AIエージェントによる意思決定インテリジェンスの変革Gartner Insights Pickup(399)

Gartnerは、2027年までにビジネスにおける意思決定の50%が、AIエージェントによって拡張/自動化されるようになると予測している。本稿では、AIエージェントを意思決定インテリジェンスに統合するため、データとアナリティクスのリーダーが検討すべき4つの項目を紹介する。

» 2025年05月23日 05時00分 公開
[Peter Krensky, Gartner]

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 企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)とイノベーションを推進し、自律的なビジネスを目指す中、新しいアナリティクス技術やAI(人工知能)技術の導入が進んでいる。その一つがAIエージェントだ。

 AIエージェントは、特定のビジネスコンテキスト(文脈)に合わせて動的な意思決定フローを実現することで、DI(意思決定インテリジェンス)において重要な役割を果たす。データから洞察を導き出し、洞察を行動につなげるまでのタスクをオーケストレーションし、意思決定の拡張と自動化の可能性を押し広げる。

 Gartnerは、2027年までにビジネスの意思決定の50%が、意思決定インテリジェンスのためにAIエージェントによって拡張または自動化されるようになると予測している。

 AIエージェントは、人間の知識と経験を補完することで意思決定を強化する。多様なソースからのデータの分析や取得する際の複雑さを自動化、管理し、個別の意思決定に合わせてそのプロセスを調整する。本質的に、人間の意思決定者を支援し、人間とAIのシナジーによる最適な意思決定を目指している。

 AIエージェントは意思決定インテリジェンスプラットフォームにおいて、アナリティクスとAIが生み出すインパクトや価値の向上に大きく貢献する。これは、より汎用(はんよう)的なソリューションの場合とは異なり、ビジネスの意思決定にこれらの技術をカスタマイズして適用し、深く統合することで実現される。

 AIエージェントは、ビジネスの意思決定者のためにアナリティクスとAIへのアクセスを民主化し、従来のセルフサービス分析の手法と比べて、作業を容易にする。ユーザーと自然言語でやりとりできるAIエージェントは、アナリティクス/ビジネスインテリジェンス(ABI)プラットフォームの必要性に影響を与えると予想される。

 意思決定インテリジェンスのためのAIエージェントは、他のAIエージェントと連携して動作する。例えば、決定事項の実行を担うAIエージェントは、人間とコミュニケーションを取ったり、業務アプリケーションを呼び出したりすることで、目指す成果の達成を図る。また、意思決定の監視役として機能するAIエージェントは、リスクの軽減、説明の提供、意思決定の評価、学習の促進をする。

 ただし、意思決定インテリジェンスのためのAIエージェントは、万能ではなく、完璧でもない。その活用には、効果的なガバナンスとリスク管理が不可欠だ。人間の意思決定者には、データとAIに関する適切な知識とリテラシーが依然として求められる。意思決定者を支える、信頼性の高い堅牢(けんろう)なデータ基盤(社内外のマルチモーダルなソースを含む)も必要だ。

 AIエージェントを意思決定インテリジェンスに効果的に統合するために、D&A(データとアナリティクス)のリーダーは以下の推奨事項の実施を検討すべきだ。

  • ビジネスステークホルダーと協力し、アナリティクスとAIの適用で、より効果的な恩恵を受ける重要な意思決定を特定し、それらを優先的な適用対象とする。こうした意思決定について、AIエージェントなどの意思決定インテリジェンス施策を実施し、人間の意思決定者の能力の拡張や、意思決定の自動化(可能な場合)を図る
  • 関連するアナリティクス技術とAI技術を統合し、AIエージェントの活用を支援する意思決定インテリジェンスプラットフォームや既製ソリューションに投資する
  • 意思決定のガバナンスを実施し、意思決定の拡張と自動化に伴うリスクを管理する。個々の意思決定のインパクト、リスク、倫理、複雑さ、タイミングなどの要因を考慮し、拡張と自動化の適切なレベルを検討する
  • データドリブンのアプローチから意思決定中心のビジョンに移行し、D&Aチームの意思決定を戦略的に再構築する。意思決定インテリジェンスのためのAIエージェントは自律的に、または他のAIエージェントや、関連する権限を持つ人間の意思決定者と連携し、組織の適応力、レジリエンス(回復力)、パフォーマンスを大幅に向上させる

出典:Transforming Decision Intelligence with AI Agents(Gartner)

※この記事は、2025年3月に執筆されたものです。

筆者 Peter Krensky

Sr Director Analyst


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