多くの企業はプロセスの効率化とコストの削減に向けて、自動化ソリューションの活用を進めている。その一方で、専門人材によるITサービスも求めている。Gartnerは2028年までに、ITサービスにおける人間の関与には最低20%の割増料金が課されるようになると予測している。
この記事は会員限定です。会員登録(無料)すると全てご覧いただけます。
AI(人工知能)や生成AI技術が業務効率やコスト構造を再定義する中、ITサービス分野では大きな変革が進んでいる。企業はデジタルトランスフォーメーション(DX)とビジネス目標の実現に取り組み、プロセスの効率化とコストの削減に向けて、自動化ソリューションの活用を推進している。
だが、多くの企業は依然として“ヒューマンタッチ”が必要な、成果や価値に基づくITサービス契約(複雑なクラウド移行戦略などの)も求めている。こうした契約では、人間が関与する対価が特別に設定されることになるかもしれない。Gartnerは2028年までに、より多くのITサービスが自動化され、それらにAIが組み込まれるにつれて、ITサービスにおける人間の関与には最低20%の割増料金が課されるようになると予測している。
AIと生成AIの進歩は、人間の作業を中心とした従来のサービス業務の代替アプローチを提供することで、ITサービスに変革を起こしている。セルフサービスや自己修復、自動デバッグなどの技術は、人間が関与する必要性を減らし、トランザクション当たりの平均コストを顕著に低下させている。チケットやリクエストの自動解決がより一般的になってきたことも、サービスプロバイダーの業務コスト低下に拍車を掛けている。だが、この変化は、自動化が不十分な分野に人間が関与する重要性も浮き彫りにしている。
スキルの高いデジタル人材の不足が続き、ITサービス市場でコストを圧迫する要因となっている。高度なスキルを持つ人材の供給が限られているため、人間が関与する価値とコストは上昇する。企業は、人間が持つ専門知識やノウハウの恩恵が、追加費用に見合うかどうかを慎重に評価する必要がある。
人間のスキルは、複雑な問題解決、感情的知性を必要とするやりとり、倫理的配慮を伴う意思決定に不可欠だ。さらに、人間が関わることで、リスクエクスポージャ(リスクにさらされている度合い)を最小限に抑え、説明責任を明確化できる。
企業は戦略的に、自動化による効率と、人間による洞察がもたらす必要不可欠なメリットのバランスを取る必要がある。自動化は、日常業務の効率化によって大幅なコスト削減を実現する。だが、人間の関与による割増料金の発生は、人間が行う個別対応のサポートが必要な分野における、その永続的な重要性を浮かび上がらせる。
自動化による効率と、人間の関与によるメリットのバランスを取るためには、慎重なアプローチでITアウトソーシング戦略を実施し、サービスプロバイダーが人間主導のサービスを通じて、具体的な価値と成果を提供することを確認する必要がある。
その結果、労働市場とITサービス市場では、価格の二極化が生じると予想される。低いスキルでこなせるタスクや業務はコストが低下するのに対し、高いスキルを要求する業務はますます料金が上昇するわけだ。
このダイナミクスから、企業は自社のニーズと能力を慎重に評価し、IT戦略を効果的に最適化する必要がある。そうすることで、自動化の力を活用しながら重要な人的要素を維持することができる。
ITサービスにおけるAIと自動化の統合を効果的に進めるために、企業は、これらの技術を活用するパイロットプロジェクトの実施を検討すべきだ。このアプローチにより、有効性を徹底的に評価するとともに、人間の関与が引き続き不可欠な分野を見極めることが可能になる。
人間の専門性が不可欠な場合、期待される成果を明確に定義し、人間の関与に伴う高額なコストを正当化する、ビジネス成果に基づく契約を交渉することが望ましい。
さらに企業は、的を絞ったトレーニングや能力開発プログラムを通じて社内のデジタル人材育成に投資することで、専門業務のアウトソーシングサービスへの依存度を減らし、自社の能力を強化できる。
出典:Human Expertise in IT Services to Command Premium Amid AI Automation(Gartner)
※この記事は、2025年2月に執筆されたものです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.