ドイツ人ゲーム開発者が考える、日本人とのコミュニケーションの「心地よさ」:Go AbekawaのGo Global! カイさん from ドイツ(後編)(1/2 ページ)
ドイツでゲーム開発の基礎を築いたカイさんは、なぜ日本という異国の地でキャリアをスタートさせたのか。日本のゲーム業界で働くことの魅力と、将来の夢を伺う。
グローバルに活躍するエンジニアを紹介するインタビュー連載「Go Global」。今回も、日本のゲーム会社、コロプラで開発効率化グループの一員として活躍するドイツ出身のゲーム開発者、Kai Eschmann(カイ・エシュマン、以下カイさん)にご登場いただく。
前編では、ドイツの古都で過ごした幼少期から、ゲームとプログラミングに目覚め、大学で専門的な学びを深めるまでの軌跡を追った。後編では、彼が日本のゲーム業界に飛び込んだ理由、日本でのキャリアパス、そして異文化の中でエンジニアとして成長する中で見えてきた挑戦と展望について語る。
聞き手は、AppleやDisneyなどの外資系企業でマーケティングを担当し、グローバルでのビジネス展開に深い知見を持つ阿部川“Go”久広。
日本のゲーム業界で働いてみたい
大学でコンピュータサイエンス、特にゲームプログラミングの専門性を高めたカイさんは、卒業論文を執筆しながら日本のゲーム会社への応募を始めた。
彼が日本という異国の地を選んだのには、大きく分けて2つの理由があったという。
一つは、「小さい頃からずっと、ドイツ以外の国で暮らし、全く新しい生き方や生活環境を経験してみたいと思っていました」という強い思いである。新しい経験への渇望に加え、「日本のアニメや漫画、そして日本の文化全般が本当に魅力的だったから、すぐに住んでみたいと思いました」と、あえて日本を選んだ理由を語る。
もう一つは、「幼い頃から日本のゲームがすごく好きで、日本のゲーム業界で働けたら他の国よりも特別な経験が得られると感じていた」ことだ。特に『プロフェッサーレイトン(レイトン教授)』シリーズや『ニーア』シリーズ、ゲームメーカー フロム・ソフトウェアの作品や、『メタルギア』シリーズで知られる小島秀夫氏のゲームといった日本の名作ゲームに深く共感し、「その開発現場に参加してみたいと思っていて、そこに、より面白く働く環境があり、面白い仕事をできると感じました」という。これらの熱い思いが、彼を日本へと導く決定打となったのである。
オンラインでの面接を経て日本のゲームメーカー トライエースの内定を得たカイさんは、2022年に来日し、キャリアをスタートさせた。
企業文化で所属先を選ぶ、という考え方
トライエースでは、まずゲームプログラマーとしてゲームプロジェクトに参加し、徐々にツール開発やバグ調査といった業務に携わるようになった。この経験の中で、仲間のプログラマーが使うツールの開発や拡張、開発環境の改善に「本当に大きなやりがいがあると感じました」という。
外国籍の従業員が多かったこともあり、新しい技術や表現方法、システムなどを研究開発するR&D部門に異動。本腰を入れて新たなツールの開発や新機能の実装に取り組むこととなった。自身の興味と強みを生かせる機会に恵まれたといえるだろう。
だが、カイさんは転職を決意する。
トライエースの環境や仲間たちには満足していたものの、他の環境を経験してみたいという探求心と、「より大きな規模で環境改善し、技術のヒントを深掘りしたい」という意欲から、新天地を探すようになったのだ。
コロプラの面接は、彼にとって「すごく素晴らしい」ものであった。特に「マネジャーや部長クラスの方の人への接し方」に「人を通して尊敬されることなどを感じて」、面接全体の明るい雰囲気が「他の企業と比べて本当に独特だなと感じて、印象的でした」と語り、企業文化への共感が入社の決定打となったことがうかがえる。
現在カイさんは、コロプラの開発効率化グループに所属し、さまざまなゲームプロジェクトのライブラリ拡張、メモリ最適化、技術検証、そして開発・テストツールの開発などに従事している。
特に最近は「テスト関連の表示や、表示ツールなどを開発して」おり、「全く経験のないことにも携わりますので、広く学ぶことがたくさんあります」と語るように、常に新しい技術的課題に挑戦している。彼の仕事は多岐にわたるプロジェクトを同時に進めるため常に忙しいようだが、「新しいことばかりで楽しいです。僕は新しいことをするのが好きですから」と、その挑戦を心から楽しんでいる様子がうかがえる。
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ゲームが好き、プログラミングも好き、柔道は怖い、クモはもっと怖い。ブドウの産地で産まれ育った青年は、次第に外の世界に目を向けていく。北千住で日本語をめっちゃ覚えました
「やったー!」とガッツポーズできるようなイケてるサービスを作りたいんです。