技術系コメディー自主制作アニメ「こうしす!」の@ITバージョン。新シリーズ「蔵王光速電鉄を“DX”いたしますわよ@IT支線」では、DXのよくある失敗を解説します。第3列車は「社用スマホ」。どのようなてんやわんやが起きるのやら……。※このマンガはフィクションです。
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没落社長令嬢・左沢美咲(あてらざわ みさき)は、「デラックス」な生活を取り戻すために、DX推進を決意する。DX推進人材として採用した女鹿 梨(めが りん)を巻き込み大暴走。蔵王光速電鉄を“DX“いたしますわよ!
「こうしす!」シリーズ新編「ざおでんDX」の第3回。テーマは「社用スマホ」です。
社内業務デジタル化の一環として、「日報をシステム化し、全従業員分支給したスマートフォンやタブレットから入力させる」というのは、業種を問わずよく見掛ける光景です。しかし、「老眼で小さい文字が見づらい」「タッチしてもうまく反応しない」などの理由で有効活用されず、情シスや若手に押し付けられたり、現場では紙の業務にフォールバックしたり……。それもまたよく見る光景です。
結局のところ、日常業務をデジタル化したからといって、それが新たなビジネス価値の創出につながるわけではありません。業務を効率化する場合もあれば、ただ業務を面倒くさくしただけになることもあります。
スマホやタブレットは、DX(デジタルトランスフォーメーション)のためのインフラの一つです。しかし、「DXやデジタル化のため」にと無計画に支給するのでは、目的と手段が入れ替わっています。
大切なのは、「なぜ支給端末が必要なのか」「それによってどのような価値を生み出すのか」ということです。
例えば、「顧客の利便性向上のために、デジタル技術を活用した新しい事業を始める。新しい事業の業務フローをデジタルファーストで構築する。そのためには支給端末が必要だ」というロジックが必要です。そのようなロジックの基に導入すれば、そもそも「支給端末を使わない」という選択肢がないわけですから、投資が無駄になることはありません。「操作方法を訓練する」「アプリの文字を大きくする」「操作性を改善する」ことにも意味が生まれます。
社用スマホを配布する際には、不正使用によるリスクも検討しなければなりません。
マンガのようにゲームをインストールして就業時間中に遊ぶなどはまだかわいいもので、端末経由で情報を持ち出す、端末ごと紛失する、退職者が中古で売り飛ばすなど、さまざまなセキュリティリスクが起こり得ます。
これらのリスクに備えるためには、EMM(Enterprise Mobility Management)の導入が必須といっても過言ではありません。これにより、インストールできるアプリの制限や遠隔消去などがしやすくなります。
Androidであれば、「Google Workspace」を契約するとこれらの機能を利用できます。「Microsoft Intune」が含まれる「Microsoft 365」のプランを契約している場合も、同様のことを行えます。
端末支給に関連する「DXの失敗」は、往々にして「DXだから端末を支給する。端末を支給したからには、既存業務をデジタル化する」というような、手段と目的を取り違えたロジックによって引き起こされています。その結果、コスト削減ですらなく、完全に無駄な出費となっている例もままあります。
同じ失敗ならば、「新たな価値を生み出すことについて試行錯誤を重ねる」途中で繰り返す小さな失敗の方が、価値があります。DX全てにおいて同じことがいえますが、「社用スマホの支給」一つ取ってみても、「なぜそうするのか」という目的意識を大切に、小さな一歩を重ねてゆくことが大切だといえるでしょう。
編集部注
本連載では、経済産業省の資料の定義にのっとり、DXを「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」としています。
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フリーイラストレーター。アニメ「こうしす!」ではキャラクターデザイン・キャラ作画担当をしています。
アニメ「こうしす!」監督、脚本。情報処理安全確保支援士。プログラマーの本業の傍ら、セキュリティ普及啓発活動を行う。
著書:「こうしす!社内SE 祝園アカネの情報セキュリティ事件簿」(翔泳社)、「ハックしないで監査役!! 小説こうしす!EEシリーズ 元社内SE祝園アカネ 監査役編 [1]」(京姫鉄道出版)
映画:「こうしす!EE 総集編映画版」
「物語の力でIT、セキュリティをもっと面白く」をモットーに、作品制作を行っています。
オープンソースなアニメを作ろうというプロジェクト。現在はアニメ「こうしす!」を制作中。
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