生成AIが3割を占める世界のAI支出、使い道の2位はデジタルコマース、1位は? IDC予測:2028年までに金融と情報サービス、小売で約45%を占める
IDCの調査によると、2028年までにAI関連の世界的な支出が6320億ドルに達する見込みだという。特に生成AIへの投資が急増し、成長率59.2%を記録する見通しだ。
IDCは2024年8月19日(米国時間)、世界のAI(人工知能)支出に関する調査と予測を発表した。これによると、AI対応アプリケーション、インフラストラクチャ、関連ITおよびビジネスサービスを含むAIへの支出は、2028年までに6320億ドルに達し、2024年現在の2倍以上になるという。特に、生成AIが幅広い製品に急速に組み込まれることで、2024〜2028年の年間平均成長率(CAGR)は29.0%に上るという。
IDCのAIおよびデータリサーチ部門のグループバイスプレジデント兼ゼネラルマネジャーであるリトゥ・ジョティ氏は次のように述べる。「AIを活用した変革は、世界中の組織に明確なビジネス成果と価値をもたらしている。また、組織は従業員体験、顧客エンゲージメント、ビジネスプロセス、業界イノベーションを中心にAI戦略を構築している。信頼性の高いAIツールやテクノロジーの革新が進み、人間と機械の連携の調和が進むことで、AIの大規模な導入障壁は今後も減少し続けるだろう」
生成AIソリューション支出が増加、AI支出全体の3割を占める
同社によると、生成AIは過去1年半にわたって注目されてきたが、生成AIソリューションへの支出は、機械学習、ディープラーニング、自動音声認識や自然言語処理といったAIアプリケーションへの合計支出を下回る見込みだ。しかし、生成AI投資の急速な成長により、このカテゴリーは5年間のCAGRが59.2%となり、AI市場全体を上回る成長を遂げるという。予測期間の終わりまでに、同社は生成AIの支出が2020億ドルに達し、AI支出全体の32%を占めると予測している。
「AI関連の技術支出の中で、ソフトウェアが最も大きな割合を占めることになる。ソフトウェアへの支出は、予測期間の大半でAI市場全体の50%以上を占めるだろう」(IDC)
ソフトウェア支出の3分の2はAI対応アプリケーションとAIプラットフォームに向けられ、残る3分の1はAIアプリケーション開発・デプロイやAIシステムインフラソフトウェアに充てられる。サーバ、ストレージ、IaaS(Infrastructure as a Service)を含むAIハードウェアへの支出は、テクノロジー支出において次に大きなカテゴリーとなる見込みだ。ITおよびビジネスサービスの成長率はハードウェアよりもやや高く、CAGRは24.3%と予測されている。これに対し、AIソフトウェアの5年間のCAGRは33.9%となる見込みだ。
業界別AI支出、最多は金融サービスに
2024〜2028年の予測期間において、AIソリューションに最も多く支出すると予想される業界は金融サービスだ。銀行をはじめとした金融サービス業界は、AI支出全体の20%以上を占めるようになる。次にAI支出が多いのは、ソフトウェアおよび情報サービス業界と小売業界だ。これら3業界を合計すると、今後5年間でAI支出全体の約45%を占めることになるとみられる。最も急速にAI支出が増加する業界は、ビジネスおよび個人サービス(CAGR:32.8%)と運輸およびレジャー(CAGR:31.7%)だ。また、今回の調査レポートが対象としている27産業のうち17業界は、5年間のCAGRが30%を超えると予測されている。
AIソリューションの主要な使い道、トップ5は?
同社は、予測期間の大部分において、AIソリューションの主要なユースケースは「AIインフラストラクチャのプロビジョニング」になると予想している。一方、サービスプロバイダーによる早期投資の影響で、このユースケースは調査レポートに掲載されている他のユースケースの中で最も成長率が低い(CAGR:14.7%)と予測されており、2028年までに幾つかの他のユースケースが追い付くか、追い越す可能性があるという。ここでいう「他のユースケース」には、拡張型不正分析と調査、AI対応の顧客サービスおよびセルフサービスが含まれる。最も急速に支出が増加するユースケースは、拡張型クレーム処理(CAGR:35.8%)とデジタルコマース(CAGR:33.2%)となる。調査レポートにある42のAIユースケースのうち30は、5年間のCAGRが30%以上になると予測されている。

5年間のCAGR(2023年から2028年)に基づくトップAIユースケース(安定価値に修正)(上から、クレーム処理の強化、デジタルコマースの強化、販売計画と見込み客の強化、工場のスマート化、製品要件/設計/コラボレーションの強化、その他)(提供:IDC)
IDCのデータ&アナリティクス部門のリサーチディレクターであるカレン・マッセイ氏は「今回の発表では、ビジネス機能(LoB)に合わせた新しいAIユースケースが全て追加され、各ユースケースに対して生成AIとその他のAI、さらには業界別の視点を提供している。業界別のAIユースケースは、予測期間の終わりまでに全体の支出の27%に達する見込みだが、IDCがAI投資の加速を期待しているビジネス機能は、カスタマーサービス、ITオペレーション、セールスだ」
地域別で見たAI支出額
同社の調査によると、米国におけるAI支出は2028年に3360億ドルに達し、予測期間を通じて全AI支出の半分以上を占めている。米国の生成AI支出は2028年に1080億ドルになると予測されている。次いで、AI支出が多い地域は西ヨーロッパで、中国とアジア太平洋地域(日本を除く)がこれに続く見込みだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
世界の共有クラウドインフラ支出急増、前年比43.9%増に AI投資急増がけん引
IDCは、世界のクラウドインフラ支出に関する調査レポートを発表した。AI関連投資の爆発的な増加により、クラウドインフラストストラクチャ支出額が引き続き増大しているという。「ソフトウェア企業にとって生成AIは、税金にそっくり」2024年の世界IT支出に関してGartnerが分析
Gartnerの最新の予測によると、2024年の世界IT支出は前年比で7.5%増加し、5兆2600億ドルに達する見通しだ。生成AI対応アプリの大規模展開で、世界のクラウドサービス支出が20%以上成長 Gartner予測
Gartnerはパブリッククラウドサービスにおける世界のエンドユーザー支出予測を発表した。生成AIとアプリケーションのモダナイゼーションが支出を後押ししているという。