ここからは自社でできるCSIRT構築ステップを紹介する。ここで紹介するステップを踏めばCSIRTを構築できるといっていいだろう。
CSIRTを構築するには、ワークショップ形式で進めることを推奨する。ワークショップ形式により、経営や現場をよく知る必要な人が集まるため、短時間の中で意見を集約することができる。
主にCSIRTに関わる人々や利用できるリソースを整理する。CSIRT構築のために、改めて自社にどのようなリソースがあるのか考えよう。
CSIRTが対応するインシデントの洗い出しと、「検知したインシデントの内容をどのように情報共有していくか」を定義する作業である。
CSIRTに関係する文書整理や、「会社に対してCSIRTがどのような対応を行うか」を明示するための工程である。
このように3つのワークショップの中で、CSIRT構築を進めるためのエッセンスを述べた。しかし、全てに取り組もうと考える必要はない。【鉄則 その2】で述べたように、すでに決まっている事項があるなら、それらを大いに活用してほしい。
最後に、事務局がワークショップを仕切る際の心得も記しておくので参考にしてほしい。
上記の内容は、ワークショップ本番になると、意識して対応することがなかなか難しい場合がある。そのため、ワークショップを迎える前に事前説明会も開催したい。「なぜ、このような取り組みを行うのか」を事前に説明することで、CSIRT構築に対する共通認識を持ってもらうことができる。また、事前説明会を行うことで各部署の担当者の意見や、そこから見えてきた課題をくみ取ることができるからだ。
今回は、CSIRTの構築方法について説明してきたが、いかがだっただろうか。次は、構築したCSIRTを強くしていく段階だ。その手法の一つとして「サイバー演習」がある。サイバー演習にもさまざまな種類があるが、一様にいえるのは「人のスキル面を磨くことができる」効果があるということだ。
確かに、堅牢なセキュリティ機器などを導入することで、セキュリティインシデントは軽減するが、そうすると、人は安心してしまう。この「安心」というものが時としてインシデント対応を阻害してしまう要因になっている。有事の際に意思決定するのは、最後は人である。
この「意思決定力」を磨くことができるのがサイバー演習である。次回の記事では、このサイバー演習を自組織で実施する際の肝要を紹介したい。
標的型攻撃の包括的なソリューションを最適なコストで日本市場に提供することを目的として2016年10月に複数企業をメンバーとして発足したコンソーシアム。
参加企業は、ニュートン・コンサルティング、サイバーソリューションズ、インフォメーション・ディベロプメント、ウェブルート、ベル・データ、フェス、ゾーホージャパン。
石井 佑樹(いしい ゆうき)
ニュートン・コンサルティング株式会社 コンサルタント
ベースラインAPT対策コンソーシアム(BAPT)のセキュリティコンサルティング支援メンバー。
リスク診断、CSIRT構築支援、サイバー演習支援、標的型メール演習などを提供。
前職では大手自動車販売会社向け基幹系システムのIT業務に従事。サポートしていた基幹系システムに大規模なサイバー攻撃があり、サイバーセキュリティ分野の必要性を強く認識し、現職に携わる。以降、サイバーセキュリティに関する講演の他、制御系や官公庁におけるサイバー演習シナリオの設計、運営に力を発揮。
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