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「AIファーストで業務全体を再設計」している企業、既に25%「AIを場当たり的に導入する企業」は減少

日本企業の構造的な課題は「業務標準化の遅れ」「データのサイロ化」など。

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 日本IBMは2025年9月12日、AIエージェントおよびエージェント型AIに関するグローバル調査の日本版『AIを「投資」から「価値創出」へ』を公開。エージェント型AIを活用した業務プロセスは、現在の3%から2026年までに25%へと急拡大。回答者の70%が「エージェント型AIは自社の将来にとって重要」とし、積極的な試験導入を奨励していることが明らかになったという。

 調査はIBM Institute for Business Value(IBV)が世界の経営層2900人を対象に実施したもの。企業はAIエージェントを、インテリジェントオートメーションを進化させる新たな手段として位置付けており、経営層の83%が「2026年までに業務効率の向上」に、71%が「業務プロセスや環境の変化への自律的な適応」を期待していた。


『AIを「投資」から「価値創出」へ』の一部データ(提供:日本IBM

 「エージェント型AI導入がもたらすメリット」としては、「意思決定の向上」(69%)、「自動化によるコスト削減」(67%)、「競争優位性の実現」(47%)、「従業員の専門性を組織全体で共有・活用」(44%)、「人材定着率の改善」(42%)が上位に。その他、「2024年時点でAI投資はIT予算の12%を占め、2026年には20%に達する見込み」であることや、「AI投資の64%が中核業務に集約」「AIを場当たり的に導入する企業は19%から6%へと減少」する傾向が分かった。

 また、調査対象企業の既に約25%が、「業務プロセスの一部をAIで効率化するのではなく、AIを前提に業務全体を再設計するAIファーストなアプローチを採用」。「AIファースト」な企業の半数以上が、「収益成長率と営業利益率が改善した」と回答したという。

 一方、日本企業が直面する構造的な課題としては、「業務パッケージの未活用」「業務標準化の遅れ」「データのサイロ化」が示唆されたという。同社では「これらの課題を克服するためには、AI導入を部分最適ではなく全社最適として捉え、業務プロセスの再設計やデータ統合、KPIに基づくプロジェクト運営などを通じて、持続的な価値創出を目指す姿勢が求められる」としている。

 実際、多くの企業がAI活用に取り組んではいるが、「議事録作成」のような局所的活用にとどまるなど、現時点では「業務プロセスに埋め込む」「プロセスを変革する」レベルにまで至っていない例が多い。一方で、昨今は「シャドーAI」の問題も注目されるなど、かつての“RPA(Robotic Process Automation)ブーム”と酷似した状況が目立っている。効率化やコスト削減にとどまる例も多かったDX(デジタルトランスフォーメーション)と同じ轍を踏まないためには、活用を現場だけに任せず、トップのリードや全社的に取り組むスタンスが望まれる。

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