LANとWANの違いは? ネットワークの種類や構成要素を分かりやすく解説
コンピュータ同士が通信を行うネットワークは、そのカバー範囲によって、大きくLANとWANの2つに分類されます。それぞれの概要や、ネットワークを構成する要素を解説します。
※本稿は、SBクリエイティブ発行の書籍『ネットワークがよくわかる教科書 第2版(2025年3月31日発行)』の中から、アイティメディアが出版社の許可を得て一部編集の上、転載したものです。
通信とは
そもそも「通信」とはどのような行為でしょうか。基となる英語「telecommunication」は、「tele(遠くの意)」と「communication(伝達の意)」から構成されており、この言葉が「遠くへの伝達」を意味することが分かります。
もう少し現実的な言い方をすれば、通信とは「離れた場所へリアルタイムに情報を伝達すること」です。
コンピュータ同士の通信
コンピュータで行う通信は、図に示す3つのステップで行われます。
この動作は一瞬で終わり、送出した情報は、すぐに相手のコンピュータに届きます。このときネットワークでは、送り出す情報の0と1を電気信号や光や電波に変換し、それを銅線や光ファイバーや自由空間などで伝送し、また、それを受信して再び0と1の情報に戻す、という動作をしています。従って原理的には、銅線に電流が流れる速度、光ファイバーを光が伝わる速度、電波が自由空間を伝わる速度で、それぞれ相手に届くことになります。
このような仕組みで情報を伝えることができる距離は、利用する規格によって異なりますが、いずれにせよ何百kmもの遠距離には延ばせません。なぜなら、ネットワーク媒体を伝わる信号は、距離が遠くなるほど弱まったり変形したりするからです。そのため、遠く離れたコンピュータ同士の通信では、途中に何らかの中継の仕組みを置いたり、あるいは、他の手段を併用したりします。
ネットワークの規模による分類
コンピュータ同士が通信を行うネットワークは、そのカバー範囲によって、大きくLANとWANの2つに分類されます。*1。
LAN(Local Area Network)は、拠点内の通信に用いるネットワークです。LANは個人や組織が自ら設置することが多く、ほぼ100%のケースで、その通信規格にはイーサネットが使われます。
WAN(Wide Area Network)は、拠点と拠点を結ぶ通信に用いるネットワークです。WANは通信事業者が提供する通信サービスを利用するのが一般的で、利用者が設置することはほとんどありません。
通常、組織の拠点内の通信にはLANを利用し、拠点と外部を接続するためにWANを用います。WANに利用する回線としては、通信事業者が提供する広域イーサネットサービスや閉域網接続サービス、また、インターネットVPNなどがあります。
(*1)LANとWANの中間的なネットワークとしてMAN(Metropolitan Area Network)という名称が用いられることがあります。本来は都市エリアをカバーする規模のネットワークのことですが、広大な大学キャンパスなどをカバーするネットワークをMANに含めることもあります。
ネットワークを構成する要素
ネットワークを構成する要素には多種多様なものがあります。ここでは多くのネットワークで用いられている代表的な構成要素の概要と外観を示します。
ホスト
ネットワークにつながっていて、ほかの機器と通信を行うことのできる、コンピュータ、スマホ、各種機器などを指します。*2
伝送媒体
ネットワークにおいて実際に情報を伝送する媒体を指します。有線LANであれば、銅線、光ファイバー、あるいはそれらで作られたLANケーブルがこれに当たります。また無線LANであれば電波がこれに当たります。
(*2)プリンタなどの機器をホストに含む場合と含まない場合がありますが、本書ではこれらもホストに含まれるものとします。
L2スイッチ
1つのネットワークを構成するために使用する有線LAN用の接続ボックスです。ネットワークに参加するコンピュータは、自身のLANポートとL2スイッチのLANポートをLANケーブルで接続します。またL2スイッチ同士をつなぐことで、ネットワークの規模を拡大することもできます。
ルーター
L2スイッチで構成したネットワーク同士を接続する機器です。インターネットワーキングを行うときに、ネットワークとネットワークの間に設置され、ネットワーク間の情報中継など中核的な役割を果たします。
L3スイッチ
L2スイッチとルーターを1つにしたような機能を持ち、コンピュータから延びてくるLANケーブルの接続、VLAN(1つのスイッチの中に仮想的な複数の独立ネットワークを作り出す機能)の設定、VLANで作り出したネットワーク間での情報の中継などを行います。近年では規模が大きな組織を中心にL3スイッチがよく用いられます。
Wi-Fiルーター
無線アクセスポイント(無線LANを持つホストからの接続を受け付ける機能)、ルーター、スイッチなどの機能をコンパクトにまとめた機器です。主に家庭や小規模な組織で使われます。規模が大きな組織では、無線アクセスポイント、ルーター、スイッチを個別の機器として用意するのが一般的です。
左からWi-Fiルーター「Aterm WX11000T12」(提供:NECプラットフォームズ株式会社)、無線アクセスポイント「Cisco Wireless 9176」(提供:Cisco Systems, Inc.)
書籍紹介
ネットワークがよくわかる教科書 第2版
福永勇二 著
SBクリエイティブ 2,420円
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これからしっかりネットワークを学ぼうとする方々が、本書を活用して基礎的な知識を幅広く身につけていただけたなら、これほどうれしいことはありません。
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