「エンジニアがKubernetesを使い始めると、自然に監視のニーズが生まれ、例えばPrometheusを利用し始める。他にもさまざまなツールについて知る機会が増え、必要に応じて触ってみるようになる。例えばOpen Policy Agentについて耳にして試してみると、『これは便利だ、Kubernetes以外のものにも適用できる』と気づく。こうして、エコシステムの広がりにより、ユーザー組織のクラウドネイティブへの取り組みを助けることができるようになってきた」(アニズィック氏、以下同)
CNCFは、2019年11月末時点で、Kubernetesを含めて43のプロジェクトをホストするに至った。2018年12月時点では32プロジェクトだったので、2019年に入って11のプロジェクトが増えたことになる。
「一方で、コンテナランタイムのRocket(rkt)は、2019年初めにCNCFプロジェクトではなくなった。こうして多数のプロジェクトが加入すると共に、脱退するプロジェクトも見られるようになった。2019年、CNCFが健全なエコシステムを構築できたことを誇りに思っている」
プロジェクトの増加ペースについては、2020年以降もおそらく2019年と同様だろうとアニズィック氏は語った。CNCFにおいて新規プロジェクトの受け入れを審査するTechnical Oversight Committee(TOC:技術監督委員会)はこの2、3年、同組織でホストする新規プロジェクトについて、より厳しい審査をするようになっているが、クラウドネイティブに関してカバーしなければならない分野が広いため、プロジェクトの増加ペースが大幅に鈍ることは考えにくいと、アニズィック氏は話した。
では、今後はどのような分野でプロジェクトを増やしていこうとしているのか。
「まず、TOCは、セキュリティ関連で新たなプロジェクトを開拓していきたいという意向を積極的に示している。例えば、『Vault』という鍵管理のプロジェクトがあるが、こうした分野はCNCFにとって非常に適していると私は思っている」
「また、分散ストレージでは、ますます多くの選択肢が必要だ。私は最近Appleの開催したイベントに参加したが、そこではCassandraをKubernetesと組み合わせる話をしていた。Appleは世界最大のCassandraユーザーだ。クラウドネイティブなストレージを必要とするKubernetesユーザーを助けられるプロジェクトが今、求められている」
「2020年には、サーバレス分野で目立った活動をするかもしれない。Serverless Working Groupは(イベント定義の標準である)『CloudEvents』のバージョン1.0を出したところだが、次にはサーバレスの世界における新たな課題に取り組もうとしている。他の分野としては、ワークフローエンジンもある。TOCではArgoという、Intuitの始めたプロジェクトを受け入れようとしている」
「それから、カオスエンジニアリング(Chaos Engineering)もある。今回の基調講演では、Targetが商用ツールを使った例を紹介していたが、基本的な機能しか備えていなくとも、OSSで、Chaos Engineeringが始められるような選択肢が出てくることが望ましい」
基調講演では、Linux Foundation傘下のネットワーク関連プロジェクトとの連携で、5G通信を実現するデモも実施された。アニズィック氏は、さまざまな業界が求めるソリューションの構築を支援するため、CNCF以外の組織との連携をさらに深めていくつもりだと話した。
今や、あらゆるWebテクノロジー企業が「クラウドネイティブ」を目指している。一般企業においても、デジタル化への取り組みに伴い、この言葉が最重要キーワードとして浮上している。クラウドネイティブは、これからの攻めのITにおける前提になったといって過言ではない。そこで次に語られるべきは、「具体的に何をやっていくのがいいか」ということだ。パブリッククラウドを使えば自動的にクラウドネイティブになるわけではない。本特集では、クラウドネイティブに一家言を持つ青山真也氏と草間一人氏の対談や、事例を通じ、クラウドネイティブの具体的な姿を明らかにしていく。
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