JetBrainsはPythonの動向をまとめた「The State of Python 2025」を公開した。3万人以上の開発者に対する調査を基にしており、開発者の半数が実務経験2年以下であることなどの現状が明らかになった。
JetBrainsは2025年8月18日(中央ヨーロッパ時間)、プログラミング言語「Python」を扱う開発者を対象とした調査を基に、主要なトレンドや今後の見通し、開発者が取るべき具体的な行動をまとめた「The State of Python 2025」を公開した。
JetBrainsはPython Software Foundation(PSF)と共同でPythonに関する年次調査を実施しており、今回のまとめは2024年10〜11月に実施された「Python Developers Survey 2024 Results」に基づいている。調査では、Pythonの使用方法や使用目的、フレームワークなどについて、2024年10〜11月に約200の国と地域の開発者3万人以上が回答した。
回答者の50%は、仕事でのコーディング経験が2年以下にとどまる。趣味や学習でのPythonの使用経験についても、回答者の39%が2年以下だった。
データの探索や処理といったデータサイエンスは、Pythonの使用目的として最も多くの回答者(51%)が挙げた。データサイエンスのために最も使用されているライブラリは「pandas」と「NumPy」だ。
Web開発はここ数年、Pythonの使用目的として挙げる回答者が減少傾向にあったが、今回の調査では2番目に多かった(46%)。Webフレームワークの中では、特に「FastAPI」の利用率が2023年の29%から38%に達し、首位になった。
回答者の83%は「Python 3.12」以前のバージョンを使用している。Python 3.12のリリースは2023年10月で、調査時点でも1年以上前に公開されたバージョンを大多数の開発者が使っていることになる。
回答者の32%がオープンソースプロジェクトに貢献している。内訳としては、78%がコード作成、40%がドキュメントやチュートリアルの作成などだ。
回答者の69%が、数カ月以内にAI(人工知能)コーディングエージェントを「試す可能性が非常に高い」または「試す可能性がある」と答えた。コーディングにおいても、AIエージェントの導入は急速に進む見通しだ。
PythonのWebアプリケーションやAPIを本番環境で稼働させるためのWebサーバは、転換点を迎えている。1つ目は非同期処理(async)フレームワークの普及、2つ目はプログラミング言語「Rust」によるPythonの実行速度向上だ。
一度に1つのスレッドがPythonプログラムを実行することを保証する仕組み「GIL」(グローバルインタープリタロック)は、安全性の確保に貢献するものの、マルチスレッドでのPythonプログラム実行を妨げる要因にもなっている。
2025年10月リリース予定の「Python 3.14」は、GILに制限されない「フリースレッドモード」が正式に利用可能になる最初のバージョンだ。実験的機能としては、「CPython」(Pythonの標準実装)のバージョン「3.13」で最初に実装された。
「Python 3.5」(2015年9月にリリースされ、2020年9月にサポートが終了しているバージョン)で導入された、非同期処理を実現するキーワード「async」「await」は、Web開発だけではなく、ますます多様な用途で使われるようになっており、Pythonにおける並行処理が活発になるという大きなトレンドの一部を形成している。
モバイルアプリケーションやGUI(グラフィカルユーザーインタフェース)アプリケーションの開発におけるPythonの利用が拡大する見通しだ。2025年の開発者向けイベント「Python Language Summit」では、「iOS」と「Android」におけるCPythonの動作が公式に保証されるようになることが発表された。
GUIアプリケーションを開発するためのフレームワークも登場している。具体的には、PythonでモダンなWebアプリケーションを開発するための「FastHTML」「NiceGUI」などがある。NiceGUIは、Webアプリケーションをスタンドアロンのアプリケーションとして利用できるようになる「PWA」(Progressive Web App)の開発に利用可能だ。
これまでに示したトレンドを踏まえて、Pythonを扱う開発者が次に取り組むとよい行動は以下の通りだ。
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