データを受け取るGoogle Cloud側では、「データマネジメントプラットフォーム(DMP)」と、「コンテンツマネジメントシステム(CMS)」が動いている。
DMPでは、各球場から上がってくるデータを統合管理して詳細な分析を可能にする。球種や結果(ストライク/ボール、ヒットなど)をはじめとした、サマリー情報に含まれていないメトリックは、DMP上で生成・登録される。関係者による分析を容易にするデータポータルも備える。一方、CMSでは、CGコンテンツを自動生成して管理する。
この2つのシステムでは、「Cloud Run」「CloudSQL」「Cloud Storage」「Apigee」「GKE Autopilot」「Cloud GPU」といったサービスを使っている。
GKE Autopolotは、コンテナ基盤であるGoogle Kubernetes Engineのノード管理を完全に自動化する機能。ニーズに応じて自動的にスケーリングできる。課金は実行中のPodが使用するリソースに対してのみであり、未使用リソースには課金されない。この機能とCloud GPUの組み合わせが、CGコンテンツの自動生成に役立っているという。
「土日など、同時に多数の試合が行われている時間帯には多くのGPUリソースを使い、大量のコンテンツを短時間で作成する一方、試合がない時間にはコストを抑えられている。NPBの全試合、全プレーをCGコンテンツ化する仕組みをコスト効率よく実現できた」と、ソニー執行役員の平位文淳氏は話している。
平位氏は、今回のプロジェクトでGoogle Cloudを選んだ理由を次のように説明する。
1つ目は、「MLBのパートナーとして、ホークアイの生み出す膨大なデータを瞬時に分析し、選手、コーチ、解説者、ファンにリアルタイムで情報提供するシステムの基盤を既に構築し、運用している実績」があるということ。
2つ目は、前述のGKE Autopilotをはじめとした技術により、効果的でコスト効率の高いシステムを作れること。
3つ目は「TAP(Tech Acceleration Program)」というプログラムの存在だ。TAPでは、ワークショップ形式で、Google Cloudのエンジニアと共にプロトタイピングや技術検証が行える。開発段階では、Google Cloudの各種マネージドサービスの利用についての技術支援を行う。
「サービス開発の早い段階からGoogle Cloudの各サービス専門のエンジニアにアーキテクチャ設計や課題解決で協力してもらい、効率よく共に開発を進めることができた」(平位氏)
平位氏は、技術にとどまらず包括的な視点からGoogle Cloudとの協力関係を築けたとし、この開発体制が今回の大規模プロジェクト成功のカギだったと話している。
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