AIエージェントの登場により、COBOL技術者の引退で現実味が遠のいていたレガシーシステム刷新がより現実的になりつつある。その具体的な手法をGitHubがブログで紹介した。
GitHubは2025年10月14日(現地時間)、公式ブログで“レガシーコード”を救うための新しいアプローチを紹介した。背景には、古いソースコードを理解できる人材の減少がある。例えばプログラミング言語「COBOL」のソースコードがいまだに世界中の銀行や保険会社、政府などのシステムを動かしているが、それを理解する開発者を見つけるのは簡単ではなくなっている。
レガシーシステムをモダナイゼーションするためのアプローチとして、GitHubはAIコーディングアシスタント「GitHub Copilot」を活用した3つのステップを紹介した。Microsoftの専門家チーム「Microsoft Global Black Belt」が実践したレガシーモダナイゼーションのアプローチに基づくものだ。
GitHubはこの取り組みを、ソースコードを単に置き換えるのではなく、理解し再生するための現実的なアプローチだと説明している。COBOLに限らず、さまざまなレガシーモダナイゼーションプロジェクトに応用できる体系的な方法だという。
レガシーシステムの問題の一つは、そのコードが具体的に何をしているのかを把握できなくなってしまうことだ。システム自体は今も動き続けているとしても、組織がその「中身を理解している」とは限らない。
そこで最初のステップはソースコードを理解し、モダナイゼーションの準備をすることだ。ここではGitHub Copilotは“考古学ツール”になる。AIを使うことで次のようなことが可能になるという。
次はソースコードの理解を補う情報を付け加えるステップ。コードの意図を説明するコメントを補い、依存マップを作成する。これにより、属人化したロジックが“誰でも読める資産”に変わる。ブログ記事は、この段階を「エンリッチメント」と表現している。
COBOLプログラムは、大きく4つの構造に分かれている。
COBOLの構文を理解しなくても、AIに解析させることで自然言語で構造を理解できるようになる。
個々のファイルを分析し、エンリッチメントを終えたら、次はそれがどのように連携するのかを理解する必要がある。ここでAIエージェントによる自動化ワークフローを構築する段階に移行する。
Microsoft Global Black Beltのジュリア・コーディック氏のチームは、複数の専門エージェントをオーケストレーションするフレームワークを構築した。各エージェントは特定のジョブを持つ。連携させることで、単一では対応し切れない複雑な処理を実現する。
その具体的なプロセスは次の通り。
AIエージェントを活用することでモダナイゼーションを推進できるようになるものの、メインフレームの問題は「1回のクリックで解決できる」わけではなく、実際には以下のような現実に向き合う必要があるとブログ記事は指摘している。
AIを活用したアプローチは、レガシーシステムの維持・刷新を従来よりも現実的なものに変える可能性を秘めている。従来は高額なコンサルタントを雇い、5年以上をかけて変換作業をしても、最終的にはメンテナンス不可能なソースコードが生み出されるという現実もあった。
レガシーシステムは、単なる技術的負債の問題ではなく、ビジネスの存続に関わる問題だが、組織においてはCOBOLの専門知識不足が深刻になっている。AIを使うことで、最終的に生成されるソースコードは開発者が実際に作業できるものになり得るとブログ記事は指摘している。
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