商用利用も含めて無料化されたクライアント向けの仮想化ソフトウェア「VMware Workstation Pro」。今回は、物理PC上のWindows 10環境を仮想マシンに変換して、VMware Workstation Proで実行する方法について解説する。Windows 11に移行する際のバックアップとして、Windows 10環境を維持するのに便利な方法だ。
VMware Workstation入門「VMware Workstation Proの仮想マシンをリモートデスクトップで利用できるようにする」では、VMware Workstation Proの仮想マシンにリモート接続する方法を紹介した。
本稿では、物理PC上のWindows 10環境を仮想マシン化して、VMware Workstation Proで利用する方法を紹介しよう。
Windows 10からWindows 11に移行するに当たって、現在のWindows 10をインプレースアップグレード(上書きアップグレード)するのではなく、新しいPCを購入してそこに環境を構築しようと考えている人も多いのではないだろうか。その際、古いWindows 10のPCをどうするのかが問題となる。
もちろんいざというときのためにWindows 10のPCを取っておければいいのだが、リースなどの場合は返却しなければならない場合もある。また、会社によっては廃棄を求められるケースもあるだろう。
新しいPCでWindows 11に移行したのはいいけど、データが古いWindows 10上にインストールされているアプリケーションでなければ開かない、といった事態は避けたいところだ。
Windows 10の環境を使う可能性は低いが、念のためにとっておきたい、という場合、物理PCを仮想マシンに変換しておくとよい。いざというときは、仮想マシンを起動すれば、Windows 10環境が利用できるからだ。ただし、Windows 10に依存したデバイスなどを利用したいという場合は、仮想マシンでは使えないことが多いので注意してほしい。
物理PCを仮想マシン化する際に作成される仮想ディスクは、物理PCのディスクの容量となる。例えば、物理PCに1TBのディスクが搭載されており、そのうち500GBを使用していたとすると、作成される仮想ディスクのファイルサイズは500GBだが、容量可変ディスクで作成されるため仮想ディスクの最大容量は1TBに設定される。
そのため、物理PCを仮想マシン化する前に、物理PC上の不要なファイルなどを削除してディスク容量を減らしておくと変換時間を短縮できる。
システムフォルダなどにある不要なファイルを整理するには、「ディスククリーンアップ」を実行するのが簡単だ。エクスプローラーを起動し、左ペインで[PC]を選択、[ローカルディスク(C:)]を右クリックして、[プロパティ]を選択する。[ローカルディスク(C:)のプロパティ]ダイアログが開くので、「容量」欄の[ディスクのクリーンアップ]ボタンをクリックする([Windows]+[R]キーを押して、[ファイル名を指定して実行]ダイアログを開き、「cleanmgr.exe」と入力して[Enter]キーを押してもよい)。
[ディスククリーンアップ]ダイアログが開くので、[システムファイルのクリーンアップ]ボタンをクリックして、システムファイルを含む不要なファイルを検出する。「削除するファイル」欄で削除したい項目にチェックを入れて、[OK]ボタンをクリックすればよい。
上記のクリーンアップを実行する前には、Windows Updateによるアップデート適用を済ませておいた方がよいだろう。消費している容量が大きい上に、クリーンアップ後にWindows Updateを実行すると、また容量を消費してしまうからだ。
[ダウンロード]フォルダなどは、手動で不要なファイルを削除するなどして、ディスクを整理しておく。
物理PCをVMware Workstation Proに対応した仮想マシンに変換するには、Broadcom提供の「VMware vCenter converter」というツールを利用する。そこで、VMware vCenter converterをダウンロードして、インストールしよう。
変換したい物理PC上のWebブラウザで、以下のURLを開く。
BroadcomのWebサイトにログインしていない状態の場合は、ログインページが開くので、VMware Workstation Proをダウンロードする際に作成したアカウントでログインする。
ログインが完了すると、「VMware vCenter converter」ページが開くはずだ。ここで「Standard」と書かれた部分の[>]アイコンをクリックする。「6.6.0」と「6.4.0」の2つのバージョンが表示されるので、特別な理由がない限り最新の「6.6.0」をクリックする。「VMware vCenter converter 6.6.0」ページが開いたら、ダウンロードアイコンをクリックして、ダウンロードする。
VMwareやBroadcomのサイト内で検索したり、製品ページをたどったりしても、リンク切れなどでダウンロードページを開くのが困難な状態となっている。上記のURLで直接製品ページを開くのが楽だ。
VMware vCenter converterのインストーラー「VMware-converter-en-<バージョン番号>.exe」がダウンロードできたら、これを実行して、指示に従ってインストールする。インストールで特に迷う部分はないだろう。
変換したい物理PCで実行中のアプリケーションなどがあれば、全て終了させておくのが無難だ。仮想マシンへの変換途中でシャットダウンしてしまうようなことがあるとやり直しになってしまうからだ。
ここから実際の変換作業に移る。VMware vCenter converterを起動したら、メニューバーの下にある[Convert machine]ボタンをクリックする。[Conversion]ウィザードが開くので、ここで物理PCを仮想マシンに変換していく。
「Source System」画面では、「Select source type」欄で「Powered on」を選択し、その下のプルダウンリストで[This local machine]を選択する。ネットワークで接続された別の物理PCに接続して仮想マシン化することも可能だが、ネットワークの負荷や変換時間などを考慮すると、物理PC上で実行するのがよい。
[Next]ボタンをクリックした際に「Permission to perform this operation was denied.」と表示された場合は、一度、VMware vCenter converterを終了し、[スタート]メニューの[VMware vCenter Converter Standalone Client]を右クリックして、[詳細]−[管理者として実行]を選択して、管理者権限でVMware vCenter converterを起動すればよい。
次の「Destination System」画面では、「Select destination type」のプルダウンリストで[VMware Workstation or other VMware virtual machine]を選択し、「Hardware compatibility」欄では仮想マシン化した際に実行するVMware Workstation Proのバージョンを選択する。「Virtual machine details」欄では仮想マシン名と保存先フォルダを選択する。仮想マシン(仮想ディスクと設定ファイル)は、指定した保存先フォルダに仮想マシン名でフォルダが作成され、その下に保存される。
次の「Options」画面では、仮想マシンの設定が編集できる。物理PCの仕様に準拠した仮想マシンが作成されるため、プロセッサのコア数が少なかったり、不要なネットワークインタフェース(NIC)が作成されたりしてしまう。この画面で[Edit]をクリックして、編集することが可能だ。仮想マシンに変換後でも編集可能なので、編集せずに[Next]ボタンをクリックしてもよい。
「Summary」画面で設定した内容を確認し、[Finish]ボタンをクリックすると、物理PCから仮想マシンの作成が開始される。VMware vCenter converterの「Status」欄に進捗が%表示され、「End time」欄で終了までの残り時間が表示されるので、この時間を参考に完了まで放置しておけばよい。
作成が完了したら、保存先フォルダに「<仮想マシン名>」フォルダが作成され、その下に「<仮想マシン名>.vmdk(仮想ディスクファイル)」と「<仮想マシン名>.vmx(仮想マシンの設定ファイル)」の2つのファイルが保存されているはずだ。
仮想マシンを実行したいVMware Workstation ProのあるPCに、この「<仮想マシン名>」フォルダをコピー(移動)すれば、そこで仮想マシン化したWindows 10環境が実行できる。
「<仮想マシン名>」フォルダをVMware Workstation ProのあるPCに移動したら、VMware Workstation Proに仮想マシンを認識させよう。
VMware Workstation Proを起動したら、[ファイル]−[仮想マシンのスキャン]を選択し、[仮想マシンのスキャンウィザード]を起動する。「<仮想マシン名>」フォルダを移動したフォルダを選択し、[次へ]ボタンをクリックすると、物理PCを仮想化した仮想マシンが見つかるはずだ。
これをクリックして、VMware Workstation Proに認識させる。仮想マシン化の際にプロセッサのコア数やメモリ容量などを編集していない場合は、起動前に変更しておこう。VMware Workstation入門「知っておきたいVMware Workstation Proで仮想マシンを快適に使うための基本設定」で解説している通り、[仮想マシンの設定を編集する]リンクをクリックして、[仮想マシンの設定]ダイアログを開き、[ハードウェア]タブで各項目を設定すればよい。
設定が完了したら、仮想マシンを起動してみよう。「デバイスを準備しています」と表示されて起動まで少し時間がかかるが、しばらくするとWindows 10が起動するはずだ。画面解像度などは、物理PCの設定が反映されないので、起動後に設定する必要がある。
利用する可能性のあるアプリケーションが仮想マシン上でも実行できるかどうかなどを確認しておこう。
プリインストールされたWindows 10では、そのPC上で実行することが条件となっていることが多い。そのため、物理PCを仮想マシンに変換するとライセンス条件に違反してしまうことになる。使用しているWindows 10のライセンスによっては、仮想マシン化する前にパッケージ版のプロダクトキーに変更しておくなどの措置が必要になるので注意してほしい。
同様にアプリケーションについてもライセンスに注意する必要があることを忘れないようにしよう。
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