ドイツ人ゲーム開発者が考える、日本人とのコミュニケーションの「心地よさ」Go AbekawaのGo Global! カイさん from ドイツ(後編)(2/2 ページ)

» 2025年10月01日 05時00分 公開
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日本人とのコミュニケーションは「心地よい」

 コロプラの開発効率化グループのメンバーは、カイさん以外は日本人だ。仕事の会話は日本語で行われており、「日本語でコミュニケーションすることは、状況によって、また作業によって、難しさに差があります」と語る。特に「少し複雑な問題を説明するときや、少し独特なしゃべり方の人と話すとき」のコミュニケーションは困難を伴うという。しかし、彼は高校の終わり頃から大学にかけて独学で日本語を学び、来日後に教師についてさらに磨きをかけた努力家である。その努力のかいあって、いまでは素晴らしい日本語を使いこなしている(編集部注:本インタビューも日本語で行いました)。

 カイさんは、日本人とのコミュニケーションを「割と心地よい」と考えている。

 外国人同士の会話では「コミュニケーションや意見交換が少し難しいときもありますけれど、日本人相手だと割とスムーズだな」と思っている。それは「日本語の丁寧さ」のおかげだと彼は考える。

 カイさんにとってドイツ人は「とてもストレートでフランク」なので、意見が強い人が多く、ディスカッションなどが少し難しいと感じることもあるそうだ。だが日本の職場は丁寧にやりとりするので、ストレスなく仕事に打ち込める。

 将来は「プログラマーとしてより幅広くものを経験したり、勉強したりしたい」という意欲があり、開発環境の応用などを学びたいと考えているカイさんは、まだ25歳だ。日本の同年代のエンジニアたちに伝えたいことを聞くと、「挑戦することの重要性」と答えてくれた。

 「勉強したいものが難しくても、やりたいことが無理そうでも、自信があまりなくても、やってみれば何らかの成果が出る」と確信している。仕事に限らず、映画や本など「全然別の」分野に触れることで、「いつも新しいことを見つけて、広範囲の発見がある」と感じているという。彼の言葉は、常に新しい知識と経験を求めるエンジニアにとって、力強いエールとなるだろう。

 ドイツの古都で芽生えたゲームへの情熱と探求心が、カイさんを日本の地へと導いた。異文化の中での挑戦、技術開発への探求心、そして自らの好奇心に従う生き方は、これからのグローバルエンジニア像を示唆している。彼の挑戦はまだ始まったばかりであり、日本でのさらなる活躍が期待される。

Go's Thinking Aloud

 以前も書いたが、頭の回転が速い人の話し方は、基本的に2種類ある。機関銃のように言葉を連ねる人と、言葉を選ぶ人だ。

 前者は、ちょっと間違うと何が言いたいのか分からなくなる危険性があるが、後者はそうはならない。どのように話せば自分の思いが正確に伝わるかを、確かめながら話す人が多いからだ。カイさんは後者だ。言葉を選んで、ゆっくりと、きれいな日本語で話してくれた。

 ドイツ語、英語、日本語と言葉への感性が鋭い。当然のようにコンピュータの言語にも興味を持ち、ゲームコンソールに向かい、大学卒業時には、日本のゲーム会社の新卒採用にオンライン面談で挑戦、見事採用された。物静かではあるが、情熱が垣間見える。

 好きなゲームや映画、小説は、AI(人工知能)時代のこれからどう進化し、それをカイさんは(あるいはわれわれは)どう解釈し、咀嚼(そしゃく)し、成長し、未来のコンピュータスキルに反映させてゆくのだろうか。

 可能性は文字通り無限大。IT業界はまた、エキサイティングな時代に突入する。

阿部川“Go”久広

アイティメディア 事業開発局 グローバルビジネス戦略担当、情報経営イノベーション専門職大学(iU)学部長、教授、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD)特任教授、インタビュアー、作家、翻訳家

コンサルタントを経て、AppleやDisneyなどでマーケティングの要職を歴任。大学在学時から通訳、翻訳も行い、CNNニュースキャスターを2年間務めた。現在 iU 情報経営イノベーション専門職大学の学部長、教授も兼務し、多くの企業とプロジェクトを推進。元神戸大学経営学部非常勤講師、元立教大学大学院MBAコース非常勤講師。ビジネスや起業のコンサルティング、英語やコミュニケーション、プレゼンテーションのトレーナーの他、作家、翻訳家としても活躍中。

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