大阪・関西万博の話題が盛り上がっている。筆者も開幕初週の平日に東京から日帰りで訪れた。国内外の文化と人をまとめて体感でき、とても楽しかった。
ただ、万博関連のITツールは不便だった。スマートフォン向けガイドアプリや地図などもそろってはいるのだが、現地で何度も思った。「紙に印刷してくればよかった」と。
毎回二段階認証、面倒過ぎ問題
まず万博入場チケットだ。マイページにログインすると表示されるQRコードで入場し、予約したパビリオンに入るのもこのQRを提示する。
ただ、万博公式サイトにログインするたび、メールによる二段階認証が求められるのが超面倒だった。セッションがすぐに切れるので、再表示のたびに二段階認証からやり直し。公式アプリで直接表示もできず、公式サイトに遷移して毎回ログインを求められる。
QRコードはスクリーンショットで代用することもでき、万博側もそれを推奨している。だが、会場ではたくさん写真を撮るのでスクショはすぐに埋もれてしまう。
実際、会場でQRコードを出すのに手間取っている人をたくさん見た。一方で、QRコードを紙に印刷して来ている人は、スイスイと進んでいた。
スマホ地図、見にくい問題
会場マップは公式からPDFデータで提供されている。筆者も事前にダウンロードしていたが、使いにくかった。
まず会場が広過ぎて、スマホの1画面にとうてい収まらない。だが、ピンチアウトしながらだと見づらい。さらに、マップの建物には「C-1」などの記号が書かれ、その「C-1」が何かは、マップの端に小さな文字で記載されている中から参照しなくてはならない。
紙なら拡大縮小の手間はない。「マップを紙で印刷してくればよかった」と後悔したし、紙の地図を広げている人がうらやましかった。
万博公式アプリにもマップ機能がある。だが、地図の拡大縮小に都度通信が挟まれるので、動きがもっさり過ぎて使い物にならなかった。
アプリには「AIナビゲート」という機能があり、目的地にナビゲートしてくれるらしいが、起動時に映像が表示される。筆者は日帰りでとても急いでいたので、映像表示を待っていられず使わなかった。
NFTスタンプの謎 紙で押せばよかった
各パビリオンにはスタンプ台があり、記念スタンプを押すことができる。筆者は紙のスタンプ帳を持っていなかったのだが、物理スタンプの隣に「NFT(非代替性トークン)スタンプのQRコード」があることに気づいた。
「NFTの良い使い方!」と感激し、QRコードを読み込んでたくさんスタンプを集めた……つもりだったのだが、そのスタンプがどこに記録されたのか、まるで分からない。万博関連アプリやNFTウォレットアプリも見てみたのだが、記録が一切見つからない。
紙のスタンプにしておけばよかった。
公式の「全然足りない!」をユーザーが補完 SNS時代の万博
筆者が万博を訪れた2025年4月17日朝時点では、マップは公式のものしか見当たらず、パビリオン情報はマスメディアに頼るしかなかった。五里霧中で会場を訪れ、手探りで楽しんできた。
その後徐々に、来場した一般ユーザーからSNSに情報があふれだした。「イタリアパビリオンには、彫刻の本物が飾ってある。ぜひ行くべき」「日本から入国できない、紛争中の国の出展に注目」「フランスパビリオンで売っているパンがおいしい」などなど。
さらに、見やすいマップを非公式で作り、コンビニのネットプリントで印刷可能にして公開してくれる人まで現れた。非公式マップは、地図上の建物の上に建物名が書かれていて見やすい。その建物で食べられる飲食内容までカバーするマップを作ってくれた人もいる。
公式からの情報発信は、正直言って“グダグダ”だったが、イベント自体は魅力的かつ奥深く作られており、掘れば掘るほど発見がある。こういうときに活躍するのが、来場した人のリアルな声と、それを拡散するSNSだ。
同時に、物理の強さも感じた。映像展示が多いのだが、立体像などモノの展示こそ「わざわざ見に来たかいがあった」と感激した。デジタル時代だからこそ、通信もデータも不要な“モノ”の力を感じた万博だった。
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