Windows 10/11上でLinux環境が簡単に構築できる拡張機能「Linux用Windowsサブシステム(WSL)」は、シームレスにWindows OSとLinuxが利用できる便利な機能だ。今回は、WSL上のUbuntuでGUI(グラフィカルユーザーインタフェース)アプリをインストールして活用する手順を紹介する。
WSLスターターガイド「WSL上のLinuxで日本語環境を整える、日本語入力環境を構築しよう」では、WSL上のUbuntuで日本語環境を整えていく手順を紹介した。これで、WSL上のUbuntuでも日本語の入力に困らなくなったはずだ。
WSL上のUbuntuには、デスクトップ環境(GUI環境)がないため専ら端末(コンソール)でコマンドを活用するだけという人も多いかもしれない。バッチによるテキスト処理などでもUbuntuのコマンドを活用すると効率が上げられるが、GUIアプリを使いたいという場合もあるだろう。
WSLスターターガイド「WSL上のLinuxで日本語環境を整える、日本語入力環境を構築しよう」でも、GUIアプリのテキストエディタ「gedit」を例として取り上げているが、今回はLinux版Google Chromeを例にGUIアプリの使い勝手について見ていこう。
WSL上のUbuntuにGoogle Chromeをインストールしてみよう。Windows OSにもGoogle Chromeがあるのに、わざわざWSL上のUbuntuにGoogle Chromeをインストールする意味があるのか、という疑問もあるだろう。
しかし、Windows OSとUbuntuのGoogle Chromeは、プロセスが別になり、片方のプロセスが不安定になっても、もう一方に影響しないといったメリットがある。また、別のプロファイルで運用できるため、Windows OSのGoogle Chromeは仕事用のプロファイル、UbuntuのGoogle Chromeは個人用のプロファイルと分けると、いちいちプロファイルを切り替える必要がなくなって便利だ。
WSL上のUbuntuにGoogle Chromeをインストールしてメリットなどを検証してみよう。
これまでコマンドやgeditアプリのインストールで「sudo apt install」コマンドを使う方法を紹介してきた。しかしGoogle Chromeの場合は、パッケージがAPT(Advanced Packaging Tool)パッケージ管理システムに登録されていないため、「sudo apt install」コマンドだけではインストールできない。事前にGoogleのWebサイトから配布パッケージをダウンロードしておく必要がある。
Windowsターミナルを起動して、[Ubuntu]タブ(ターミナル)を開く。ターミナルが開いたら、「wget」コマンドを使って配布パッケージをダウンロードする。
wget https://dl.google.com/linux/direct/google-chrome-stable_current_amd64.deb
パッケージがダウンロードできたら、「dpkg -i」コマンドまたは「sudo apt install」コマンドを使ってインストールする。
sudo apt install --fix-missing ./google-chrome-stable_current_amd64.deb
または
sudo dpkg -i google-chrome-stable_current_amd64.deb
sudo apt --fix-broken install
インストールしたGoogle Chromeは、Windowsターミナルの[Ubuntu]タブ(ターミナル)で「google-chrome」と入力して[Enter]キーを押すと起動できる。
また、[PowerShell]/[コマンドプロンプト]タブで[wsl google-chrome」と入力して[Enter]キーを押してもよい。Windows 11の[スタート]メニューの「すべて」画面を開き、[Ubuntu]を展開し、[Google Chrome(Ubuntu)]をクリックすることで起動させられる。いずれの場合も、WSLがシャットダウンした状態からでもGoogle Chromeの起動が可能だ。この場合、WSLが起動してからGoogle Chromeが起動するため、起動まで少し時間がかかる点に注意してほしい。
WSL上のLinuxアプリは、Windows OSのタスクバーにピン留めすることが可能だ。ただ、Windowsアプリとは異なり、アプリを起動した際のタスクバーのアイコンを右クリックしても[タスクバーにピン留めする]メニューが表示されず、ピン留めできない。
Linuxアプリをピン留めするには、[スタート]メニューの「すべて」画面を開き、[Ubuntu]を展開し、ピン留めしたいアプリ名を右クリック、[詳細]−[タスクバーにピン留めする]を選択する必要がある。
頻繁に起動するLinuxアプリは、タスクバーにピン留めしておくと、起動が楽になる。
同様に[スタート]メニューにピン留めして、「ピン留め済み]欄に登録することも可能だ。[スタート]メニューの「すべて」画面を開き、[Ubuntu]を展開し、ピン留めしたいアプリ名を右クリック、[スタートにピン留めする]を選択すればよい。
また、WindowsアプリとLinuxアプリの間でコピー&ペーストが可能で、Linux版Google Chromeで表示したWebページをWindows 11の「メモ帳」アプリに貼り付けるといったこともできる。
Linuxアプリも、Windowsアプリと一緒に[Alt]+[Tab]キーでアプリケーションの切り替えが可能だ。
タスクバーや[スタート]メニューにピン留めしたLinuxアプリならば、Linuxアプリであると意識せずに、Windows OS上でシームレスに利用できる。
不要になったLinuxアプリは、[Ubuntu]タブで以下のコマンドを実行することで削除可能だ。「remove」オプションは設定ファイルが維持されるので、同じLinuxアプリを再インストールすると前の状態に戻せる可能性がある。一方、設定ファイルを含めて削除したい場合は「purge」オプションを使う。
コマンド名 | 内容 |
---|---|
sudo apt remove <パッケージ名> | パッケージを削除する。設定ファイルは削除されない |
sudo apt purge <パッケージ名> | 設定ファイルも含めてパッケージを削除する |
「<パッケージ名>」は、インストールされているアプリを一覧表示する以下のコマンドを使って調べることが可能だ。
apt list --installed | grep <文字列>
「apt list --installed」コマンドの出力を、「grep」コマンドを使って検索して「<文字列>」が含まれる名前を出力してくれる。
このようにWSL上のUbuntuで実行するLinuxアプリは、Windowsアプリと同様の使い勝手で利用できる。オープンソースで提供されているLinuxアプリも多くあるので、WSL上のUbuntuで実行すると、Windows OSの活用範囲も広がるだろう。
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