「Microsoft SQL Server」が稼働するデータベースシステムを運用する管理者に向け、「動的管理ビュー」の活用を軸にしたトラブル対策のためのノウハウを紹介していきます。今回は、アクティブなインメモリOLTPトランザクションの一覧を出力する方法について解説します。
この記事は会員限定です。会員登録(無料)すると全てご覧いただけます。
本連載では、「Microsoft SQL Server(以下、SQL Server)」で使用可能な動的管理ビューについて、動作概要や出力内容などを紹介していきます。今回は動的管理ビュー「sys.dm_db_xtp_transactions」における、アクティブなインメモリOLTPトランザクションの一覧を出力する方法について解説します。対応バージョンは、SQL Server(サポートされている全てのバージョン)、「Azure SQL Database」「Azure SQL Managed Instance」です。
SQL ServerではインメモリOLTPを使用することで、トランザクション処理やデータ取得、データロード、一時データ・シナリオのパフォーマンスを最適化できます。インメモリOLTPにおけるデータアクセスやトランザクションの実行は、従来のディスクベースのオブジェクトとは異なるアルゴリズムで処理されます。
「sys.dm_db_xtp_transactions」動的管理ビューを出力することで、現在アクティブなインメモリOLTPトランザクションの一覧を確認できます。
| 列名 | データ型 | 説明 |
|---|---|---|
| xtp_transaction_id | bigint | このトランザクションのXTPトランザクションマネジャーでの内部ID |
| transaction_id | bigint | 他のトランザクション関連のDMV(「sys.dm_tran_active_transactions」など)と結合できるトランザクションID。XTPのみのトランザクションの場合は「0」 |
| session_id | smallint | このトランザクションを実行しているセッションID |
| begin_tsn | bigint | トランザクションの開始TSN(トランザクションのシリアル番号) |
| end_tsn | bigint | トランザクションの終了TSN(トランザクションのシリアル番号) |
| state | int | トランザクションの状態 「0」=ACTIVE 「1」=COMMITTED 「2」=ABORTED 「3」=VALIDATING |
| state_desc | nvarchar(16) | 「state」の説明 |
| result | int | このトランザクションの結果 「0」=IN PROGRESS 「1」=SUCCESS 「2」=ERROR 「3」=COMMIT DEPENDENCY 「4」=VALIDATION FAILED(RR) 「5」=VALIDATION FAILED(SR) 「6」=ROLLBACK |
| result_desc | nvarchar(24) | 「result」の説明 |
| last_error | int | 内部使用のみ |
| is_speculative | bit | 内部使用のみ |
| is_prepared | bit | 内部使用のみ |
| is_delayed_durability | bit | 内部使用のみ |
| memory_address | varbinary(8) | 内部使用のみ |
| database_address | varbinary(8) | 内部使用のみ |
| thread_id | int | 内部使用のみ |
| read_set_row_count | int | 内部使用のみ |
| write_set_row_count | int | 内部使用のみ |
| scan_set_count | int | 内部使用のみ |
| savepoint_garbage_count | int | 内部使用のみ |
| log_bytes_required | bigint | 内部使用のみ |
| count_of_allocations | int | 内部使用のみ |
| allocated_bytes | int | 内部使用のみ |
| reserved_bytes | int | 内部使用のみ |
| commit_dependency_count | int | 内部使用のみ |
| commit_dependency_total_attempt_count | int | 内部使用のみ |
| scan_area | int | 内部使用のみ |
| scan_area_desc | nvarchar(16) | 内部使用のみ |
| scan_location | int | 内部使用のみ |
| dependent_1_address | varbinary(8) | 内部使用のみ |
| dependent_2_address | varbinary(8) | 内部使用のみ |
| dependent_3_address | varbinary(8) | 内部使用のみ |
| dependent_4_address | varbinary(8) | 内部使用のみ |
| dependent_5_address | varbinary(8) | 内部使用のみ |
| dependent_6_address | varbinary(8) | 内部使用のみ |
| dependent_7_address | varbinary(8) | 内部使用のみ |
| dependent_8_address | varbinary(8) | 内部使用のみ |
事前にデータベースでインメモリOLTPを構成し、メモリ最適化テーブルを作成しておきます。
トランザクションを開始してメモリ最適化テーブルにデータを挿入し、トランザクションをコミットやロールバックしない状態で、別のセッションから「sys.dm_db_xtp_transactions」動的管理ビューを出力しました。開始したトランザクションの情報が表示されました(図1)。
このトランザクションをコミットした直後に、もう一度「sys.dm_db_xtp_transactions」動的管理ビューを出力したところ、結果は出力されませんでした。コミットされたトランザクションは結果が表示されなくなるようです(図2)。
次に、先ほどと同様にトランザクションを開始し、メモリ最適化テーブルにデータを挿入して、今度はロールバックを行った後に「sys.dm_db_xtp_transactions」動的管理ビューを出力しました。「result_desc」列の値が「ROLLBACK」となっている結果が表示されました。ロールバックしたトランザクションは表示されるようです(図3)。
この後、トランザクションを開始し、データを挿入してロールバックを繰り返し行ったところ、しばらくは結果の行数が増えていきましたが、時間がたつと結果が減少しました。結果は、しばらく保持されたあと削除されるようです。
※本Tipsは、「Windows Server 2019」上に「SQL Server 2019」をインストールした環境を想定して解説しています。
BIPROGY株式会社(ビプロジー)所属。Microsoft MVP for Data Platform(2017〜)。入社以来 SQL Serverの評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。SQL Serverのトラブル対応で社長賞の表彰を受けた経験も持つ。休日は学生時代の仲間と市民駅伝に参加し、銭湯で汗を流してから飲み会へと流れる。
BIPROGY株式会社(ビプロジー)所属。入社以来SQL Server一筋で評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。社内のプログラミングコンテストで4回の優勝経験も持つ。趣味は輪行で週末は自転車を持っての旅行。目標は色々な日本百選を制覇すること。
SQL Serverの動的管理ビューとは?
「DMV(Dynamic Management View)」でパフォーマンス遅延の「原因」を調べる
SQL Serverの動きを制御する「トレースフラグ」とは何かCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.