「メモ帳」アプリが進化して、書式設定機能をサポートした。本稿では、進化した「メモ帳」アプリの書式設定機能の使い方と、こうした機能が不要な人のために書式機能を「オフ」にする方法、タブもサポートしない古い「メモ帳」アプリを利用可能にする方法を紹介する。
Windows 11 2024 Updateで「ワードパッド」が削除されたため、Windows 11で簡単に見出しを大きな文字にしたり、自動的に箇条書きに番号を振ったりできる簡易なワードプロセッサ機能がなくなってしまった。
その一方で、「メモ帳」アプリが進化して、書式設定機能をサポートした。これにより、「メモ帳」アプリを簡易なワードプロセッサのように使うことも可能になった。本稿では、進化した「メモ帳」アプリの書式設定機能の使い方と、こうした機能が不要な人のために書式機能を「オフ」にする方法、タブもサポートしない古い「メモ帳」アプリを利用可能にする方法について取り上げる。
以前に追加された新機能やその無効化については、以下の記事で解説しているので参考にしていただきたい。
タブ機能に続き、「メモ帳」アプリがさらに進化して書式設定機能が実装された(スペルチェックやオートコレクトといった機能もテストされており、近く一般公開される可能性がある)。
原稿執筆時点では、Windows 11 2024 Update(バージョン24H2)の「メモ帳」アプリで、バージョンが「11.2504.62.0」以上で有効になるようだ。Windows 11 2023 Update(バージョン23H2)では同じバージョンであっても、書式設定機能は有効になっていない(将来的にWindows 11 2023 Updateで書式設定機能が有効になるのかどうかは不明)。
「メモ帳」アプリに実装された書式設定機能は、「Markdown(マークダウン)」と呼ばれる軽量なマークアップ言語を使うもので、「#」や「*」といった記号を使って、見出し用の大きな文字や箇条書きなどの記述ができるというものだ。
書式設定機能が有効になった「メモ帳」アプリでは、メニューの右側に書式設定用のツールバーが表示されるため、文字を入力して、ここで書式を適用すれば、その書式が反映された文字が表示される(書式を選択して、文字を入力してもよい)。そのため、Markdownのマークアップ言語を知らなくても、書式設定が可能だ。
Markdownは、各サービスやツールによって独自の機能が追加されたり、変更されたりしているため、さまざまな拡張記法が存在する。「メモ帳」アプリが対応しているのは、最低限のMarkdown構文で、文字の大きさが「タイトル」から「本文」までの7段階、リスト(箇条書きと番号付き)、太字、斜体、URLリンクである。試したところ、ハイライトや下線、表(テーブル)といったツールバーにない構文には対応していないようだ。
この新しい「メモ帳」アプリには、「書式付き」と「マークダウン構文」の2つのモードがある。モードは、ステータスバーの中央にある「書式付き」または「マークダウン構文」をクリックすることで切り替え可能だ。
「マークダウン構文」モードでは書式設定のツールバーが非表示となり、通常のテキスト入力モードとなる。この状態でプレーンテキストの入力やMarkdownの書式記号を含むテキストの入力が可能だ。
「書式付き」モードでは、書式設定のツールバーで選択した文字の大きさや太字などが反映された状態(プレビュー状態)で表示される。「マークダウン構文」でMarkdownの書式記号付きのテキストを入力後、「書式付き」に変更すると書式を反映した表示(プレビュー)が可能だ。この際、「メモ帳」アプリが対応していないMarkdown構文があると、警告ダイアログが表示される。
なお書式設定を削除してプレーンテキストにしたい場合は、ツールバーの一番右側にある[書式設定のクリア]アイコンをクリックすればよい。ただし、「書式設定のクリア」を実行すると、[Ctrl]+[Z]キーなどで元に戻せないので注意してほしい。
Markdownで記述したファイルを保存したい場合は、[ファイル]−[名前を付けて保存]を選択する。書式付きの場合、[書式を保存するためマークダウンとして保存する]ダイアログが表示されるので、[マークダウンファイルとして…]ボタンをクリックする。Markdownの書式記号を含むテキストがUTF-8形式で保存される(拡張子は「.md」になる)。一方、[テキストファイルとして…]ボタンをクリックすると、書式記号が削除されたプレーンテキストとなる(拡張子は「.txt」)。
書式設定が不要な場合は、機能を「オフ」にすることで、従来の「メモ帳」と同様に使うことができる。設定は、「メモ帳」アプリの右上にある[歯車(設定)]アイコンをクリックして「設定」画面を開く。ここの「書式設定」欄のスイッチを「オフ」にすればよい。[メモ帳の書式設定をオフにする]ダイアログが表示されるので、[無効にする]ボタンをクリックする。
「メモ帳」アプリの書式設定のツールバーが非表示になり、従来の「メモ帳」アプリと同様の見た目に変わる。
なお、書式設定機能を「オフ」にすると、書式付きで編集中のファイルの書式設定がクリアされてしまうので注意してほしい。また、別ウィンドウで起動している「メモ帳」アプリも設定が反映され、書式設定機能が「オフ」になってしまうので注意が必要だ。
「メモ帳」アプリで作成した書式付きテキスト(「書式付き」で表示した状態)をコピーして、他のエディタ(「メモ帳」アプリの新しく開いたタブなど)に貼り付けると、書式が失われプレーンテキストとして貼り付けられる(箇条書きや番号付きリストは、書式付きではなく、テキストに変換される)。
また、「マークダウン構文」で表示している場合は、Markdownの書式記号を含むテキストとして貼り付けられる。この場合、「メモ帳」アプリの[ファイル]−[[新しいマークダウン]タブ]を選択して、タブを開くと、書式記号として認識され、「書式付き」モードでプレビューが可能だ。タブの右側にある[+]ボタンで新しいタブを開いて、ここにコピーすると単なるテキストとして扱われ、「書式付き」としてプレビューできなくなるので注意が必要だ。
テキストファイル(.txt)を読み込むと、テキストファイルにMarkdownの書式記号が含まれていても、テキストファイルとして扱われ、「書式付き」としてプレビューできないので注意してほしい。
このあたりMarkdown対応のエディタとしては、中途半端な実装となっている。今後、改善されることに期待したい。
このようにタブやMarkdownへの対応など、「メモ帳」アプリの高機能化が進んでいる。しかし、「メモ帳」アプリにこのような機能は不要だ、と考えている人もいるだろう。
そのような場合、タブ機能などのない、古い「メモ帳」アプリを使えばよい。古い「メモ帳」アプリは、[%SystemRoot%System32]フォルダに残されおり、ここにある「notepad.exe」を実行すれば、古い「メモ帳」アプリが起動可能だ。
ただ、コマンドプロンプトなどで「notepad.exe」を実行しようとすると、エイリアスによって新しい「メモ帳」アプリが起動してしまう。
そこで「設定」アプリを起動し、[アプリ]−[アプリの詳細設定]−[アプリ実行エイリアス]を選択して、「アプリ実行エイリアス」画面を開き、「メモ帳」欄のスイッチを「オフ」にして、エイリアスを止めてしまおう。
そうすれば、[Windows]+[R]キーを押して、[ファイル名を指定して実行]ダイアログを開き、「notepad」と入力して[Enter]キーを押せば、古い「メモ帳」アプリが起動する。
一方、この設定をしても、[スタート]メニューの[メモ帳]アイコンをクリックすると新しい「メモ帳」アプリが起動してしまう。そこで、前述の方法で古い「メモ帳」アプリを起動したら、タスクバーにピン留めしておくとよい。
書式設定のツールバーを使わず、Markdown構文をテキストに記述する場合、以下のように書式記号を入力する。ここでは、「メモ帳」アプリがサポートしているもののみを示す。
●書式設定ツールバーの「H1(見出し)」
書式設定ツールバーの「H1(見出し)」は、Markdown構文では以下のように記述する。「#(半角シャープ)}に半角スペースを空けて、文字列を入力する。「#」の数で文字の大きさが変わる。一番大きな文字(タイトル)は「# 」、一番小さな文字(本文)は書式記号なしだ。書式記号がある一番小さな文字(サブセクション)は「###### 」となる。
# タイトル
## サブタイトル
### 見出し
#### 小見出し
##### セクション
###### サブセクション
本文
タイトルとサブタイトルは以下の書式記号でも入力可能だ。ただし、一度「書式付き」でプレビューすると、「# タイトル」「## サブタイトル」の形式に変換されてしまうので注意してほしい。
タイトル
=========
サブタイトル
---------
●書式設定ツールバーの「≡(リスト)」
箇条書きは「*(半角アスタリスク)」に半角スペースを空けて、文字列を入力する。「番号付きリスト」は「数字.(半角ドット)」に半角スペースを空けて、文字列を入力すればよい。1〜9桁の半角数字であれば数字は何でも構わず、「書式付き」に切り替える際に適切な連番が割り振られる。
* 箇条書き
1. 番号付きリスト
書式設定のツールバーでは、箇条書きやリストの下にさらに一段下げた箇条書きやリスト(ネストされた箇条書きやリスト)を入力することができない。一方、Markdown構文で[Tab]キーを入力してから「* 」や「数字. 」を入力すれば、ネストされた箇条書きやリストにできる。
なお、「* 」の他、「-(ハイフン) 」「+(プラス) 」でも箇条書きが可能だ。ただし、一度「書式付き」でプレビューすると、全て「* 」になってしまう。
●書式設定ツールバーの「B(太字)」
太文字(ボールド)にするには、「**太文字**」のように太文字にしたい文字列を「**」で囲めばよい。この際、「**」と文字列の間には半角スペースは入れない。
●書式設定ツールバーの「I(斜体)」
斜体(イタリック)にするには、「*斜体*」のように太文字にしたい文字列を「*」で囲めばよい。この際、「*」と文字列の間には半角スペースは入れない。
●書式設定ツールバーの「リンク」
文字列にURLリンクを設定したい場合は、以下のように「[<文字列>](URL)」のように記述する。「[]」で囲まれた文字列全体に対して、URLリンクが設定される。
[@IT](https://atmarkit.tech/)
「メモ帳」アプリは、シンプルなテキストエディタであるべきだ、という意見も多いようだが、このように新しい機能が次々と追加され進化し続けている。シンプルなテキストエディタを望むユーザーには残念だが、「メモ帳」アプリの多機能化は止まらないようだ。シンプルなテキストエディタが必要な場面では古いnotepad.exeを(廃止されるまで)使いつつ、普段はこうして新しいメモ帳に追加された機能をうまく使いこなして生産性を上げていくのがよいのかもしれない。
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