システムの状態を把握し、原因を説明できる力を高める「オブザーバビリティ」。従来のモニタリングを超え、ビジネス成果を生む仕組みへと変わりつつあるという。Cisco傘下のSplunkがその実態を解説した。
システムの状態を説明できる能力を高める取り組みを指す「オブザーバビリティ」。システムの“モニタリング”とは何が違い、システムの開発や運用の現場でどのように役立っているのか――。
「オブザーバビリティは単なる運用維持を超えて、ビジネス成果をけん引する戦略的要素へと進化している」。Splunk Services Japanでオブザーバビリティアドバイザーを務める末永真理氏は、シスコシステムズ(Cisco Systemsが2024年にSplunkを買収)が2025年10月23日に開催したオブザーバビリティに関する記者説明会でそう語った。
オブザーバビリティの定義について、「システムがどのような状態になったとしても、それがどんなに斬新で奇妙なものであっても、どれだけ理解し説明できるかを示す尺度」だと末永氏は説明。より具体的には、以下のような疑問を解消するための仕組みだという。
オブザーバビリティがなぜ必要なのかをよりよく理解できるのが、一見して同じことをしているかのように見えるモニタリングとの違いだ。末永氏は両者から得られる結果の違いを強調する。
モニタリングはその監視しているポイントで異常が発生しない限り、基本的には問題に気付くことはない。対してオブザーバビリティでは、監視しているそのポイントだけではなく、システム稼働状況を踏まえ、未知の問題であっても検出し、根本原因を発見できるようになる。
より具体的には、オブザーバビリティでは次のような状況を把握できるようになるという。
シスコシステムズが発表した調査レポート「Splunk オブザーバビリティの現状 2025:ビジネスの新たな促進要因の登場」で、ビジネスにおけるオブザーバビリティ機能の重要性を問う設問では、重要なビジネスプロセスの監視を「ある程度重要」または「非常に重要」とする回答が74%に達した。このレポートは、世界1855人のITOpsおよびエンジニアリング専門家を対象に実施した調査に基づき、オブザーバビリティがシステム運用やビジネス意思決定においてどのように活用されているのかを分析したものだ。
末永氏は調査で得られたオブザーバビリティに関する洞察として、以下6つのポイントを紹介した。
日本においては、ツールの分散がストレス要因として大きくなっていることや、AIの期待値と利用率のギャップが大きくなっていることが顕著だったという。
末永氏は今回の調査から得られた主な洞察の一つとして、オブザーバビリティがビジネス成果をけん引する戦略的要素へと進化している点を強調した。
従来オブザーバビリティは、システムの運用・維持、問題の特定や解決に利用されてきたが、ソフトウェアがビジネスそのものと言える存在になったり、システムの利用体験が顧客エンゲージメントに直結するようになったりする中で、ビジネス成果そのものをけん引する要素へと変わっているという。
障害の予兆検知によってシステム停止を未然に防ぎ、ビジネスにおける損害を最小限にとどめるといったシステムの運用・維持が重要であることはもちろんだ。それ以外に末永氏は、ビジネスの成長に貢献する要素として「ユーザーの利用動向などに関するデータを分析することで、今後の投資領域を明確にしたり、製品開発の意思決定を促進したりすることが可能になる」と説明した。
ビジネスに対するオブザーバビリティの効果については、下図の結果となっている。
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