次世代AIデータセンターの能力を最大化? 1心当たり最大106.25Gbpsの伝送が可能な光ファイバー技術を慶應義塾大学が開発:AIデータセンターに適する理由とは
慶應義塾大学は、1心当たり最大106.25Gbpsの伝送が可能な光ファイバーを開発した。次世代AIデータセンターに不可欠な高密度、低遅延の大容量光通信を実現する革新的技術だとしている。
慶應義塾大学は2025年4月22日、次世代AI(人工知能)データセンターに不可欠な高密度、低遅延の大容量光通信を実現する光ファイバー技術を開発したと発表した。これは同大学の研究グループが発表したもので、メンバーには新川崎先端研究教育連携スクエアの特任教授を務める小池康博氏(慶應フォトニクス・リサーチ・インスティテュート所長)と特任講師を務める村元謙太氏らが含まれる。
AIデータセンターに適する理由は?
最先端のデータセンターで用いられている800Gbpsを超える大容量通信では、複数の光ファイバーを束ねてデータを並列伝送する方式が一般的だ。しかし、従来のガラス製光ファイバーは、基本的に1本ずつ製造されるため、多心化にはリボン化などの追加工程や特殊な多心コネクターとの組み合わせが必要となり、製造や実装にかかるコストが大きく増加する点が課題だった。
こうした課題を解決するために同研究グループが開発したのが、屈折率分布型プラスチック光ファイバー(GI型POF)を多心化した、「マルチコアGI型POF」だ。プラスチック材料の特性を生かした押出成形によって一括で多心化することで、ガラス製光ファイバーで不可欠なリボン化や多心コネクターの実装が不要となり、多心化のコストを大幅に削減できる。
同研究グループによると、円形61心のマルチコアGI型POFをVCSEL(垂直共振器型面発光レーザー)と組み合わせることで、1つのコア当たり最大106.25GbpsのPAM4信号(4値パルス振幅変調)を伝送することにも成功した。同信号は、AIデータセンターで採用されている信号仕様に対応したもの。最大30メートルの伝送時でも、高品質な信号伝送が確認できたとしている。
生成AIが急速に普及する中、大規模演算を担うデータセンターでは、従来を大きく上回る超大容量、低遅延の通信技術が求められている。特に、大量のGPU(Graphics Processing Unit)やアクセラレータを連携させるAI処理では、機器同士を接続する短距離光通信の性能がシステム全体の処理能力に直結するため、重要な要素となっている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
AWSがAnthropicに追加で40億ドル投資 次世代AI開発を加速する戦略的提携を強化 今後はどうなるのか?
AI(人工知能)モデルの「Claude」などを開発するAnthropicはAWSとの連携を拡大し、高度なAIシステムの開発と導入に向けた共同作業を深めることを発表した。Metaが次世代AIインフラ構築計画の進捗状況を発表 カスタムAIアクセラレータチップ、次世代DCなど
Metaは、次世代AIインフラを構築する計画の最近の進捗状況を発表した。発表の目玉は、AIモデルを実行するための同社初のカスタムシリコンチップ、AIに最適化された新しいデータセンター設計、1万6000個のGPUを搭載するAI研究用スーパーコンピュータの第2フェーズだ。5分で分かる人工知能(AI)
人工知能をビジネスで活用したい人に向け、最新技術情報に基づき、人工知能の概要、注目される理由、歴史と課題、できること、次の一歩を踏み出すための参考情報を、5分で読めるコンパクトな内容で紹介する。