AIによるITソーシング/調達/ベンダー管理の変革Gartner Insights Pickup(404)

ITソーシング/調達/ベンダー管理(SPVM)のリーダーが直面する課題の一つに、AIによる自動化への投資不足がある。手動のプロセスは非効率やリスクの増大を招くおそれがあり、IT SPVMリーダーの悩みの種となっている。

» 2025年06月27日 05時00分 公開
[Melanie Alexander, Gartner]

ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Insights」などのグローバルコンテンツから、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。

 ITソーシング/調達/ベンダー管理(SPVM)のリーダーが直面する主要な課題の一つは、AIによるSPVM業務の自動化への投資が不足している状況が続いていることだ。そのために、非効率やリスクの増大を招く手動のプロセスに依存しがちになっている。

 急速に技術が進歩し、規制が頻繁に変わる中、SPVMリーダーは、複雑な問題に対処するためにAI(人工知能)を活用する必要がある。AIをSPVMプロセスに統合することで、企業が非戦略的な製品調達の管理、サプライヤーリスクの軽減、IT契約業務の効率化を大きく進化させることが期待できる。

SPVMの現状

 IT SPVMリーダーは、変化の激しいベンダーおよび契約のポートフォリオを手作業や管理業務によって行われることが多い。Gartnerの調査によると、繰り返し発生するタスクを効率化する技術の不備が大きな課題となっている。企業の規制順守要件の変化がそれに拍車を掛けており、AIによる自動化への投資が必要となっている。

 調達から支払いまでをカバーする自動化ソリューションも存在するが、SPVMにおけるAI導入は依然として低調だ。長期的に有益と認められたユースケースが不足しているからだ。また、ソーシングや交渉など、契約締結前のプロセスをAIで自動化する投資も不十分だ。その結果、SPVMリーダーは時間のかかるタスクと管理負担に直面している。

SPVMにおけるAIの役割

 AIを活用したツールは今後成熟し、技術導入の管理、業務プロセスや意思決定のワークフロー、オーケストレーションの高度な機能を提供するようになる。さらに、エージェント型のソーシングの判断、サプライヤー評価、選定、オンボーディングもサポートする見込みだ。Gartnerは、2028年までにSPVM部門の50%は、AIを活用して非戦略的な製品調達、サプライヤーリスクの軽減、IT契約プロセスの一部自動化を実現すると予測している。

 SPVMリーダーは、AIによってより高度な課題に集中でき、付加価値が低く、かつ低リスクの購入への関与を減らせる。これはサプライヤーによるデータアクセスを伴わない購入や、個人情報を含まない購入だ(適切なガードレールが設けられたマーケットプレースを通じた購入取引など)。契約締結前プロセスを自動化することで、タスクの処理時間の短縮、コンプライアンスの向上、基本的な取引条件のより効果的な交渉が可能になる。

 さらに、AIを活用したツールは、所定の基準を満たす事前承認済みのサプライヤーのみと契約することで、サプライヤーの選定リスクを軽減することもできる。所定の基準には、DEI(Diversity:多様性、Equity:公平性、Inclusion:包摂性)に取り組んでいるなど、規制違反のリスクがないことや、財務的な健全性が確認されていることなどが含まれる。

SPVMにおけるAI導入の戦略的ステップ

 IT契約プロセスにAIによる自動化を導入しようと計画しているSPVMリーダーは、以下の推奨事項の実施を検討する必要がある。

  • 既存技術の評価

 市販の製品を検討する前に、現在使用している技術が提供する、自動化ユースケースをサポートする機能を評価する。重要でない領域の標準化と自動化を目的に、小規模な取引ベースのイベントを試験的に実行する。

  • ビジネス部門主導の購入へのAI導入

 AIを使用して、SPVMプロセスにおける手動タスクを減らす。AIの導入機会に関する社内のステークホルダーのフィードバックを収集し、サプライヤー選択プロセスを、市場インテリジェンスの活用、リスク許容度、優先サプライヤーなどの観点から分析する。ガバナンス体制を構築し、現状と将来の望ましい成熟度を見極める。

  • 契約締結前プロセスの自動化

 AIが効率化、スピードアップ、リスク軽減を実現する、契約締結前の契約プロセスに自動化を導入する。


 IT SPVMプロセスへのAI統合はもはや選択肢ではなく、戦略的に不可欠だ。AIによる自動化を導入することで、企業はソーシング、調達、ベンダー管理業務を変革し、戦略的優先事項に集中して効率とコンプライアンスを向上させられる。AIの能力が進化を続ける中、SPVMリーダーは競争力を維持するために、積極的に技術に投資する必要がある。

出典:Transforming IT Sourcing, Procurement, and Vendor Management with AI(Gartner)

※この記事は、2025年4月に執筆されたものです。

筆者 Melanie Alexander

VP Analyst


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