VMwareのライセンス体系やパートナー体制の変更は、ITインフラの「塩漬け」を続けてきた企業に大きな衝撃を与えた。だが、IT部門と経営層が「守り」から「攻め」へと転換するチャンスと捉えれば、この危機はチャンスといえるのではないだろうか。
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柔軟でスピーディーなインフラ運用が求められる中、企業のITインフラとしてサーバ仮想化が普及した。だが近年、仮想化技術を取り巻く環境は大きく変化している。特に業界に大きな衝撃を与えたのが、BroadcomによるVMwareの買収、その後のライセンス体系やパートナー体制の変更だ。
こうした変化を受け、仮想化基盤の「塩漬け」はより困難な状況になった。特にレガシーな仮想化基盤を構築、運用してきた企業にとっては、今後のITインフラの在り方を問われる事態となっている。
では、この変化に直面するIT部門はもとより経営層は、どのような視座を持つべきなのか。
IDC Japanが発表した国内のハイパーコンバージドシステム市場は、2024年から2029年にかけて年平均4.1%の成長が見込まれ、2029年には731億円を超える規模に達する見通しだ。
IDC Japanによると、この成長をけん引する主な要因として挙げられるのが、「仮想化環境のモダナイズ」と「プライベートAI(人工知能)基盤」だ。
プライベートAIとは、自社のデータセンターやエッジ環境で運用するAIのことを指す。企業の生成AI活用の動きが加速する中で、データのプライバシーやセキュリティの観点から推論ワークロードをオンプレミスで実行するニーズは高まっている。
だが、大規模なAIモデルを活用する場合、GPUのような高性能なハードウェアが必要となり、構築や運用はより複雑となる。そこで注目されているのが、HCI(ハイパーコンバージドインフラ)だ。コンテナプラットフォームを統合し、オンプレミスやエッジ、パブリッククラウドにまたがるAIインフラを一元的に管理できることから、プライベートAI基盤を実現するための選択肢として注目されている。
IDCの予測は、HCIが単なる仮想化基盤モダナイズの選択肢としてではなく、企業の競争力を左右するAI戦略の基盤になり得るということを示唆している。
一般に、インフラ運用にはコスト効率が求められ、「問題なく動いているものには投資しない」傾向が強い。だが、例えば生成AIを活用するにはデータ基盤を含むインフラの見直しが求められるように、必要な要素を進んで取り入れる上では「インフラはビジネスの成果に遠い」といった認識を見直す必要がある。IT部門側もインフラ改善、刷新の費用対効果を試算するなど、中長期的なIT戦略を意思決定層とともに策定することが求められる。
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