この先、どうなるのかな?――40代から考える、エンジニアのキャリア仕事が「つまんない」ままでいいの?(127)(3/4 ページ)

» 2025年07月16日 05時00分 公開

戦略2:「キャリア自律」につながる「小さなコミュニケーション」

 「自分の強みも再発見できたし、経験の生かし方も見えてきた。でも、それをどうやって周りに伝えていけばいいんだろう?」……そう思うのも不思議ではありません。でも、その気持ちこそが、次の大切な一歩につながります。

 これからの時代、私たちのキャリアは、会社に「全てお任せ」するものではありません。もちろん、会社が与えてくれる機会は大切ですが、最終的に自分のキャリアをデザインし、少しずつ形作っていくのは、あなた自身です。これが「キャリア自律」という考え方です。

 そして、その「キャリア自律」につながる第一歩として、身近なところから「小さなコミュニケーション」を始めてみませんか?

 「コミュニケーション」と聞くと、少し身構えてしまうかもしれませんね。でも、大丈夫です。コミュニケーションといっても、大勢の前で話すことではありません。あなたの「再発見した強み」や「再定義した経験」を、まずは気負わず、少しずつ周りの人に話してみる、そんなイメージです。

 具体的に何をすればいいのか、一緒に考えていきましょう。

1.社内での「ささやかな共有」から始めてみる

 まずは、あなたの会社の中での行動から変えてみませんか? といっても、いきなり「私はもっと長く働きたいんです! 活躍の場をください!」と、上司や人事に直談判するのではありません。何でも言い合える身近な同僚や信頼できそうな人に、あなたの考えていることを「雑談」の中で話してみる、そんなレベル感で十分です。

 例えば、先ほどの棚卸しで見つけたあなたの「経験知」について、「そういえば、あの時のプロジェクトの○○って、いま思えばこういうことだったな」とか、「最近、△△ツールの話を聞いて、もしうちの部署で使えたら、あの業務がもっと楽になるんじゃないかなって思ったんだよね」と、自分の気付きやアイデアを軽く共有してみる。

 あるいは、業務で困っている同僚がいたら、「もしよかったら、あの時の経験が役に立つかもしれないから、ちょっと話してみる?」と、そっと声を掛けてみるのもよいでしょう。

 こうした「ささやかな共有」は、あなたの「貢献したい」という前向きな気持ちを、無理なく周りに伝えることになります。そして、周囲はあなたの新たな一面に気付き、「この人はこんなことも考えているんだな」と、ポジティブな印象を持つようになるはずです。小さな種をまくように、少しずつ関係性を築いていきましょう。

2.身近な「社外の人」との会話で視点を広げる

 会社の中だけでなく、ぜひ「社外」にも目を向けてみてください。といっても、いきなり大規模なセミナーや技術コミュニティーに参加する必要はありません。まずは、技術的なことがそれほど得意ではない友人や家族、あるいは趣味の仲間など、身近な人に、あなたの仕事の話をしてみるのはどうでしょう?

 「最近、仕事でこんなことがあってさ」「こういうツールがあったら、もっと便利になると思うんだけど、どう思う?」といった、本当に日常会話の延長で構いません。

 彼らは、あなたの専門とは異なる視点から、率直な感想を言ってくれたり、「それって、どういうこと?」のように意外な質問を投げ掛けてくれたりするかもしれません。この会話を通じて、あなたは自分のやっていることを、専門用語を使わずに分かりやすく説明する練習ができます。そして、「自分の経験って、意外と他の人の役に立つのかも?」という、新たな気付きを得られることもあります。

 この「身近な社外の人との会話」は、あなたの視野を広げ、新たなキャリアの可能性に気付かせてくれるだけでなく、「自分の強み」をより多くの人に理解してもらうための、大切な練習台にもなるでしょう。

 こうした「小さなコミュニケーション」は、「自分はまだ成長したい」「会社や社会に貢献したい」というあなたの潜在的な意欲を、無理なく、そして着実に形にしていくための第一歩です。焦る必要はありません。一歩ずつ、あなたのペースで進んでいきましょう。

戦略3:未来への「ヒント」と「小さな行動」

 さて、ここまでで、あなたは自分の「強み」を再発見し、それを周りに「小さなコミュニケーション」で伝えていく方法を見つけました。これは、あなたのキャリアを自律的に動かすための、大切な一歩になるはずです。

 でも、「この先、どうなるのかよく分からなくて不安」という気持ちがある中で、「こうなりたい」という具体的な目標や、進むべき道のりが、明確には見えない……そう感じる方もいるかもしれませんね。漠然とした不安を抱えているとき、具体的な未来を描くのは、なかなか難しいものです。

 だからこそ、ここでは、あなたの未来を考えるための「ヒント」と、そこに向かうための「小さな行動」に焦点を当ててみましょう。

1.身近な「ロールモデル」を探してみる

 「ロールモデル」と聞くと、完璧で輝かしい人をイメージするかもしれません。でも、ここで探してほしいのは、もっと身近で、あなたが「少し気になるな」と感じる人です。

 あなたの会社の先輩や上司、あるいはかつて一緒に働いた同僚で、「この人、年齢を重ねても、何だか楽しそうに仕事しているな」とか、「経験を生かして、自分のペースで活躍しているな」と思える人はいませんか? 技術コミュニティーやSNSで、「この人の発信は、何だか共感できるな」と感じる人は? 「あの人のようになりたいな」と思う人は?

 彼らは、必ずしも最新技術や最先端を猛進している人ばかりではないはずです。むしろ、長年の経験と知識を生かして、若手育成に力を入れていたり、特定の分野で地道に専門性を深めていたりする人かもしれません。

 そうした人を見つけたら、ぜひ、彼らの「働き方」や「考え方」に少しだけ注目してみてください。

  • 彼らはどんなことを大切にして仕事をしているのか?
  • どうやって新しいことと向き合い、経験を生かしているのか?
  • 仕事以外の時間で、どんなことをしているのか?

 もし、ほんの少しでも話す機会があれば、気負わず、少しだけ質問してみるのもいいかもしれません。彼らの言葉や行動から、あなたの未来を考えるための、具体的な「ヒント」が見つかることがあります。

2.未来を明確にするため「少しだけ」行動してみる

 身近な「ロールモデル」を見つけたり、彼らの話から小さなヒントを得たりする中で、「ああ、こんなふうに働くのもいいかもしれないな」という漠然としたイメージが、もしかしたら少しだけ湧いてくるかもしれません。

 でも、「具体的な目標」として明確に「こうなりたい!」とまで思い描くのは、実際にはなかなか難しいものです。無理に「完璧な未来図」を描こうとしなくても大丈夫です。

 ここで大切なのは、完璧な目標が見えなくても、「できることから、少しずつ行動してみる」こと。

 例えば、「ロールモデル」として気になった人のブログを読んでみる、あるいは、あなたの棚卸しで見つけた強みを、ささやかな共有として誰かに話してみる、といった、これまで話してきた内容を意識的に行うだけでも構いません。小さな一歩で大丈夫です。

 なぜなら、私たちは、行動することでしか、次に見える景色を知ることができないからです。何をすべきかがまだ明確でなくても、目の前のできることから行動していけば、その行動が次の「問い」や「ヒント」を生み出し、次に何をすればいいかが自然と見えてくるでしょう。たとえいまが霧の中でも、一歩踏み出すたびに、少しずつ道が開けていくはずです。

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