Gartnerが実施した2024年の生成AIプランニングに関する調査によると、戦略の策定に参加しているデータ/アナリティクス(D&A)のリーダーは、全体の26%にとどまっている。組織がAIへの取り組みを進める中、D&Aリーダーはこうした状況を変えるために、自らの見解を積極的に打ち出す必要がある。
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最高データ/アナリティクス責任者(CDAO)のようなデータ/アナリティクス(D&A)のリーダーは、組織がAIの複雑さを乗り越える上で極めて重要な役割を果たす。ビジネス価値の創出に向けた技術の活用と、AIが学習する知識のソース管理に関する専門知識・ノウハウを持つことから、D&AリーダーがAI戦略に関与することは不可欠だ。
だが、その重要性にもかかわらず、多くのD&AリーダーはAI戦略に関する議論の蚊帳の外に置かれている。Gartnerが実施した2024年の生成AIプランニングに関する調査では、生成AI戦略の策定に参加しているD&Aリーダーは、全体の26%にとどまることが明らかになった。
D&Aリーダーはこうした状況を変えるために、組織がAIへの取り組みを進める中で、自らの見解を積極的に打ち出す必要がある。以下に挙げる行動を取ることで、ビジネス目標に沿うだけでなく、その達成を後押しするAI施策を効果的に展開できる。
AIに関する議論において、経営陣からの支援と重要な役割を確保するため、D&Aリーダーは自らの役割を、価値を創造するプロフィットセンターの責任者として位置付ける必要がある。結果を出すことに特化した活動を優先することが、D&Aの成熟度を高め、財務パフォーマンスを向上させるために不可欠だ。
Gartnerの分析はD&A機能の管理やガバナンス、プロジェクト実行を重視するD&Aリーダーが、優れた財務成果を達成することを示している。大きな果実を得るためには、リーダーは以下を実行すべきだ。
具体的なビジネス価値へのD&Aのインパクトを実証することで、リーダーは技術的支援の提供者から、戦略的なビジネスパートナーへと立場が変わる。これにより、D&Aリーダーは主要なステークホルダーとして、AI戦略に関する議論に参加し、組織目標に沿ったAI施策によってビジネス価値の創出を推進できる。このようにD&Aの土台作りに注力することで、D&Aリーダーは組織の成熟度を向上させ、財務パフォーマンスを最大30%高められる可能性がある。
D&Aの土台作りは、AI戦略の策定に向けた議論に参加することを目指すD&Aリーダーにとって始まりにすぎない。こうした議論を実りあるものにするために、D&Aリーダーは積極的に話し合いをリードし、ビジネス戦略に沿って具体的な成果をもたらすプロジェクトとしてAI施策を展開することについて、経営チームを納得させる必要がある。さらに、AIリスクを最小限に抑え、軽減する能力を発揮し、AIイニシアチブ全体を通じて適切な道筋をつけ、経営陣のガイド役を務めるべきだ。
最初のステップは、AIへの組織の意欲と大志を理解することだ。D&Aリーダーは、Gartnerの「AI Opportunity Rader(AI活用機会レーダー)」(※)のようなツールを利用し、AIの機会とリスクの戦略的評価をすべきだ。AIに関連する可能性とリスクの両方に対する重要な理解により、D&Aリーダーは、AI戦略に関する議論の先頭に立つユニークな立場にある。
この議論では、現実的な期待を設定することが重要だ。D&Aリーダーは、特定された機会ごとに、潜在的なAIリスクと実行可能な軽減戦略を示す必要がある。データとAIツールの技術およびビジネスへの影響に関する専門知識のおかげで、D&Aリーダーは、AI活用機会レーダーなどで見つかったAIの各機会について、リスクと軽減策を理解できる。
これらの洞察を共有することで、D&Aリーダーは現実的な期待を確立し、必要なリスク軽減策を確実に実施し、AIイニシアチブにおいて経営リーダーのガイド役を効果的に務められる。
AIイニシアチブを成功させるには、組織は正確で信頼性が高く、透明性があり、堅牢(けんろう)な保護とプライバシー対策で安全が確保された「AI-Readyデータ」(AI活用に対応可能なデータ)にアクセスできる必要がある。
D&Aリーダーには、ユースケースごとにAI-Readyデータを提供し、組織をAIリスクから守る責務がある。この責任には、D&Aガバナンスプログラムを活性化し、展開することが含まれる。これは経営リーダーに対し、AI-Readyデータの性質に加え、AI-ReadyデータとAIへの大志、D&Aガバナンス、ビジネス価値との関連を明確にする機会になる。
AI-Ready(AIの導入目的を達成するための準備ができている状態)であるためには、多面的なAI要件を継続的に満たせる必要がある。D&Aリーダーは、ステークホルダーにこのことを教育して理解させなければならない。継続的なAI-Readyデータの提供には、データを特定のユースケースに適合させ、適合度の測定と検証をし、入手可能なメタデータに基づく反復プロセスによって、ガバナンスプラクティスを適用することが含まれる。
AI-Readyデータは1回用意すれば済むものではなく、データ管理、可観測性、ガバナンスの専門知識・ノウハウが必要となる継続的な取り組みによって、個々のAIユースケースに適したデータを確保し続ける必要がある。
D&Aリーダーは、AIガバナンスをD&Aガバナンスの拡張として位置付け、AIは独立した単独のプログラムではなく、D&Aと相互に関連するものであることを、経営リーダーが理解する手助けをすべきだ。このアプローチにより、D&Aリーダーは組織のデータ、アナリティクス、AI戦略の先頭に立つことになる。
AIリテラシーの向上は、重要スキルの育成のためだけでなく、能力拡張ツールとしてAIを使おうという意欲を後押しするためにも不可欠だ。「従業員がどのようにAIツールを利用することで恩恵を受けられるか」を示す正式な研修プログラムを実施することで、組織は社内のAI活用機運を高め、AIに関する誤解を解消できる。
幸い、D&Aリーダーは、AIリテラシープログラムを開始する好機に恵まれている。既存のデータリテラシーの取り組みにAIリテラシープログラムを統合できるからだ。AIリテラシーをデータリテラシーの拡張として位置付けることで、D&Aリーダーは社内の抵抗を最小限に抑えながら、従業員のアップスキリング(スキルの高度化)を効果的に進められる。
データリテラシーを拡張してAIリテラシーを包含するのであれば、既存プログラムを完全に見直す必要はない。D&Aリーダーは、現在のデータリテラシーの考え方、プログラム、フレームワークをベースに、AIリテラシーをシームレスに組み込める。このアプローチにより、スムーズな移行が可能となり、従業員はAIの可能性を引き出すために必要なスキルを身に付けることで、能力を向上させ、組織の成功にさらに貢献できるようになる。
出典:The Role of Data and Analytics Leaders in Ensuring AI Readiness(Gartner)
※この記事は、2025年4月に執筆されたものです。
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