業界全体が「不確実性による一時停止」作戦を発動、その狙いは? Gartnerが2025年のIT支出額を予測:AI需要でデータセンターシステム支出が大幅増
Gartnerの最新予測によると、2025年の世界IT支出は前年比7.9%増の5兆4300億ドルとなる見通しだ。先行き不透明な状況から新規支出を戦略的に停止する「不確実性による一時停止」という動きがさまざまな業界で見られるという。
Gartnerは2025年7月15日(米国時間、以下同)、2025年の世界のIT支出に関する最新の予測を発表した。2025年の世界IT支出は2024年比で7.9%増加し、5兆4300億ドルに達する見通しだ。
AIの躍進は「企業の支出抑制」の影響を相殺するのか
Gartnerのジョンデビッド・ラブロック氏(ディスティングイッシュトバイスプレジデント アナリスト)は、次のように解説している。
「不確実性の世界的な高まりによって、企業が新規支出を一時停止する動きが見られる。だが、その影響は、AI(人工知能)および生成AIによるデジタル化の取り組みが進展したことで、ある程度相殺されている。例えば、2025年のソフトウェア支出とサービス支出の成長率は『不確実性による一時停止』のために鈍化する見通しだが、データセンターシステムのようなAI関連インフラへの支出は増え続けている」
同氏によると、特にデータセンターの需要が急増しているという。2021年にはほとんど存在しなかったAI最適化サーバへの支出は2027年までに、従来型サーバへの支出の3倍に達する見通しだ。「この傾向は、Gartnerが2025年3〜5月に、北米と西欧のさまざまな業界における売上高5億ドル以上の企業の上級幹部252人を対象に実施した調査結果と合致している」と、同社は述べている。
この調査では、回答者の62%が「AIが今後10年間の競争の行方を定義する」との認識を示している。悪化する環境下において、企業がテクノロジーとビジネス変革に投資する主な理由は「競争力の強化」(64%)だ。
不確実性による一時停止の余波
新規支出を戦略的に停止する「不確実性による一時停止」は、2025年第2四半期の初めからITなどさまざまな業界で見られた。その背景には、経済の不確実性の増大と地政学的リスクがある。前述のGartnerの調査によると、企業の61%は2025年の年初の段階で、2024年同期よりも好調だった。だが、「2025年末時点で年間計画を上回る業績を達成できる」と見込んでいる企業は、24%にとどまる。こうした先行き見通しは程度の差こそあれ、全ての業界で一貫していた。
「この一時停止は、予算削減に起因するものではない。むしろ、新規支出を遅らせるという戦略的な決定だ。ITハードウェアやインフラを取り扱う業界は、価格上昇とサプライチェーンの混乱によって、特に影響を受けている。これに対し、クラウドやマネージドサービスなどの継続的または経常的な支出は、より高い安定性を維持している」(ラブロック氏)
ビジネスリーダーは最大のリスクとして「経済的なショック」(41%)や「地政学的なショック」(32%)を挙げている。一方で、顧客、競争相手、規制当局からの圧力にはうまく対処できると考えていることが調査から分かっている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「幻滅期」の生成AIの影響は? 2025年の世界IT支出が5兆6100億ドルに Gartner予測
Gartnerによると、2025年の世界IT支出は前年比9.8%増の5兆6100億ドルとなる見通しだ。「ソフトウェア企業にとって生成AIは、税金にそっくり」2024年の世界IT支出に関してGartnerが分析
Gartnerの最新の予測によると、2024年の世界IT支出は前年比で7.5%増加し、5兆2600億ドルに達する見通しだ。生成AIが3割を占める世界のAI支出、使い道の2位はデジタルコマース、1位は? IDC予測
IDCの調査によると、2028年までにAI関連の世界的な支出が6320億ドルに達する見込みだという。特に生成AIへの投資が急増し、成長率59.2%を記録する見通しだ。