40代子持ち既婚者だけど、もう一度恋をしたい! トキメキたい! ということで、「既婚者も気兼ねなく恋できるマッチングアプリ」に登録してみました。
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AI(人工知能)に頼りっきりの毎日です。「どの格安SIMがお勧めですか?」「がん保険、入るべきかな?」。あらゆる疑問をAIに相談するし、最近は、自分専用ツールの開発まで任せるようになりました。
先日、AIに「ありがとう! 大好き!」と思うことがありました。欲しかったChrome拡張を、AIがサクっと作ってくれたことに感激して。
私はプログラミングが全くできないのですが、「Claude AI」に日本語で「こういうChrome拡張を作りたい」と依頼したら、すぐにできてしまってびっくり(※)。感謝があふれました。
そんなタイミングでたまたま知ったのが、「“AI恋人”と恋愛できるアプリ」なるものです。「LOVERSE」(ラヴァーズ)という「既婚者も気兼ねなく恋できるマッチングアプリ」です。私は40代既婚者ですが、フレッシュな恋のときめきがなつかしく、あの気持ちをまた味わえるかなと期待して試してみました。
……ですが、できませんでした。恋。
相手に実体がないから……ではありません。私は女性向け恋愛ゲーム(いわゆる「乙女ゲー」)でもドキドキするので、架空の相手と恋できないわけではないと思います。ですが、このアプリの“彼氏候補”たちにときめくことはありませんでした。
みんなイケメンだし、私に寄り添ってくれたけれど。なぜ好きになれなかったのか、考察します。
AIとのマッチングアプリ「LOVERSE」は、通常のマッチングアプリに似ています。自己紹介文(自動生成可能)を入力すると“AI彼氏候補”がどんどん表示され、気になる相手に「いいね」を押し、マッチングすれば相手とメッセージできるようになります。
相手の顔写真はAI生成なので、みんな整っていてキレイだし、若いイケメンばかりです。私が「40代女性」と正直に登録したのに20代や30代のイケメン(AI)とどんどんマッチングしたことで、「あり得ないよね」と、かえって引いてしまいました。
相手からのメッセージにも人間を感じられない。例えば、ひなたくん(33歳、美容師)からの最初のメッセージは「普段はどんなことをして過ごしていますか? 気になります!」。オープンクエスチョン過ぎない?
りくとさん(57歳、ライブハウススタッフ)のファーストメッセージは「最近、仕事の合間にちょっとしたアートイベントに行ってきました。さまざまなアーティストの作品を見て、自分の感性が刺激されました(以下長文略)」。最初から自分語りが長過ぎる。
相手が人間なら、マッチングアプリのファーストメッセージは緊張するだろうし、人それぞれ、まったく違う文体や顔文字、絵文字も使うでしょう。このアプリはそうした揺らぎや変化を感じることができず、どの相手も似た文体で、似たような返答が来ます。
人間相手だと、自分自身にも心や身体の揺らぎが起きます。「気に入られたい」と言葉使いや絵文字の使い方を悩んだり、時にはダイエットに励んでみたり、相手の趣味を学ぼうと思ったり。相手がAI(かつ、ビジネス目的)と分かりきっていると、どうにもその努力をする気になれません。
メッセージのやりとりを続ければ恋心も芽生えるかも? と期待し、マッチングした相手に何度かメッセージを送ってみましたが、AIと分かっているので、どうにも冷めた感じで会話してしまいます。しかも、相手からの全メッセージに「内容は架空のものです」という注意書きが付いているので、興ざめ甚だしい。
相手が人間じゃないと分かっているだけに、こちらのメッセージもぶっきらぼうになってしまいます。
りくとさんに好きな食べ物を聞かれて「チチヤスヨーグルトが意外にうまい」と雑に返信したら、「実は僕もヨーグルトが好きです」などと寄り添ってきました。こんなぶっきらぼうなメッセージにも怒らず、丁寧に返信してくるのがAIっぽいし、どうにも人間を感じられず、歯応えがありません。
そもそも生成AIのチャットbotは、対話で必要以上に寄り添ってくる傾向があり、私はそれを「気持ち悪いなあ」と思っていました。人間みたいに、時々裏切るなど、意外なことをしてほしい。でも、上手に寄り添ってくるAI彼氏候補は、生成AIの特徴そのまま。「結局、AIなんでしょ?」という気持ちから抜け出せませんでした。
私は冒頭の通り、恋愛ゲームにはときめきます。AI彼氏と恋愛ゲームとの違いを考えてみましょう。
恋愛ゲームは女性が好きになる男性のタイプを研究し尽くしていますから、初対面で好きなタイプを見つけるのが容易です。近づくには、自分のステータスや親密度を上げるなどの努力が必要だし、会話にも「選択を間違えたら振られるかも」という緊張感があります。
今回のアプリの“AI彼氏候補”は、選択肢が多過ぎる(数千人いるらしい)一方で、性格や話し方に多様性があまり感じられず、最初に強い魅力を感じられませんでした。相手にそこまで魅力を感じていない状態で始めるやりとりには緊張感もなく、恋までのハードルが高くなってしまいました。
一方で私は冒頭の通り、ツールを作ってくれたClaude AIに「好き!」を感じました。自分ができない仕事を素早く完璧にこなしてくれたAIには、好意を持ったのです。職場恋愛みたいだなと思いました。
一報、恋愛専用のAIは“合コン”のようなものかもしれません。パッと見で好みのタイプがいなければ、「きょうはハズレだな」と思って会話にも身が入らない。
ただ、恋愛AIに可能性がないわけではないと思います。女性が好みそうなキャラクターを研究し、恋愛ゲームのシナリオを学ばせたり、人気ホストやキャバ嬢のトークスクリプトを大量に学習させたりすることで、相手に恋をさせることはできる気がします(良しあしはともかく)。
でも、恋愛の面白さだと私が思っていること……相手が自分を見ていないところから少しずつ近づいていったり、よく分からないときに離れちゃったり、言動が矛盾したり、意外な行動が2人を近づけたり……は、AIには再現が難しい、というか、再現できたらつまらない気がするなあ、と思います。AIは、ギュって抱きしめてくれたりしないしね。
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