IBMは2020年1月8日(米国時間)、特定組織を対象にした「『IBM Qシステム』をクラウドで利用可能にするネットワーク」である「IBM Q Network」への参加組織が100を超えたと発表した。
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2020年1月8日(米国時間)、IBMは汎用(はんよう)量子コンピューティングシステム「IBM Qシステム」をクラウドで利用できるネットワーク「IBM Q Network」の参加組織が100を超えたと発表した。
IBM Q Networkに参加する組織の業種は、航空、自動車、銀行、ファイナンス、エネルギー、保険、素材、エレクトロニクスなど多岐にわたる。今回新たに参加し、量子コンピューティングの実用的な用途の検討に乗り出した企業には、保険企業のAnthem、航空企業のDelta Air Lines、金融機関のGoldman SachsやWells Fargo、天然ガスを扱うWoodside Energyなどが名を連ねている。
IBM Q Networkにはこうした業界大手企業に加え、学術研究機関、国立研究所、新興企業も参加している。新たに参加したこうした組織には、ジョージア工科大学、スタンフォード大学、ロスアラモス国立研究所、ITサービスを提供するAIQTech、音楽関連サービスを提供するBeit、コンピュータハードウェアを扱うQuantum Machines、電子取引サービスのTradeteq、測定機器を扱うZurich Instrumentsなどが含まれる。
IBM Q Networkによるシミュレーションの累計実行回数は数千億回に上る。その結果、実用的な量子アプリケーションに関する200以上の研究論文がサードパーティーによって発表されているという。
IBMは最近、商用汎用量子コンピュータ「IBM Q System One」を米国外に初めて設置する計画も発表している。設置先は2つで、1つは欧州の主要な応用研究機関であるドイツのフラウンホーファー研究機構(Fraunhofer-Gesellschaft)、もう1つは日本の東京大学だ。これらの組織に設置されるIBM Q System Oneは、いずれも国全体の研究の進化に貢献することを目指しており、量子コンピューティングコミュニティーの成長と、新しい経済的機会の促進に向けて、大学、業界、政府機関に関わる教育フレームワークプログラムを提供する。
これらの組織を含むIBM Q Networkの参加組織は、IBMの量子コンピューティングのノウハウやリソース、オープンソースのフレームワーク「Qiskit」、その他の開発者ツールを利用できる。「IBM Quantum Computation Center」にクラウド経由でアクセスすることも可能だ。IBM Quantum Computation Centerは、商用利用可能な最先端の量子コンピュータを15台保持しており、その中には業界最大の53量子ビットシステムも含まれる。これらの量子コンピュータは、ビジネスと科学の実用的な用途の探求に利用できるという。
IBM Researchのディレクター、ダリオ・ギル氏は次のように述べている。
「われわれは量子時代に入っている。IBMはパートナーと協力し、この新技術を、主要なビジネスおよび社会課題の解決に応用する。量子コンピューティングは、グローバルな気象変動対策における炭素捕捉物質の発見やバッテリーの電力効率の向上につながる新しい化学的性質の発見といった重要課題への取り組みに大きな影響を与えるだろう」
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