ミドクラが、NVIDIA B200を搭載したGPUサーバの受注を開始した。受注から約2週間で納入できるという。だが、GPUサーバの販売を事業の柱にするつもりはない。短納期の理由と同社の狙いを、ミドクラ創業者の加藤隆哉氏に聞いた。
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ミドクラジャパン(ミドクラ)が、「NVIDIA HGX B200」(以下、B200 )を搭載したSupermicroのGPUサーバの受注を開始した。構成によるが、受注から約2週間で納入できるという。短納期の理由とこの事業の目的を、ミドクラの共同創業者で代表取締役の加藤隆哉氏に聞いた。
まず、ミドクラとはどんな企業なのか。2010年創業の同社はオープンソースのSDN(Software Defined Networking)で知られる。同社の開発した「Midonet」はOpenStackに採用されるなどしている。その後、この技術を活用したエッジコンピューティングへの取り組みを拡大した。2019年以降はソニーセミコンダクタソリューションズの子会社として、WebAssemblyを活用した分散型エッジAIプラットフォームの開発に注力している。
2025年5月7日に親会社であるソニーが行った発表の概要はこうだ。
ミドクラは、SupermicroのGPUサーバを国内で販売する。B200や「NVIDIA HGX H200/100」を搭載した空冷/液冷サーバに加え、ラックシステムの「GB200 NVL72」も提供する。同社は機器を納入するだけでなく、ハードウェア設定からソフトウェア導入、保守までを一貫して提供する。基本的に、ミドクラの技術者がこうした業務を担当する。さらに、GPUクラスタ環境やAI(人工知能)開発環境の構築・運営支援サービスを提供する。
発表はもう1つある。ミドクラは、ソニーグループのAIモデルをオプションとして提供する。ソニーが手掛けるエッジAIセンシングプラットフォーム「AITRIOS」で活用されている画像・動画解析AIモデルで始めるが、順次増やしていく予定だという。
顧客には、AIデータセンターやGPUクラウドサービスの事業者に加え、先進的なAI活用を進める企業を想定している。
今回の発表で目を引くのは、やはり「B200搭載サーバを約2週間で納入できること」。B200自体の出荷は始まっているが、少しずつデリバリーがされている状況。こうした中で、なぜ約2週間で納入できると約束できるのだろうか。
「大きな理由はHASHCATとの提携にある」と加藤氏は説明する。
HASHCATは世界的に展開するSupermicroサーバの大規模リセラー。NVIDIA GPU搭載サーバを、超大口顧客に次ぐ優先度で調達できる。この企業と特別な提携を結んでいるため、ミドクラはB200をはじめとしたNVIDIA GPU搭載サーバを確実に調達できるという。
高性能GPUに関しては、米国の中国に対する先端半導体輸出規制の問題もある。
日本国内の顧客に納入する場合でも、迂回輸出を防ぐため、米国政府の複数機関に膨大な資料を添えて申請を出さなければならない。これについてもHASHCATの支援を受けて円滑に対応できるとしている。
同じ理由から、ミドクラや他の輸入業者は日本に在庫を持つことができない。GPUサーバは製造元の台湾から、顧客拠点へ直送されることになる。
ミドクラは、GPUサーバ販売業者となることを考えているわけではない。「強みは、当社が持つエッジAIアプリケーション開発・運用関連のノウハウにある」と加藤氏は話す。
「ソニーは、AIの業界で『眠れる獅子』と呼ばれてきたが、現在の言語を中心としたマルチモーダルではなく、映像や音声を同等に扱えるAIモデルの開発を続けている。こうしたモデルを、企業がメジャークラウドから独立した形で使い、蒸留などの技術によって分散データセンター、エッジに展開し、アプリケーションを開発・運用するための手助けをしていきたい」
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