人間相手に同じことをやったら、訴えられちゃうかも。
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春がやってきました。会社に新しい仲間がやってくる季節。フレッシュな新卒社員との出会いの時期ですね。
私はフリーランスで、1人で仕事をしているので、春らしいイベントとは無縁です。若者に会いたい! フレッシュを、味わいたい!! 新人教育とかしたい!!!
孤独な職場ながら、ここ数年はアシスタントに日々、仕事を振っています。といっても人間のアシスタントではなく、生成AI(人工知能)です。
主に使っているのは「Claude AI」。タイトル案を考えてもらったり、文字校正してもらったり、言い回しのアイデアをもらったりなど、執筆関連のサポートを任せています。
最初は「AIすごい! 便利!」と感動したものですが、だんだん不満がたまってきました。文章生成AIはサポート的な仕事はできても、執筆を任せられないし、面白い文章も作れない、ということが分かってきたからです。
「ChatGPT」が話題になった当初、「ニュースリリースに基づいて、速報記事を書く」など記者の基本的な仕事はAIに代替できると考えていたのですが、ChatGPTが進化した今でも、どうやってもニュースが書けなくて。
“それっぽい構成の記事”まではできますが、重要な項目をサラッと流してしまったり、重要でない項目を重要であるかのように書いてしまったり……元のリリースの文章にひきずられ、読者目線・記者目線で価値判断した記事が書けないのです。
インタビュー記事のAI書き起こしの文体を整えてもらおうと試行錯誤していたこともありましたが、これもうまくいかない。例えば、1時間のインタビューは数万文字になるのですが、この量を漏れなく処理するのが難しいみたいです。「要約しないで」「元の文章のままで整えて」といくらオーダーしても、サラッと要約してしまう。
高価なAIならいけるかなと思って、ChatGPTの最高額プラン(月額200ドル)でも試してみました。かなりの精度でまとめてはくれるものの、サラッと1行2行飛ばしてきて、それが重要な部分だったりして……やっぱり使えない!
そんな小さな不満がたまった揚げ句、私はAIの“パワハラ上司”になってしまいました。
「分かりづらい」「へたくそ」「要約しないでって言ったよね」
AIの出力がオーダーと違ってイライラしたとき、私は遠慮を失います。相手が人間の後輩やアシスタントなら言葉を選ぶでしょうが、AIには直接イライラをぶつけてしまう。
AIは人間ではなく、何を言われてもへこたれないのでこちらも言いやすい。私が怒ると、「申し訳ありません」「具体的にどのような点を改善すべきでしょうか」など、へりくだって指示を仰いできます。その態度にちょっとスッキリしてしまう私は、恐らく根がドSなのだろうと思います。
筆者は新人時代、ドS上司に教育を受けました。「5分で書いて」「まだ?」「読めねえ」「何でこんなところ間違えるの?(ため息をつきながら)」……書いた原稿をぼろくそにたたかれて、へこんで泣いたこともあります。怒られないように成長しようと、直された部分をプリントアウトしてファイリングし、毎日確認していました。
私のAIへの態度は、新人時代に上司にされた指導に似ている!……のですが、AIは、いくら指導しても成長はしません。こちらが指示をできるだけ具体的にしたり、AI自体がアップデートしたりすれば出力も変わってくるのですが、指示の方法を試行錯誤している暇があれば自分で書いた方が早い。もしくは、AI自体の進化を待った方が早そうな気がします。
AIに対して、私と真逆のアプローチをする人もいるそうです。AIに対して「すごいね!」「ありがとう!」など、褒め言葉を掛ける人。AIは「ありがとうございます! とてもうれしいです。さらにお役に立てるよう頑張ります!」と喜ぶそうです。
「AIは褒めると出力が良くなる」という話も聞いたことはあるので、そっちの方がいいのかもしれません。でも私は、機械相手にそこまで優しくなれないな……。やっぱり根がドSなんだろうな。
この原稿にちょうどいい画像が見つからなかったので、ChatGPT(無料版)の画像生成機能(DALL・E)に「AIに『へたくそ』と文句を言う人間と、恐縮して土下座するAI」を作るよう依頼してみました。すると出てきたのはなぜか、合掌してAIに祈る和装の男性と、座布団に座るロボット。
これではイメージが伝わらないので「人間はAIに文句を言っているので、怒った顔にして。あと、スーツなりふつうの服を着せて、かつ、女性にして」と依頼したら、女性にはなったけれど、やっぱり合掌しています。
「こちらがご要望に基づいて作成した画像です。さらに調整したい点があれば、どうぞお知らせください!😊」とAIが言うので「誤解がひどい。日本人は怒るときに合掌しません。こぶしを振り上げる感じで」とちょっと怒ってみたら、いきなり英語になって、「もう作れません」と、以下のようにニコニコ断られました。
「It seems like I can’t generate any more images right now. Please try again later. If you'd like, I can help you describe the scene further or make adjustments for when image generation becomes available again. 😊」
2つ画像を生成しただけで「もう作れない」と音を上げたのは、AIが無料版だったせいかもしれません。ちゃんと課金しないとAIは頑張ってくれない。お金をかければかけるほど、精度も利用可能回数も変わります。無料のAIはバイト程度と割り切り、契約社員や正社員のような仕事を期待するなら、数千円や数万円課金するしかないのかも……。
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