多様化、複雑化したITインフラ管理の特効薬となるか――Microsoft Operations Management Suite:Microsoft Azure最新機能フォローアップ(11)(3/3 ページ)
マイクロソフトはクラウド時代に対応する管理ソリューション「Microsoft Operations Management Suite(OMS)」の提供を開始しました。Microsoft OMSは、ハイブリッドクラウド環境の管理に必要とされる新たな管理シナリオを提供します。
管理シナリオ4:セキュリティとコンプライアンス
Microsoft OMSでのセキュリティとコンプライアンスの管理は、前述したOperational Insightsのソリューションパックで実現します。「Malware Assessment」ソリューションパックでは、検出したマルウェアの情報を確認したり、PC/サーバがマルウェア対策ソフトウェアで保護されているかどうかを監視したりできます(画面14)。2016年1月時点で、Malware Assessmentは、System Center Endpoint ProtectionとAzure仮想マシンに追加したMicrosoft Antimalwareに対応しています。

画面14 「Malware Assessment」では、PC/サーバのマルウェア対策ソフトウェアの導入状況や実際に検出したマルウェアの情報などを監視、確認できる。画面はテスト用マルウェア「EICAR」の感染履歴
「System Update Assessment」ソリョーションパックでは、PC/サーバの更新プログラムの適用状況を監視できます(画面15)。例えば、提供後30日以上が経過しているにもかかわらず、更新プログラムを適用していないPCの一覧などを確認できます。また、「Security and Audit」ソリョーションパックでは、Windowsのセキュリティログを基に、ユーザーのログイン履歴や実行中のプロセス一覧など、セキュリティに影響を与えるアクティビティを監視できます(画面16)。
価格は従量課金、System Center導入済みなら安価なライセンスも
最後に、利用料金について触れておきましょう。Microsoft OMSはMicrosoft Azureのサービスで構成されているため、表2のような従量課金となります。Azure BackupとAzure Site Recoveryは、保護する仮想マシン単位での課金となるので試算は容易でしょう。Azure Automationはジョブの実行時間、Operational Insightsは使用したデータ量による課金となるので、試算が難しくなります。Operational Insightsのコンソールからデータ量を確認できるので、テスト運用を行えば、おおよその料金は試算できるでしょう。
サービス | 価格 |
---|---|
Operational Insights | 1GB当たり、234.60円から |
Azure Automation | 1分当たり、0.12円から |
Azure Backup | 仮想マシン1台当たり、1カ月510円から |
Azure Site Recovery | 仮想マシン1台当たり、1カ月1632円から |
表2 Microsoft OMSの従量課金 |
また、System Centerを所有している場合は、特別なライセンスである「Microsoft OMSアドオン」を利用できます。表3のように、所有しているSystem Centerのエディション(StandardまたはDatacenter)で、利用可能なMicrosoft OMSアドオンは異なります。
サービス | Standard | Datacenter |
---|---|---|
Operational Insights | 100GB | 500GB |
Azure Automation | 約167時間分 | 約833時間分 |
Azure Backup | 仮想マシン2台 | 仮想マシン10台 |
Azure Site Recovery | 仮想マシン2台 | 仮想マシン10台 |
価格(年間)※ | 7万8153円 | 39万765円 |
プロモーション価格(年間)※ | 4万5372円 | 22万6920円 |
単体購入(年間)※ | 10万1448円 | 50万7240円 |
表3 Microsoft OMSアドオンのライセンス料(※参考価格。また、プロモーション価格は、2016年6月30日までの期間限定) |
まずは、Microsoft OMSを試してみよう
Microsoft OMSは提供が開始されているサービスですので、実際に触れてみることができます。Microsoft Azureのサブスクリプションを所有していればすぐに試用できますし、Microsoft Azureの無償試用版でも全サービスを試すことができます。
- Microsoft Azure 無料試用版(マイクロソフト)
Operational Insightsに興味がある場合は、Operational Insightsのみが利用可能で登録の手続きが簡単なMicrosoft OMSの無償評価版でテストすることもできます。
テストシナリオが欲しい場合は、マイクロソフトが提供している「Microsoft Azure自習書シリーズ」の「OMSによるハイブリッドクラウドの管理」が参考になるでしょう(画面17)。この自習書は、Microsoft OMSの導入から一連の機能の使い方までをステップバイステップ形式で学習できます。
- Azure自習書シリーズ OMSによるハイブリッドクラウドの管理(マイクロソフト)
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筆者紹介
吉田 かおる(よしだ かおる)
NECマネジメントパートナー株式会社に所属し、マイクロソフト製品トレーニングの技術マネージャーを担当。トレーニングのキャリアは20年以上と長く、古くはOS/2やMS-DOS、現在は仮想化やクラウドなどを担当している。また、Microsoft MVPを2004年から13年連続で受賞している。趣味は、散歩と料理(作る方)。
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