AIOpsは現場が抱える”三重苦”を解決できるのか 生成AIと運用管理の今後をITRが分析:従来よりは導入の現実味が出てきた?
ITRは、国内のAIOps/運用自動化市場規模の予測を発表した。運用現場で生じるさまざまな課題を解決するため、AIOpsの導入が活発化していることが分かった。
アイ・ティ・アール(ITR)は2025年7月10日、国内のAIOps(人工知能を活用した運用管理)/運用自動化市場の提供形態別市場規模推移と予測を発表した。この調査は、国内のITベンダー52社に対して実施した調査結果から、2023〜2024年度の売上実績および2029年度までの予測をまとめたものだ。
なお、本予測における「AIOps/運用自動化」は、障害対応、プロビジョニング、構成管理、ソフトウェア配布をはじめとしたシステム運用プロセスを自動化する製品やサービスを指す。
市場拡大の裏にある“運用現場の限界”
調査結果によると、2024年度の同市場の売り上げ金額は86億4800万円で、2023年度から19.8%増加した。2025年度は2024年と比べて18.9%増えるとITRは予測している。
AIOps/運用自動化市場が盛り上がる背景には、企業で使用するITシステムの大規模化、複雑化による運用負荷の増大があるという。ITRの入谷光浩氏(シニアアナリスト)は「システム運用の現場は『業務負担の増加』『運用コストの増大』『運用プロセスの属人化』という三重苦を抱えている。これらの課題を解決する手段として、AIOpsの導入が拡大している」と分析している。
運用管理の業界では生成AIを活用する動きが見られるが、AIOpsもそうした動きに追従する形で進化していると入谷氏は語る。同氏によると、運用作業の効率化、自動化という従来の役割に加えて、トラブルの早期対応、ナレッジの活用による業務スキルの平準化といった、「より付加価値の高い業務でAIOpsの活用が期待できる」という。
特に、AI技術を活用した異常検知や予知保全は、トラブル発生の防止に効果を発揮すると考えられている。こうした背景からITRは、AIOps/運用自動化市場の2024〜2029年度の年平均成長率(CAGR)を20.4%と予測している。
調査では、同市場におけるオンプレミス版とSaaS(Software as a Service)型の違いについても確認している。同社によると、2024年度のSaaS型の売上金額は2023年度と比べて28.2%増加し、約42億円に達した。2025年度にはオンプレミス版を上回ると予測されており、2029年度には130億円まで拡大する見込みだ。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
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