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「カオス」を楽しむ! GovTech東京の女性エンジニアたちが描く、住民体験とDXの未来民間視点で行政DXに挑む(2/3 ページ)

GovTech東京で、立ち上げ時期ならではの混沌(こんとん)を整備していく過程を楽しむ女性エンジニアとクリエイター。彼女たちは、行政と都民の未来をどのように変えていくのか――。

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東京全体のDXを技術で支える

 GovTech東京は冒頭に述べたように、都庁だけではなく都内区市町村も含めた、東京全体のDXを進めるために設立された組織だ。「デジタルの力で住民一人一人の生活を豊かに、そして幸せに」をミッションに、「情報技術で行政の今を変える、首都から未来を変える」をビジョンに掲げている。

 具体的に掲げている事業(サービス)には、都庁各局DX、区市町村のDXやデジタル化の支援、自治体間のデジタル基盤の強化や共通化、デジタル人材の確保や育成、データ利活用推進、官民が共創するサービス創出などがある。

 象徴的な存在となるのが、2025年2月にリリースされた「東京アプリ(東京都公式アプリ)」だ。東京都のデジタルサービス局が全体戦略や政策面を担い、GovTech東京がプロダクト設計、構築、UI/UX(ユーザーインタフェース/ユーザーエクスペリエンス)デザインなどの技術面を支えている。

 廣瀬氏や吉田氏は都庁各局DXや区市町村DXに関するプロジェクトに関与しており、新たなデジタルサービスを提供する時に上流工程から参画したり、UI/UXの改善をアドバイスしたり、手広く支援している。少し前までアナログだった世界なので、デジタルな仕組みを整備したり、属人化していた習慣を変えたり、基本的なところから変革しているようなところも見受けられる。


中高生女子向けSTEM(科学、技術、工学、数学)職場見学ツアー「Girls Meet STEM」でサポーターを務める廣瀬氏 外部向けイベントにも積極的に携わる

 GovTech東京の仕事は、上流工程のコンサルティングや事業者との調整だけではない。東京アプリの内製化が発表されているように、自分たちでがっつり開発することもある。内製開発体制作りの準備もある。開発未経験者への教育もある。共通基盤も作る。要するに「何でもやる」だ。

 民間企業でITの経験を積んだエンジニアから見たら、アナログでトラディショナルな世界で経験を重ねてきた都庁職員とDXの仕事をするのは、ギャップがあり過ぎてハードルが高そうに見える。しかし、そうでもなさそうだ。

 背景には人口減少がある。どの業種でも同じだが、公務員も例外ではない。1人に課せられる仕事が増えてくるのでデジタル化による生産性向上は喫緊の課題だと多くの職員が認識している。そんな空気があるため、デジタル化の助っ人となる廣瀬氏や吉田氏の存在は素直に歓迎されている。

 都庁の職員と一緒になって仕事を進めるシーンでは、吉田氏はあえて「民間ではこういう感じでしたよ」とアイデアを提案する場合もあるという。廣瀬氏も「相手の考えを尊重しながら、自分の意見を伝えるよう心掛けています」と言う。

 大事なのは互いへのリスペクトだ。都庁職員は行政、GovTech東京の職員はITの専門家だと認め合い、スムーズに話が進んでいるという。吉田氏は「入る前は大丈夫かな、戦えるかな……と心配していたところもありましたが、思っていたよりも都職員の皆さんが柔軟で誠実で。疑いなくシュッと受けとめてくれて。仕事がやりやすいです」と話す。

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