AWSが提案する“AIエージェント開発”時代のIDE「Kiro」、どんな機能があるのか:ポイントは「スペック」と「フック」
AWSは統合開発環境「Kiro」を発表した。「スペック」や「フック」などの機能によって、プロトタイプ開発から本番運用までを一貫してサポートするという。
Amazon Web Services(AWS)は2025年7月15日、IDE(統合開発環境)の「Kiro」を発表した。同社は「Kiroは、AI(人工知能)コードエディタに必要な機能を備えており、AIエージェントとの作業を簡素化して開発を支援する」としている。
ポイントは「スペック」と「フック」
Kiroは、「Visual Studio Code」(VS Code)をベースに開発された。主な機能としては、要件や設計を「スペック」(Specs)として管理し、定型業務を自動化する「フック」(Hooks)、AIが従うべき開発ルールをまとめた「ステアリングルール」がある。
さらに、プログラムファイルや外部のURL、各種ドキュメントをAIに把握させて最適な提案をさせるための「コンテキストプロバイダー」や、チャット形式でAIエージェントと相談しながら作業を依頼できる「エージェントチャット」などの機能もある。「MCP」(Model Context Protocol)にも対応しているため、他の外部AIツールやサービスとも柔軟に連携できる。
Kiroを利用したソフトウェア開発
Kiroを利用したソフトウェア開発は「要件定義」「設計」「タスク化、実装」「一貫性管理」という流れになる。
要件定義
まず開発者は、要件をプロンプトとしてKiroに入力する。例えば「製品のレビューシステムを追加」といったプロンプトだ。するとAIが、自動的に「レビューを表示する」「レビューを作成する」「レビューをフィルタリングする」「レビューに評価を付ける」といった、具体的なユーザーストーリー(実装すべき機能のリスト)を生成する。各ユーザーストーリーは、EARS(Easy Approach to Requirements Syntax)記法の受け入れ基準、つまり「どのような状態になれば要件が満たされたと判断できるか」という情報も含んでいる。
設計
次のステップでは、Kiroはコードベースやユーザーストーリーなどの要件を基に、システムの設計に関するドキュメント(データフロー図、「TypeScript」インタフェース、データベーススキーマ、APIエンドポイントなど)を自動生成する。
タスク化、実行
設計書が作成された後、Kiroは各要件のタスクとサブタスクを生成し、依存関係を分析して優先順位を整理する。作成された各タスクには、単体テストや統合テスト、ローディング状態、モバイル対応、アクセシビリティー要件などの実装詳細が含まれている。
作業はKiroのタスクインタフェース上で管理され、進行状況を示すインジケーターによって、どの作業が進行中か、何が完了したかを確認できる。タスクは1件ずつAIエージェントで実行でき、完了後にはコードの変更内容や実行履歴をインラインでも確認可能だ。
一貫性管理
最後にKiroは“フック”という自動処理を設定する。これを設定すると例えば、「React」コンポーネントを保存したタイミングで関連するテストファイルを自動更新する、APIエンドポイントを変更した際にREADMEファイルを自動で修正する、コミットの前に認証情報や機密情報が含まれていないかどうかをスキャンするといったことが可能になる。
AWSは「フック機能によって開発チーム全体でコードの品質やドキュメントの整合性、セキュリティ基準を統一した状態で保てる」と述べている。
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