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アジャイルのイテレーションを効率的に進めるためには? 5つの注意点を解説詰め込み過ぎは厳禁

TechTargetは2025年2月19日、「アジャイルにおけるイテレーション計画の立て方」に関する記事を公開した。イテレーションの利点をうまく使えばプロジェクトを成功に導けるだろう。一方で、注意すべき点も多い。本稿では5つの注意点について説明する。

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 TechTargetは2025年2月19日(米国時間)、「アジャイルにおけるイテレーション計画の立て方」に関する記事を公開した。

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アジャイルソフトウェア開発のイテレーションを計画する方法(提供:TechTarget)

 従来型のプロジェクトマネジメント(ウオーターフォール)の特徴は、立てた計画を順次実行する点にある。そのため、開発に着手する前に、詳細なビジネス要件定義書や実行計画などを含む包括的な計画を策定する必要がある。一方、アジャイル開発は反復的かつ漸進的な手法を採用している。短期間の反復作業(イテレーション)を通じて、小さな単位で製品機能を継続的に提供し、変化する要件に柔軟に対応することを重視している。

 イテレーションの利点を理解した開発チームは、プロジェクトの成功確率を高められるだろう。本稿では、効果的なアジャイルイテレーション計画の立て方を紹介する。

アジャイルイテレーション計画の例

 アジャイルのイテレーション計画を立てる場合、以下のような点に注意が必要だ。

  1. イテレーション計画は情報収集から始める
  2. 最初のイテレーションは簡素にする
  3. 顧客にできるだけ早く成果を届けられる計画にする
  4. データとフィードバックを基にして次の計画を立てる
  5. 実用的価値を前提とした計画を立てる

 ここからは、自分のチームがeコマース(電子商取引)サイトの立ち上げを準備していると仮定して、上記の注意点それぞれにつき説明する。

1.イテレーション計画は情報収集から始める

 アジャイルは、フィードバックとイテレーションを重視し、変化を受け入れながら製品を継続的に改善する開発手法だ。そのため、開発に着手する前にフィードバックや知見を集めることが重要になる。初期調査や顧客インタビューを通じて、チームは製品や市場について多くを学び、データと洞察を集めて確信を深めることができる。

 ただし、この時点ではまだ多くの仮定が残っていることを忘れてはならない。製品が本当に市場で成功するかどうか、企業が正しい方向に投資しているかどうかは、この段階ではまだ分からないからだ。初期の調査が終わったら、チームはイテレーション計画のセッションに参加することになる。

2.最初のイテレーションは簡素にする

 チームが「必要なスキルは既に備わっており、求められる全ての機能や特徴を1回のイテレーション内で実現可能だ」と過信しているケースはある。だが、仮にスキルやコラボレーションなどが十分だとしても、最初から完全なものを目指してしまうと、製品の構造が複雑になったり開発コストが高く付いたりする可能性がある。特に、開発者数人で構成された小規模なチームにとって、全ての機能を1回のイテレーション(通常は約2週間)内に提供するのは非現実的だ。

 そのため、最初のイテレーションでは、まず仮定を検証するため、最低限の機能を備えたものを構築することに集中すべきだ。アジャイルでは、リスクのある仮定を早い段階で洗い出すことが推奨されている。例示した電子商取引プロジェクトで言えば、最初のイテレーションでは「MVP」(Minimum Viable Product)を念頭にしてサイト構成を考えるべきだ。結果として、チームは「シンプルな商品カタログ」「ショッピングカート」「基本的な購入処理機能」「請求システム」といった最小限の構成で開発を始められるようになるだろう。

 さらに簡素化を図るためには「ルールオブワン」(Rule of One)の導入を検討する。これは簡単に言えば、まず1つの商品だけを扱うという方法だ。特定の1冊の書籍や1種類の衣料品といった具合に商品を絞り込むことで、構成の複雑さが抑えられ、初期段階ではショッピングカートすら不要になる可能性がある。

 最初のイテレーションを簡素化するもう一つの領域は、「配送」と「決済」の仕組みだ。最初から多様な選択肢を用意するのではなく、まずは国内向けの単純な配送手段と、基本的な請求処理、例えばセキュアなクレジットカード決済や「Google Pay」などの導入にとどめておく。最初のイテレーションで「PayPal」などの支払い手段を実装するのは非現実的なため、避けるべきだ。

3.顧客にできるだけ早く成果を届けられる計画にする

 アジャイル計画では「仮定の検証を伴わない高機能な製品の構築」よりも「顧客への迅速な提供」に重きを置く。つまり、初回のイテレーションにおいて、洗練されたデータベースは必ずしも必要ではなく、多くの処理を手作業で対応したり、データをローカルファイルに保存したりしてもよい。商品在庫を持たず、市場需要に応じて近くの店舗から製品を調達するといった計画さえ可能だ。

4.データとフィードバックを基にして次の計画を立てる

 計画や実装機能の優先順位付けは、データに基づき、顧客中心にしなければならない。そのため、初期製品をリリースしたら、すぐにデータ収集を始めるべきだ。

 ここで適用すべきなのが「最終責任時点」(Last Responsible Moment)という考え方だ。これは、選択肢を維持できる最後の安全なタイミングまで判断を保留するというものだ。例えば「いつ新しいデータベースに投資すべきか」「ショッピングカートにより高度な機能を追加すべきか」といった判断は、ユーザーからのフィードバックをギリギリまで集め、それを基に実施すべきだ。

5.実用価値を前提とした計画を立てる

 アジャイルでは、包括的なドキュメントよりも、動作するソフトウェアを優先する。ドキュメントは重要だが、アジャイルチームの最優先事項は、ユーザーに価値ある機能を提供することだ。このアプローチによって、製品は継続的に進化し、顧客ニーズに応え続けることができる。

 イテレーション計画は、こうしたアジャイルの価値観を具体的に反映する工程だ。限られた期間内で提供可能な機能を見極め、変化に柔軟に対応しながら、検証可能な単位で進めていく点において、ウオーターフォールの計画手法とは異なる。フィードバックと協調を重視した反復的な進め方は、変化の激しい市場環境において、より実践的で適応力の高い手法と言える。

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