- AIスキルが広範なICT職種の応募要件に
- AI職種がICT人材市場の成長をけん引
- AI倫理およびガバナンススキルが引き続き重要
- 技術スキル不足が深刻化、人間的スキルの重要性が増大
- 専門的なAIスキルの需要が急増
AIスキルが広範なICT職種の応募要件に
調査対象のICTおよび関連サポート職種の78%(約38職種)では、その職種に出されている求人情報のうち10%以上が「AI技術スキルが必須条件」となっている。
AI職種がICT人材市場の成長をけん引
需要の前年(2024年)比増加率が最も高い10種類のICT職種のうち7つが、AIと直接関連している。その中には「AI/機械学習(ML)エンジニア」「AIリスクおよびガバナンススペシャリスト」「自然言語処理(NLP)エンジニア」が含まれる。
AI倫理およびガバナンススキルが引き続き重要
強力なエージェントAIの急速かつ広範な導入を背景に、AIガバナンススキルの需要は2024年比で150%増、AI倫理スキルは125%増となっている。同コンソーシアムは「これは技術、法律、倫理が交差する領域における専門知識、ノウハウの必要性を反映している」と分析している。
技術スキル不足が深刻化、人間的スキルの重要性が増大
生成AI、大規模言語モデル(LLM)、プロンプトエンジニアリング、AI倫理、AIセキュリティなどの領域では、スキル不足が危機的レベルに達している。その一方で、コミュニケーション、コラボレーション、リーダーシップ、批判的思考、問題解決などの人間的スキルは、新しい技術の責任ある安全な導入のためにますます重視されている。
専門的なAIスキルの需要が急増
AI分野ではチャットbotからエージェントへの転換が急速に進んでいる。これに伴い、専門的なAIスキルの需要が2024年比で急増している。例えば、「LLMのセキュリティおよびジェイルブレークに関する防御スキル」は298%、「基盤モデルの適応スキル」は267%、「責任あるAIの実装スキル」が256%、「マルチエージェントシステムの運用スキル」が245%も増加している。
つまり、G7主要企業が示す未来のICT人材とは、技術的なAIスキルを前提に、人間的スキルや倫理、ガバナンス能力を複合的に併せ持つ人材のことだと言える。
このニュースのポイント
Q: AIスキルが求められている割合は?
A: 対象としたICT職種50分類のうち、78%(約38職種)で求人の10%以上にAI技術スキルが必須条件として記載されていた。
Q: 技術/人間的スキルに関しての課題と傾向は?
A: 生成AI、LLM、AIセキュリティなどでスキル不足が深刻。一方で、コミュニケーションや批判的思考、リーダーシップなど「人間的スキル」の重要性が増している。
Q: 特に需要が急増している専門スキルは?
A: 「LLMセキュリティ、ジェイルブレーク防御」が298%増、「基盤モデル適応」が267%増、「責任あるAI実装」が256%増、「マルチエージェント運用」が245%増。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
AIがICTの仕事に与える影響とは? CiscoなどIT/人材大手9社の団体が調査結果を発表
IT業界と人材業界の大手9社が参加するAI-Enabled ICT Workforce Consortiumは、AIがICTの仕事に与える影響について分析し、ICTワーカーがAIを活用して業務を遂行できるようにするためのリスキリングやトレーニングの推奨事項をまとめたレポートを発表した。「AIを活用する企業では人材がさらに必要になる」のはなぜか Linux Foundationがレポートを発表
Linux Foundation Japanは、レポート「2025年 日本の技術系人材の現状レポート:技術者採用の動向、AIによるディスラプション、スキルのギャップ」を発表した。クラウドコンピューティングやAIの分野で日本の技術系人材が著しく不足しているとしている。2028年にはソフトウェア開発チームの40%が「非テクノロジー系の学歴」を持つ人になる ガートナージャパンが予測
ガートナージャパンは、ソフトウェアエンジニアリングにおけるAIの位置付けについての見解を発表した。生成AIによって2028年にはソフトウェア開発チームのメンバーの40%がIT以外の分野の経験者になるという。