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HPEによるJuniperの買収が完了、「誰も置き去りにされることはない」Instant Onは無線LANのほんの一部

米司法省との和解を受け、HPEがJuniperの買収完了を正式に発表した。JuniperはHPEのネットワーク部門に統合される。豊富なネットワーク製品群と他のインフラ技術を組み合わせてAIで統合運用。高度に自動化されたフルスタックを推進していくという。

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 Hewlett Packard Enterprise(HPE)は2025年7月2日(米国時間)、Juniper Networksの買収完了を正式に発表した。その2時間後にはブリーフィングを実施。HPE CEOのアントニオ・ネリ氏と元Juniper CEOで新たなネットワーク部門を率いるラミ・ラヒム氏は、「誰も置き去りにされることはない」という言葉を繰り返した。

 HPEのネットワーク事業部門には「HPE Networking」という名称がつけられ、旧Juniperが統合される。ラヒム氏はこの巨大な部門のプレジデント兼ゼネラルマネジャーに就任。「HPE Aruba Networking」「HPE Juniper Networking」の2つのブランドを、単一企業として展開していく。

 「組織全体の統合については慎重に検討していく。私はこれについてじっくり考えてきた。どのような形になるかについて既に明確なイメージを持っており、今後伝えられるはずだ」(ラヒム氏)

 買収により、企業やサービスプロバイダー、クラウド、データセンターなど、あらゆる顧客セグメントの多様なニーズを満たせる豊富なネットワーク製品群を提供できるようになったとラヒム氏は話した。これらの間をつなぐ一方、それぞれの中に入り込むこともできる。そして全てを統合的にAI(人工知能)で管理できる。

 ネリ氏は「HPE にとって新しく刺激的な一章が始まった」と表現した。

 「ネットワーキング、ハイブリッドクラウド、AIが融合するITの新時代が来た。ネットワーキングは企業とサービスプロバイダーの双方をカバーする接続ファブリックとしての役割を果たす。こうした役割は、過去にないほど重要になっている」(ネリ氏)

 新ネットワーク部門が生み出す先進的で包括的なネットワークソリューションをHPEの他の製品群と組み合わせることにより、「安全でクラウドネイティブ、AIドリブンなフルスタック」を構築できるとする。

 「より強力な企業になったというだけではない。未来を定義しリードする、ビジョンと規模、革新性を備えた業界の牽引役となっていく」(ネリ氏)

顧客やパートナーへの影響は? 製品戦略は?

 現時点で、顧客やパートナーへの影響は全くないという。顧客は現在の製品を従来通り使い続けることができる。パートナーも現在の枠組みの下で、これまで通り製品・サービスを提供できる。

 チャネルプログラムについては、「HPEでは全てのビジネスにまたがる単一のチャネルプログラムを整備した。ゆくゆくはJuniperのプログラムを統合し、全製品を売れるようにしていく」(ネリ氏)という。

 製品戦略も、顧客とパートナーを第一義に考えて進めていくとしている。

 「顧客と市場に焦点を当てた綿密な戦略に着手しているところだ。目標は『セキュアでAIネイティブ、クラウドネイティブなネットワーク』。Aruba側から始めても、Juniper側から始めても、全ての顧客がこのエキサイティングな究極の到達点への道筋を描ける。現時点で具体的な内容やタイムラインを伝えるのは時期尚早だが、これが私たちが着手しようとしている戦略だ。誰も取り残されることはない」(ラヒム氏)

 HPEが取り組みを強化している分野の一つはAIデータセンター。液冷技術、サーバ、ストレージ、ネットワーク、データ管理、開発環境まで、まさにフルスタックのハードウェア/ソフトウェア製品群を提供し、運用を自動化できる企業は他にないと同社はアピールする。

 ネリ氏はこうしたデータセンター向けソリューションにおいて、JuniperのSDN(Software Defined Networkig)やテレメトリが貢献すると話す。

 関連して、HPEはAIを活用したハイブリッドクラウドの管理基盤「GreenLake Intelligence」を2025年6月に発表した。これはリアルタイム情報に基づいて、AIエージェントがインフラ運用を自動化する製品。

 HPEのサーバ(MCP<Model Context Protocol>サーバを含む)やストレージ、ネットワーク製品を連携させ、例えばAIのワークフローに沿った設定やモニタリングができる。ネットワークについては、HPE Aruba Networking Centralが連携することになっている。

 これに旧JuniperのMist AIが加わるのかについて、ラヒム氏は明言を避けている。

 「HPEとJuniperはネットワーキングに関する問題に異なるアーキテクチャでアプローチしており、どちらにも大きな強みがある。両社が協力することで、クラウドでもオンプレミスでも、より多くのユースケースに対応できるソリューションを構築できる可能性が広がる」(ラヒム氏)

DOJとの和解の影響は?

 HPEとJuniperは米司法省との和解により、今回の買収を実現した。条件はHPEの「Instant On」無線LAN製品シリーズの売却とMist AIソースコードのライセンス供与だ。

 Instant Onの売却について、ネリ氏は次のように説明した。

 「Aruba Instant Onは約3年前に始めた非常に新しい事業で、従来のArubaプラットフォームやAruba Networking Centralとは別物だ。小規模企業向けに特化した製品群であり、当社にとって非常に小さなビジネスだ」(ネリ氏)

 Mist AIの他社へのライセンス供与については、「Mistコード全体ではない、AIオペレーションの部分だけだ」と話している。

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