OAuthだけじゃない 現代のAPI開発者が知るべき「5つの基本戦略」(認証方式編)代表例から賢い選び方まで

TechTargetは2025年3月17日、「REST API認証のの基本戦略」に関する記事を公開した。REST API認証に効果の高いアプローチを採用すれば、ユーザーとそのデータを保護しつつ、システム間でのスムーズなデータ交換が可能になる。

» 2025年04月25日 08時00分 公開
[Priyank GuptaTechTarget]

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 TechTargetは2025年3月17日(米国時間)、「REST API認証の基本戦略」に関する記事を公開した。

画像 REST API認証のための5つの基本戦略(TechTarget)

 REST APIは現代のアプリケーションの基盤だ。データ層とプレゼンテーション層を分離させることで、システムの規模や機能を拡張可能にしている。

 しかし、データが異なるシステム間を移動する際には、機密情報を含むREST APIを保護する必要がある。これには、APIの公開範囲を制御する認証メカニズムの導入が不可欠だ。REST API認証は、正当なユーザーまたはシステムを識別してアクセスを許可するだけでなく、不正な操作を防ぐ役割も果たす。

 本稿では、REST APIの基本的な5つの認証方式に加え、技術の進化とリスク環境の変化に伴い採用が増えている2つの手法について紹介する。

REST APIの基本的な認証方式

追加で検討すべきREST API認証方式

 これらの手法は、それぞれに利点を持つ一方で、導入や運用の複雑さが異なるため、企業は自社の要件に応じて慎重に選定する必要がある。

Basic認証

 Basic認証は、ユーザー名とパスワードをBase64形式でエンコードし、HTTPヘッダ内に格納して使用する方式だ。アプリケーション(以下、アプリ)をシンプルかつ軽量に保ちつつ、さまざまなAPIアクセス用の認証情報を設定する実用的な認証方式だ。

 ただし、この方式は多要素認証(MFA:Multi-Factor Authentication)やユーザーごとの動的な認証情報に対するネイティブなサポートを提供しない。そのため、これらの機能を実現するには、ブラウザベースの拡張機能や外部の認可ツールが必要となる。

 Basic認証は、そのシンプルさから、開発ツールチェーンや各種技術、プラットフォームで広くサポートされている。一方で、この認証方式の大きな問題点は、機密性の高い認証情報が暗号化されずにシステム間を移動することがある点だ。

 複数のWebアプリ間、特にサードパーティー製アプリとの間で機密データをやりとりする際には、SSL(Secure Sockets Layer)やTLS(Transport Layer Security)といった暗号化チャネルの利用が不可欠となる。もしそれらのチャネルが“安全ではないチャネル”だった場合、そこを通過するトラフィックは、攻撃者に傍受され、認証情報を盗まれるリスクがあるからだ。

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APIキー

 APIキーによる認証は、Basic認証の一種で、主にREST APIを利用する端末(PCなど)の認証を提供することが目的だ。この手法では、端末が生成した文字列を用いて、識別用の認証情報とAPIアクセス用のトークンを一対で作成する。APIキーは、HTTPヘッダ、ペイロード、クエリ文字列の一部として送信できるため、コンシューマー向けのWebアプリに適している。

 APIキーの利点は、APIへのアクセスと、認証に必要な情報や検証トークンを分離できる点にある。例えば、ユーザーの権限が変更された場合や、情報が漏えいした可能性がある場合には、認証情報やトークンを取り消したり再発行したりすることが容易にできる。

 ただ、残念ながらAPIキーもBasic認証と同様のリスクを抱えている。つまり、関連する認証情報がハッカーに傍受され、悪用される恐れがある。APIキーは、フロントエンドのユーザー操作に対して、認証情報を即時に適用、取り消す仕組みを提供できる一方で、設計がシンプルであるが故に、階層的な認証やMFAには対応しにくいという制約がある。

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HMACによる暗号化

 HMAC(Hash-based Message Authentication Code)は、REST APIのデータペイロードの整合性を重視する場面で有効な方式だ。HMACは、REST APIのペイロードに対して対称暗号化(単一鍵暗号化)を用いてハッシュ処理し、一意のコードを生成して関連するメッセージに付加する。このコードは、メッセージの送信側と受信側が共有する秘密鍵を使って検証され、データの改ざんがないかどうかを確認する。つまり、ペイロードの整合性を双方向で検証可能にする仕組みだ。

 HMACは、運用管理やツール導入における負荷が比較的少ないため、クライアントとサーバのアプリを直接制御できる状況では、REST API認証方式として効果的だ。一方で、モバイルアプリやWebアプリのように、開発者の直接的な制御が及ばない環境では、暗号鍵の安全な保管が難しくなるという課題がある。

 例えば、URLベースで暗号鍵を扱うモバイルアプリでは、特にその鍵に有効期限が設定されていない場合、攻撃の対象として非常に脆弱(ぜいじゃく)となる。悪意のある第三者が一度その暗号鍵を取得すれば、盗んだコードをURL内に埋め込むだけで、アプリに不正なデータペイロードを受け入れさせることができる。

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OAuth 2.0

 「OAuth」、特に「OAuth 2.0」は、REST API認証における「ゴールドスタンダード」(最も信頼できる標準)とされており、高機能なWebアプリやモバイルアプリを含むエンタープライズ環境において広く利用されている。OAuth 2.0は、動的に変化するユーザーグループや権限レベル、スコープ(アクセス範囲)、データ種別に対応できる柔軟性を備えている。そのため、機密情報を含む多数のREST APIを安全に運用したいと考える組織にとって、最適なアプローチとなり得る。

 OAuth 2.0では、安全なアクセストークンが生成される。このアクセストークンは「グラントタイプ」(grant types)という一連の認証プロトコルを通じて定期的に更新される。このグラントタイプは、認証の仲介的役割を果たし、基礎的な認証情報(認証資格情報やトークンなど)を公開せずにAPIアクセスの流れを制御できる。

 OAuth 2.0における主なグラントタイプは以下の5つ。

  • 認可コード(Authorization Code)
  • PKCE(Proof Key for Code Exchange)
  • クライアントクレデンシャル(Client Credentials)
  • デバイスコード(Device Code)
  • リフレッシュトークン(Refresh Token)

 OAuthは、ペイロードの整合性検証に「JSON Web Token」(JWT)を用いることができる。JWTトークンは、暗号化されたユーザー固有のデータを安全に格納し、必要に応じてアプリ間でそのデータをやりとりする。認証サービスがこのトークンに署名することで、ユーザーの認証完了後に新たなユーザーロールや権限をトークンに埋め込むことできる。トークンは、通常、時間ベースの有効期限メカニズムによって失効(無効化)される。

 さらに、アプリ間で共通の対称鍵(シンメトリックキー)を共有することで、各サービスが個別に検証チェックをする代わりに、トークンの整合性を同時に確認できるようになる。これによって、検証処理における単一障害点(SPOF)のリスクを低減できる。だが、動的かつスケーラブルなアプリケーション環境でこのような対称鍵を安全に配布、管理することは、セキュリティ上の大きな課題でもある。

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OpenID Connect

 OpenID Connectは、OAuth 2.0の上に構築されたオープン標準の認証プロトコルであり、クライアントアプリがユーザーのIDを検証するためのシンプルな手段を提供する。OpenID ConnectではこのクライアントアプリをRP(Relying Party)と呼ぶ。OpenID Connectを利用することで、第三者アプリケーションごとに認証情報を個別に管理する必要がなくなり、容易に情報共有できる。

 OpenID Connectによって保護されたREST APIは、RPによるユーザー認証が完了すると使用可能になる。その後、RPに関連付けられたAPIは、OAuthのグラントタイプのバリエーションを利用して認証処理を実行できる。

 OpenID Connectがサポートする主なグラントタイプは以下の3つだ。

  • 認可コード(Authorization Code)
  • インプリシット(Implicit)
  • ハイブリッド(Hybrid)

 OpenID Connectは常にAPIプロバイダーの管理下にあるが、これらのグラントタイプは複数のRPが個別に利用できる。そのため、ユーザーデータを複数のサードパーティー製Webアプリ間で安全に共有したいREST APIプロバイダーにとって、特に有用な認証方式だ。特に動的なエンタープライズレベルの資格情報管理ツールの複雑さに苦労しているプロバイダーにとって、このアプローチは理想的といえるだろう。

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追加で検討すべきREST API認証方式

 オンラインフィッシング、なりすまし(ID盗用)、その他のサイバーセキュリティ脅威が高度化する中で、REST API向けの認証方式も進化を続けており、ネイティブデバイスのサポートとともに徐々に採用が広がっている。

トークン(ワンタイムパスワードまたはマジックリンク)

 ワンタイムパスワード(OTP)とマジックリンクは、SMS(ショートメッセージサービス)やメール、アプリ通知などを通じて一時的な認証情報を送信することで、REST APIに対するパスワードレス認証を実現する方式だ。ただし、両者には機能上の違いがある。

OTP

 クライアントとサービスプロバイダーの間で共有される秘密鍵を前提とし、時間ベースOTP(TOTP)やHMACベースOTP(HOTP)といったアルゴリズムによって一時的なパスワードを生成し、サービス間の認証を可能にする。OTPは、ユーザーの操作負担を最小限に抑えつつ、高セキュリティを求める用途に適している。

マジックリンク

 マジックリンクは、有効期限付きのコードを含むURLのこと。ユーザーがこのリンクをクリックした際にサーバが認証する仕組みだ。主に、スムーズなログイン体験が求められるコンシューマー向けアプリで高い効果を発揮する。

 このようなトークンベースの認証方式は、ユーザーにパスワードの記憶や入力を要求しない点が大きな利点だ。ただし、ログインの際にアプリを切り替える必要があるため、若干の操作が必要になる。また、認証情報の送信手段に障害が発生した場合、ログイン自体が困難になる恐れがある。

 静的なパスワードと比較するとトークンのセキュリティリスクは相対的に低いものの、トークンが傍受されるリスクは依然として存在する。そのため、トークン方式の安全性は、最終的にはそれを提供するサービスプロバイダーのセキュリティ対策の強度に依存する。

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パスキー

 パスキーは、ネットワーク経由での機密データやパスワードの転送を必要としない認証方式となっており、フィッシング対策に効果がある。「FIDO2」フレームワークの一部である「WebAuthn」標準に基づいており、高いセキュリティが期待できる。この認証方式では、ユーザーのデバイスが公開鍵暗号方式の鍵ペアを生成する。生成された秘密鍵はユーザーのデバイスに安全に保存され、公開鍵はサービスプロバイダー側に保存される。

 パスキーは、2段階の認証プロセスで構成されている。ログイン時、ユーザーは生体認証やPINコード認証などによって、ローカル認証をする。ローカル認証に成功すると、デバイスはサービスプロバイダーから送信された「暗号チャレンジ」に対して、秘密鍵を使って署名する。サービスプロバイダーは公開鍵で署名を検証し、正当なアクセスであることを確認した上でそれを許可する。REST API認証においては、このチャレンジと署名のやりとりを通じてアクセストークンが生成され、それによって有効期間中の各種リクエストの認証および認可が行われる。トークンの有効期限が切れると、再度この認証プロセスが繰り返される。

 認証オプションが進化しているとしても、全てのプラットフォームがパスキーをサポートしているわけではない。とはいえ、金融業界をはじめとする多くの職種でパスキーが実現するセキュリティに頼っている。

 パスキーは比較的新しい認証方式であり、2025年3月現時点では全てのプラットフォームが対応しているわけではない。しかし、金融業界をはじめとする多くの業種で、その高いセキュリティ性能が評価されている。特に「高いセキュリティ」と「スムーズな認証体験」の両立を求めるシナリオにおいて、非常に有効な選択肢となっている。一方で、パスキーはデバイスに依存するため、端末の紛失がそのまま秘密鍵の喪失につながる。そのため、ユーザーがアクセスを復旧できるよう、慎重に設計されたリカバリー手段を併せて用意する必要がある。

REST API認証方式の選択

 REST APIには多様な認証方式が存在するため、導入に当たっては各方式の長所と短所を慎重に検討し、対象アプリの要件に照らし合わせ、最適な手法を選定する必要がある。例えば、HTTPベースのBasic認証はリスクの低いデータやリソースへの一般公開アクセスを制限する場面で有効だが、何らかのセキュリティ制御を追加することが望ましい。APIキーは、APIプロバイダーが個々の利用者を識別し、必要に応じてそのアクセス権限を管理したい場合に適している。

 方式を選定する際には、扱うデータの機密性が極めて重要な要素になる。HMACは比較的閉じた環境での運用において、データペイロードの整合性をある程度保証できるが、アクセストークンのローテーションや権限レベルの動的な変更が必要な複雑なユースケースであればOAuthが適している。

 このどちらでもない中間のユースケースではOpenID Connectが有効だ。OAuthの動的なアクセス管理とHMACのシンプルさがうまく両立されるだろう。なお、既存の認証方式に対してトークンやパスキーを併用することで、より信頼性と安全性の高いユーザー認証を実現することも可能だ。

 いずれの方式を採用するにしても、REST APIをSSLやTLSといった暗号化チャネルに限定することは常に推奨される。また、機密性の高い認証情報をAPIのデータペイロードやURL、クエリ文字列の一部として送信することは避けるべきだ。こうした情報は、アプリケーションがログ機能などを通じて意図せず保存してしまう可能性があるためだ。手作業によるアプローチでは、見落としやミスが繰り返される可能性があるため、厳密な機密管理システムを使用し、暗号鍵ローテーションなどの手順を自動化することも重要だ。

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