テクノロジー人材の育成や中途採用に取り組むべき、ガートナーが2019年の展望を発表人材不足の企業に未来なし

ガートナー ジャパンは「テクノロジー人材」について、今後3〜5年間に日本で注目すべき5つの展望を発表した。人材について情報処理能力の改善に取り組まない企業内IT部門は縮小せざるを得ないとしており、ITベンダーでの経験が豊富な人材の獲得を推奨している。

» 2019年04月03日 11時00分 公開
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 ガートナー ジャパンは2019年4月2日、「テクノロジー人材」について、今後3〜5年間に日本で注目すべき5つの展望を発表した。テクノロジー人材の企業内での重要性がこれまで以上に増し、テクノロジーを駆使する人材を抱えた企業とそうではない企業で競争力が大きく変わってくるとしている。

 ガートナーが発表した5つの展望は次の通り。

(1)2022年までに、60%以上の日本のユーザー企業に在籍するIT担当者は、無償のオープンソースソフトウェア(OSS)やオンライン講座、有益な書籍を利用することで、AIに関して『自分で運転』する基礎的なスキルを獲得する

 AI(人工知能)に関する書籍やオンライン講座が国内でも登場し、AIの学習に着手できる環境が整いつつある。だが、ガートナーによると、AIに関して「自分で運転」することの必要性を理解したとしても、多くの企業はどこからスタートすべきか分かっていないという。

 ガートナーはこれまで、「どこからAIを勉強すればよいか」との問い合わせに対してAIを試行する機会を紹介すると、前向きな反応が得られたとしている。同社はこうした状況が今後も続くと見ており、2022年には、テクノロジー人材のほとんどが少なくともAIの基礎知識を自ら習得するようになると予測する。

(2)2023年までに、人材の情報処理能力の改善に取り組まないIT部門の80%は、縮小戦略を取らざるを得なくなる

 ガートナーは、AIやIoT(Internet of Things)、RPA(Robotic Process Automation)、ブロックチェーンといった新技術がもたらす大量の情報を、効率的に取得し、正しい判断を下して行動につなげる能力が、今後重要になるとしている。同社は、IT部門がこうした「人材の情報処理能力」に注目せず、これまで通りの行動を続けると、顧客満足度を高めるという社会のトレンドに後れを取る恐れがあると指摘する。さらに、顧客だけでなく社内の他部門からの信頼も失い、ひいてはデジタル化の対応に関わるのが難しくなり、コスト削減や人員削減といった縮小戦略を取らざるを得なくなると予測する。

(3)2024年までに、人月単価をベースとしたプロジェクトを実施する企業の90%は、OSSプロフェッショナル人材の獲得に苦慮する

 ガートナーの調査によると、OSSに対する自社の取り組み方を変えた企業の39%が「自社内での人材育成と、人材への投資を強めた」と回答した。また、「OSSのスキルを有する人材を雇用した」と回答した企業の割合は、2017年の20.9%から27.2%に上昇した。同社は、OSSプロフェッショナル人材が獲得競争に直面すると見ている。

 OSSプロフェッショナル人材の必要性は、クラウドやAIなどの新興IT領域を各種OSSがリードしている事実からも明らかだとガートナーは指摘している。その上で、そうした新しいIT領域や、「モード2」型のアプローチを適用するデジタルビジネスではOSSスキルと人材が礎になっていることを認識し、今後の人材不足問題や人材獲得競争に備えるべきだと主張する。

 なお、モード1とは「業務の維持とコスト削減」を重視し、しっかりと作って安定的に運用していくトラディショナルな領域のIT。モード2とは「ビジネスの成長と革新」を重視し、新しいテクノロジー、開発スタイルを機敏に取り入れながら、新たな価値を生み出していくイノベーティブな領域のITを指す。

(4)2022年までに、デジタルやモード2の推進に関して有効な対策を取れないシステムインテグレーターの80%において、20〜30代の優秀な若手エンジニアの離職が深刻な問題となる

 ガートナーは、日本のベンダーやシステムインテグレーター(SI)が、モード1とモード2の両方で大きな課題を抱えていると見ている。モード1の課題は、クラウドによる将来のSIビジネスの破壊。モード2の課題は、ユーザー企業が「自分で運転」するようになることで収益増が期待できなくなることや、アジャイルを前提とするため現場が回らなくなったり、どのような契約を結ぶべきかが非常に難しくなったりすることだとしている。

 クラウドが本格的に浸透し始めたことや、ユーザー企業が「自分で運転」し始めていることから、既存のSIビジネスは10年以内に破壊される可能性が高いとガートナーは予測する。これらの課題を解決する取り組みが見られない企業では、優秀な人材ほど早く自社に見切りを付けて離職するとしている。

(5)2021年までに、国内のITベンダーから技術者を中途採用するユーザー企業は80%を超える

 ユーザー企業のIT部門の役割は、従来の社内従業員に向けたITサービスの提供から、自社の顧客やパートナーを巻き込んだエコシステムを構築しサービスを提供することへと変化している。また、モバイルやクラウド、IoT、AI、RPAなど、新たな技術も次々と取り入れ始めている。このような技術の進化と適用領域の拡大に伴い、ガートナーでは、IT部門にかかる期待とIT部門が直面するチャレンジが大きくなっているという。

 ユーザー企業は、自社がITを駆使して提供するサービスの方針や設計、構築、日常的な機能追加や最適化、非常時の対策などについて、主体的に動く体制を確立する必要がある。社内IT部門の人材を育成するだけではこれらを実現できない企業が多いと、ガートナーは見ている。そのため同社は、これまではベンダーに外注していた作業の一部を自社で賄えるよう、ベンダーでの経験が豊富な人材を獲得することを推奨している。

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