そもそも「クラウド」とは? メリットとデメリット、「オンプレミス」との違いを分かりやすく解説

クラウドとは、インターネットなどのネットワークを通じて、コンピューティング、データベース、ストレージなどのITリソースを必要な時に必要な分だけ利用できるWebサービスの総称です。クラウドのメリットや、オンプレミスとの違いを解説します。

» 2025年08月20日 05時00分 公開
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※本稿は、SBクリエイティブ発行の書籍『AWS運用入門 改訂第2版(2025年7月18日発行)』の中から、アイティメディアが出版社の許可を得て一部編集の上、転載したものです。

 クラウドとは、ユーザーがインフラストラクチャ(サーバやネットワーク機器などの基盤となる設備)やソフトウェアを所有しなくとも、インターネットなどのネットワークを通じて、コンピューティング、データベース、ストレージなどのITリソースを必要な時に必要な分だけ利用できるWebサービスの総称です。

クラウドとは?

 クラウドと同じく必要な時に必要な分だけ利用できるサービスは、みなさんの身の回りにもいろいろあります。例えば、電気、ガス、スマートフォンのデータ通信(定額・容量制限なし)などもそうです。電気は電化製品をコンセントに挿せば、ガスはコンロをひねれば、スマートフォンはインターネット経由での動画視聴など、必要な時に必要な分だけ利用できます。クラウドは電気、ガス、スマートフォンのデータ通信と同じような感覚でITリソースを利用できるWebサービスです。

photo クラウドシステムのイメージ

クラウドの6つのメリット

 別の記事でオンプレミスのデメリットを4つ挙げましたが、これらはクラウドを使うことで解消できます。ここではクラウドの特徴を以下の6つにまとめました。

  1. 機器の運用保守が不要
  2. オンデマンドセルフサービス
  3. 初期投資が不要で、実際の利用分のみの支払い
  4. スケールアップ・ダウンが容易
  5. ビジネススピードの改善
  6. すぐにやめられる

機器の運用保守が不要

 クラウドで使用できる機器はクラウドベンダーが管理しています。これらの機器はインターネット経由で借りて、サーバなどを作成することができます。機器が故障すればクラウドベンダーが対応するので、運用担当者の運用負荷が軽減します。もちろんサーバ以外にも、ルーターやファイアウォールのような機器も運用保守なしで利用できます。

photo オンプレミスとクラウドの機器の管理の違い

オンデマンドセルフサービス

 オンプレミスでは機器を調達する時にベンダーに購入依頼をするなど人を介しますが、クラウドでは人を介さず自身の操作のみでサーバなどを調達できます。

 例えば、これまで店舗に行って商品を購入(調達)しなければならなかったのが、インターネット通販を利用して自宅にいながら購入(調達)できるようになったのと同じイメージです。

photo オンプレミスとクラウドの機器の調達の違い

初期投資が不要で、実際の利用分のみの支払い

 クラウドではオンプレミスのように最初に機器を購入する必要がなく、使った分を後から支払えます。また、クラウドの利用料は単位時間あたりの費用請求で、秒単位や時間単位で計算されます。

photo オンプレミスとクラウドの支払い方の違い

スケールアップ・ダウンが容易

 クラウドでは、サーバのスペックを上げたり下げたりすることが簡単にできます。運用開始後にスペックが足りないと感じたらすぐにスペックを上げることができます。オンプレミスでは、購入前にスペック設計をしていましたが、クラウドでは厳密なスペック設計は不要です。

photo オンプレミスとクラウドのスペック設計の違い

ビジネススピードの改善

 オンプレミスではサーバを構築するのに機器の購入依頼をして、機器が到着してから構築を進めます。クラウドでは自身で好きな時にWeb画面上でサーバを調達できるため、サーバを構築するまでの時間が短縮できます。そのため、やりたいと思ったことをすぐに試すことができます。

photo オンプレミスとクラウドのビジネススピードの違い

すぐにやめられる

 クラウドではサーバの削除やアカウントの解約が簡単にできます。そのため、クラウドを試してみて、思っていたものと違うと感じたらすぐにサーバを削除してやめることができます。

photo オンプレミスとクラウドの機器の処分方法の違い

オンプレミスとクラウドの違い

 オンプレミスとクラウドの特徴を比較した表は、以下の通りです。

photo オンプレミスとクラウドの特徴

 クラウドの特徴を踏まえて、オンプレミスと比較してクラウドの強みがよく分かる2つの例を見てみましょう。

例1.夜間の利用がないケース

 オンプレミスではすでに機器を購入しているので、仮に夜間にサーバを停止しても電気代が抑えられる程度ですが、クラウドの場合は利用分の支払いのため、利用していない時にサーバを停止することでコストを抑えることができます。

photo 夜間の利用がないケースのコスト

例2.スペックを超える処理をするケース

 オンプレミスの場合は、購入した機器のスペックしかタスクを処理できません。仮にオンプレミスでショッピングサイトを運用していたとしましょう。ある時、取り扱っている商品がテレビで紹介されて想定以上の接続が来た場合には、処理できず販売機会を逃してしまいます。

 クラウドでは、サーバのスペックを必要に応じて変更できるため、通常より高スペックで処理することが可能です。

photo スペックを超える処理をするケース

クラウドのデメリット

 クラウドは柔軟性があり使いやすいサービスですが、クライアントとクラウド上のサーバ間の距離により、応答速度に遅延が生じる場合があります。例えば、工場の緊急停止システムや自動車の自動運転など、人命に関わるケースでは、この遅延が重大な事故につながる可能性があります。そのため、リアルタイム性の高い処理が必要な場合には、クラウドではなくオンプレミスを選択することがあります。

書籍紹介

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