道具を使いこなして、楽になりたい。
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エンジニアの皆さんは、AI(人工知能)エージェントを使っていますか?
筆者のようなライターにも「Cline」のようなAIエージェントを使いこなす人が出てきているようだ。最近は、「AIエージェントを使ったら、記事を書くのがすごく楽になった!」といった記事をよく見るようになった。
そんなに便利なら、使いたい! 使って仕事を楽にしたい! 私もそう思い、何度か試してみたのだが……。分からな過ぎた。
まず、エージェントの導入方法が難しい。何とか導入できても、エージェントに対応したエディタ「VSCode」(Visual Studio Code)の使い方が分からない。この20年間、ずっと「秀丸」を使い続けてきた筆者に、VSCodeのユーザーインタフェースが複雑過ぎるのだ。
「良いプロンプトの書き方」も分からない。使いこなせそうな気がしない。「他のライターはAIで仕事を効率化しているのに、自分だけが取り残されている」という気持ちになる。
AIを使っていないわけじゃない。一般的な使い方……Webのインタフェースから質問を投げて答えてもらう」なら、毎日やっている。
「Claude」や「ChatGPT」に校正してもらったり、ロジックの矛盾を指摘してもらったり、タイトル案を考えてもらったり。なくてはならない存在になった。
でも、最近よくバズっているのは、AIエージェントを通じて、もっと高度に使いこなす方法。Web UI(ユーザーインタフェース)とは全然違うことができそうだし、いろいろと効率化しそうでうらやましい。使いこなしていないと、損なような気がしてきてしまう。
先日、ClineとVSCodeを組み合わせて記事を書いている人に方法を教わり、プロンプトも見せてもらった。そして驚いた。私のと、全然違う。
私は、AIにソースの情報を与えた後、「これをニュース記事にして」とひとこと入力するだけだった。その結果、期待した品質の記事はできず、イライラして手で書き直す。「結局手で書いた方が早かった」と、いつも思う。
だが彼のプロンプトは、みごとに構造化されていた。彼はプログラミングもできるので、プロンプトにもその考え方を応用しているようだ。コンピュータが考えやすい順に、マークダウン形式で細かく指令を書いていた。「なるほど、こう書くのか」と感心したものの、私にはできそうにない。
「AIって、プログラミングができないと使いこなせないんだ」と絶望した。
そんな思いを先日、ある情報系の研究者に打ち明けたところ、意外な返答があった。
「それはAIの問題でもある。AIを開発しているのはエンジニアだから、AIはエンジニアのロジックで使いやすく作られている。AIが非エンジニアにとって使いにくいのは、AIのつくりのせいであって、あなたが悪いのではない」
目からうろこだった。
生成AIは、自然文で指令できるとはいえ、人間ではない。筆者はライターなので、人間に分かりやすい順番で文章を書く能力は高いと自負しているが、AIにとっての順番は異なる。ライターである筆者が、後者を苦手に思っていることで、自分を責める必要はなかった。AIの理解のルートが人間と異なることは、使い手のせいではない。
いわゆる“AI驚き屋”に象徴されるAIにポジティブな人々は、AIがいかにすごいかを吹聴する。「AI情報を追わなくては!」と焦っているうちに“AIの誇大広告”に必要以上に踊らされていた自分にも気付けた。
私は私の能力の範囲でAIと付き合えばいい。そう割り切った……つもりだが、「AIエージェントが使いこなせれば、仕事がもっと楽になるのかも?」という期待も止められない。私が欲張りなだけかもしれない。
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