AI導入の課題は「スキル」や「ユースケース」の不足ではない、Gartner従業員の代替がAI導入の目的なのか

AIや機械学習(ML)に取り組んでいる企業では、平均4つのAI/MLプロジェクトを実施している。プロジェクト数は2020年に倍、2021年にはさらに倍へと増えていく見通しだ。だが、AI/MLにおける課題も見えてきた。

» 2019年07月17日 18時00分 公開
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 Gartnerは2019年7月15日(米国時間)、人工知能(AI)や機械学習(ML)に取り組む企業についての調査「AI and ML Development Strategies」(AIとMLの開発戦略)の結果を発表した。

 これらの企業では、平均4つのAI/MLプロジェクトを実施しており、回答者の59%は、自社でAIを導入済みだとしている。

 Gartnerのリサーチバイスプレジデントを務めるジム・ヘア氏は、次のように指摘している。

 「AIの導入が2019年に大きく加速している。AIプロジェクトが増加していることは、スタッフと資金がプロジェクトへ適切に配分されるよう、企業が組織再編の必要性に迫られている可能性があることを意味する。AIスキルを組織内に広げ、予算を確保し、優先順位を設定し、ベストプラクティスを最良の方法で共有するために、社内に横断組織として『AI Center of Excellence(AI CoE)』を確立することが最良の道だ」

 現在、実施されているAIプロジェクトの数は平均4つだが、回答者はこの数字が年々急速に増えると予想している。2022年には、平均35のAIやMLプロジェクトが実施されるとの予想だ。

調査対象企業におけるML/AIプロジェクト数の平均値の推移(出典:Gartner

AIの使用目的は2つ――顧客エクスペリエンス向上とタスク自動化

 自社がAIを使用する最大の目的について問われると、「顧客エクスペリエンスの向上」を挙げた回答者が40%と最も多く、これに次いで多かったのがRPA(Robotic Process Automation)としてAI/MLを使う「タスクの自動化」(20%)だ。

 チャットbotや仮想パーソナルアシスタントのような技術は、社外の顧客に対応するために役立つ。だが、過半数の回答者(56%)が、自社ではAIを意思決定の支援や従業員への助言のために、社内で使用していると答えた。

 これについてヘア氏は、「AIに関しては、人間のワーカーを代替するというよりも、彼らの能力の拡張や意思決定の迅速化、改善の方が重視されている」と説明する。

AI導入の課題は「データの品質」

 一方、AI導入の課題として多くの回答者が挙げたのは、「スキル不足」(56%)や「AIのユースケースの理解」(42%)、「データのスコープや品質の問題」(34%)だった。

 「スキルギャップがある場合は、サービスプロバイダーを利用したり、大学との提携や既存従業員向けトレーニングプログラムを確立したりすることで対処できる。だが、堅牢(けんろう)なデータ管理基盤は違う。一朝一夕には構築できない。信頼できるデータ品質がなければ、正確な洞察の提供や信頼の構築、バイアスの低減はできない。データ準備は、あらゆるAIプロジェクトの最優先事項の一つだ」(ヘア氏)

AIプロジェクトの成功指標は「効率」か「顧客エンゲージメント」か

 今回の調査では、多くの企業がプロジェクトの効果測定に当たって、「効率」を成功の指標と位置付けていることも分かった。

 「効率を、価値を示す目標指標として採用するケースは、AIを保守的に導入した企業や(保守的とはいえないが)一般的な企業で多く見られた。これに対し、導入を積極的に進めている企業では、顧客エンゲージメントの改善を目標に掲げる傾向がはるかに高い」と、Gartnerのディスティングイッシュトバイスプレジデント兼アナリスト、ホイット・アンドルー氏は説明している。

 今回の調査は、2018年12月に「Gartner Research Circle Members」を対象にオンラインで行われ、106人が回答した。Gartner Research Circle Membersは、Gartnerが管理するパネル(調査対象者)である。欧州と米国、カナダ、アジア太平洋地域、ラテンアメリカのITの専門家と、ITとビジネス両方についての専門家が参加している。この調査では、回答者が「ML/AIについて、ビジネスかまたは技術的な側面に精通しており、自社がML/AIを導入済みであるか、導入を計画している」という条件を満たす必要があった。

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