既存AIサービスの全社展開を阻む壁とは
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AI活用は企業経営の中核に位置付けられるようになった。特にハイパースケーラーが提供するAIサービスは広く導入されているが、その利点だけでは補えない課題も浮き彫りとなっている。
具体的には、自社の業務プロセスに適合しない、ガバナンス/コンプライアンスの機能が限られている、ベンダーロックインに陥るなどの問題が挙げられる。これらは業務に潜在的なリスクをもたらすため、「自前で構築する」ことも重要な選択肢となっている。
その一つの参考となるデータが、2025年1月23日(現地時間)にDataRobotから発表されている。同社がCIO.comと共同で、米国、英国の上級意思決定者209人を対象とした調査結果だ。回答者の過半数が「ハイパースケーラーのAIサービスに追加的な投資を行う」意向を示したという。
背景にあるのは冒頭で述べた既存サービスの限界だ。「AIの全社導入を実現できた」組織は38%にとどまり、「AIがビジネス上の意思決定を改善した」と答えた割合は22%にとどまった。セキュリティ面では、84%が安全性の検証の課題を挙げ、うち約半数がデータプライバシーへの懸念を挙げた。これを受けて、半数以上の回答者が「AIセキュリティや規制対応を補完する仕組みへの投資を予定している」と回答したという。
ベンダーロックインも課題として認識されている。60%以上がクロスクラウドでの互換性不足を課題と見ており、マルチクラウドを利用した既存のワークフローに新しいAI技術を組み込むことなどが困難になっているという。コスト面では、3年以上ハイパースケーラーのサービスを利用している回答者の51%、全体の43%が維持費の高さを挙げた。
こうした状況に対し、調査を発表したDataRobotは「自前開発か既存サービスかに偏る」問題を挙げている。CIO(最高情報責任者)、CTO(最高技術責任者)などの意思決定層には、自社のビジネス目標や状況を起点に最適な手段を選ぶ視点と知識が求められる。
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