コンピュータ同士、もしくはコンピュータと機器が通信をするときに、どのようなデータを、どのような順序でやりとりするかを定めたものを通信プロトコルといいます。
※本稿は、SBクリエイティブ発行の書籍『ネットワークがよくわかる教科書 第2版(2025年3月31日発行)』の中から、アイティメディアが出版社の許可を得て一部編集の上、転載したものです。
コンピュータ同士、もしくはコンピュータと機器が通信をするときに、どのようなデータを、どのような順序でやりとりするかを定めたものを通信プロトコル、あるいは単にプロトコルと呼びます。日本語で通信規約と呼ばれることもあります。
プロトコルの概念をイメージする方法として、それを人と人の会話に例えることがよくあります。誰かとの会話を成立させるために私たちは、空気の振動で伝える音を使い、20Hz〜20kHzの可聴周波数帯で、言語を(例えば日本語に)一致させ、広く一般的な語彙を用い、1分間500文字程度の速度で話す、といったことを、無意識ながら相手とともに行っています。もしこの中に一致しない要素があれば、とたんに意思疎通は困難になるでしょう。コンピュータ同士の通信もこれと同じで、相互にやりとりの方法は一致している必要があり、それを規定したものがプロトコルです。
具体的に、プロトコルが定めるものにはデータ形式と通信手順の2つがあります(図)。前者はやりとりする情報の形式を、後者はどのような順序で何をやりとりするかを規定します。このようなプロトコルを定め、あらゆるコンピュータや機器がそれに則って通信することで、製造メーカー、OS(Windows、macOS、Android、iOSなど)、アプリケーション(Webブラウザなら、Edge、Chrome、Firefox、Safariなど)、機器(PC、スマートフォン、プリンタ、テレビなど)を問わず、お互いに通信ができるようになります。
ところで、プロトコルは組織や国を問わず共通に利用されるものであるため、特定の企業が独自に定めるのではなく、公的な団体においてオープンな議論を重ねて定められるのが一般的です。このような過程は標準化と呼ばれます。
標準化を行う団体としてよく知られているものにIETFやIEEEがあります。このうちIETF(Internet Engineering Task Force)は、インターネットに関連するプロトコルの多くを定める団体で、そこで定めた各種のプロトコルはRFC(Request For Comments)と呼ばれる文書としてインターネットで無料公開されています。
実際のシステムで使われるプロトコルとして、いくつかのプロトコルが覇権を争った時期も過去にはありました。しかし現在では、中核的に用いられるプロトコルはほぼTCP/IPだけといってよい状況です(図)。これは、Windows、macOS、Linux、Android、iOSなどいずれのOSも同様で、またコンピュータ本体以外の周辺機器についても言えます。
ネットワークに関する話題でよく登場するこのTCP/IPという言葉は、TCP(Transmission Control Protocol)というプロトコルと、IP(Internet Protocol)というプロトコルを組み合わせて使用することを意味する単語です。また、これらを中心とした一連のプロトコル群を指すこともあります。TCPとIPはそれぞれ役割が異なり、TCPは信頼性の高い通信を実現するはたらきを、IPはネットワークの向こうにいる相手まで情報を届けるはたらきを、それぞれ担っています。このようにプロトコルは役割分担する形で階層的に作られ、通常、いくつかのプロトコルを組み合わせて使用します。
なお、TCP以外では、UDP(User Datagram Protocol)とIPを組み合わせて使用することもよくあります。UDPは処理の軽さや即時性を特徴とする、TCPの仲間のプロトコルで、動画閲覧やIP電話などに使われます。ただしUDP/IPと呼ばれることはあまりなく、TCP/IPと称されるプロトコル群の1つに含まれるのが一般的です。
Windowsでは、次の手順でシステムに組み込まれているプロトコル処理モジュールを一覧表示したり、追加・削除したりすることができます。また、この画面でネットワーク設定を変更することもできますが、Windows 10/11では[設定]に用意されている各項目を使ったほうがより直感的に設定変更を行えます。
RFCを手に入れたいとき、もし「RFC xxxx」といった形で付与された文書番号が分かっていれば、それで検索するとたやすく見つかります。また文書番号が分からないときは「プロトコル名 RFC」と検索すれば見つかるはずです。RFCは古い文書の内容が新しい文書の内容でアップデートされることがよくあるので、最新のRFC(番号の値が大きいもの)を探すのがポイントです。なお、RFCの原文は英語ですが、主要なものについては有志による日本語訳が公開されていることがよくあります。
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