Sさんはパートタイム、Aさんはフルタイムで働く契約社員だ。働き始めた動機は、「子どもが学校に行っている間、働きたい」「育休が終わるタイミングで、何か新しいことに挑戦したい」という気持ちから。
担当している業務は、神戸市や民間企業から受託した、デジタル化や業務改善のためのアプリケーション開発。アプリケーション開発といえば、一般的にプログラミング言語の習得など高度なスキルが必要だ。だが、Sさん、Aさんともに、特段ITが得意なわけではなかったそうだ。
「前職は事務職だったので、文章作成ソフトウェアや表計算ソフトウェアは使っていましたが、特にITが得意というわけではありませんでした」(Sさん)、「以前は事務職やサービス業で働いていました。PCはむしろ苦手でした」(Aさん)
アプリケーション開発には、「kintone」という、サイボウズが提供しているノーコード開発(プログラミングの専門知識がなくても、直感的な操作でアプリケーション開発ができる)ツールを使っている。
「ここで働くようになるまで、kintoneのことは全く知りませんでした。『本当に自分がアプリケーションを構築するところまでたどり着けるのだろうか?』という不安はかなりありました」(Sさん)、「全く分からなかったので、不安はたくさんありました」(Aさん)
ここで、ちょっとした疑問が浮かぶ。いくらプログラミングの専門知識がなくてもいいとはいえ、「PCはむしろ苦手」な人が、本当にアプリケーションを開発できるようになるのだろうか?
「最初は案件管理など、自分たちの業務を管理するアプリを作るところから始めました。勉強しながら経験を重ねたところ、半年ぐらいで基本的なことはできるようになりました」(Sさん)、「kintoneの情報はネットにたくさんあるので、分からないことはチームのみんなで調べて情報共有したり、相談し合ったりしながらアプリを作りました。チームで一緒に作ることが安心につながりました」(Aさん)
もともとITが得意ではなく、中には時短勤務の人もいる。多様な人々が一緒に働く環境を作る上で、大切なことは何なのか?
「さまざまな環境にある方々が仕事で活躍できる場を作っていこうとしたら、業務内容やフローを、一人一人に合った形にしていくことが大切だと思っています。それこそデジタルツールを使って、短い時間でもパッと出てきて、パッと仕事ができるよう、業務を標準化しています。専門的な知識が必ずしも必要ではない業務に変えていく。こういった工夫を重ねています。
例えば、行政機関の窓口業務は、かつては手書きだったものがデジタル化されてきています。RPA(ロボティックプロセスオートメーション)などを使えば、さらに業務を簡略化、標準化できるかもしれません」(中野さん)
多様な環境で働く人たちがスムーズに仕事できるよう、業務内容やフローを標準化し、誰もができるようにする。確かに、これは理想的な姿だ。一方、これはかなり高度なことにも感じる。多様な人たちが一緒に仕事をしていくためのポイントは何なのか?
「私たちは個人ではなく、チームで仕事をしています。チーム内での情報共有を確実にすることで、一定時間仕事を抜けても進捗(しんちょく)が分かるので、徐々にカバーできるようになってきました」(Sさん)
業務を標準化し、チームで仕事をすることによって、組織は成長していくのだ。
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