デール博士と5つのキャリア志向:エンジニアも知っておきたいキャリア理論入門(6)(2/2 ページ)
本連載は、さまざまなキャリア理論を紹介する。何のため? もちろんあなたのエンジニア人生を豊かにするために。キャリア理論には、現在のところすべての理論を統一するような大統一理論は存在しない。あなたに適した、納得できる理論を適用して、人生を設計してみようではないか。
5つのキャリア志向性別「基本的なキャリア戦略」
あなたは、5組の人物のだれに共感を覚えましたか? 最も共感を覚えた人物とあなたは、おそらく同じようなキャリアの志向性を持っています(シャイン理論と異なり、どの志向性かを判断できる調査票のようなものは、私の知る限りではありません)。
前回のシャイン理論でも書きましたが、自分が持つキャリアの志向性が明確になるのは、転職や出産など人生の節目を迎えたときです。例えば、西村夫婦は、年老いた両親の面倒を見なければならない状況に直面したことで、「バランス志向」の方向性を選択しました。
最後に、それぞれのタイプが採用すべき「基本的なキャリア戦略」を紹介しましょう。
●前進志向(Getting ahead)の人
- 仕事を最優先とせよ
- キャリアプランを立て、迅速に動け
- スポンサー(支援者)を得よ
- 本当にやるべきことだけやれ
- 挑戦し続けよ
●安定志向(Getting secure)の人
- 適切な会社を選べ
- 会社の文化・社風を知り、適応せよ
- 組織のニーズを優先せよ
- 内輪の仲間に入れ
●自由志向(Getting free)の人
- 求められる成果を出せ
- 勝負の行方を読み、先んじよ
- 限られた情報を十分に集めて活用せよ
- ここ一番の勝負どころで活躍せよ
- 気の合う仲間を増やせ
●挑戦志向(Getting high)の人
- 求められる成果を出せ
- より良い結果を目指せ(単なる結果ではなく、美しさがあるかどうかなど)
- 成長機会のある仕事を選べ
- 説得力を高めよ
- チャンスを逃すな
●バランス志向(Getting balanced)の人
- 求められる成果を出せ
- スポンサー(支援者)を得よ
- 自分の立てたキャリア戦略にこだわれ
- 魅力的な仕事のオファーに惑わされるな
- タイミングを見極めろ
それぞれの戦略を客観的に眺めると、賛否両論がありそうですが、自分が該当するキャリアの志向性における基本戦略としては、おおむね納得していただけるのではないでしょうか。
参考文献
▼『Managing The New Careerists』
C.Brooklyn Derr著、JOSSEY-BASS
『Training Games for Career Development』
James J. Kirk、Lynne D. Kirk著、Mcgraw-Hill
筆者紹介
松尾 順(まつお じゅん)
1964年福岡県生まれ。早稲田大学商学部出身。市場調査会社、IT系シンクタンク、広告会社、ネットサービスベンチャー、ネット関連ソフト開発・販売会社を経て、2001年より有限会社シャープマインド代表。マーケティングリサーチ、広告プロモーション企画&プロデュース、Webサイト開発企画&プロデュースを多数手掛ける一方、キャリア理論や心理カウンセリング、コーチングを学び、主に個人を対象とするキャリアアドバイザーとしての仕事を増やしてきている。顧客心理の理解向上を目指す「マインドリーディング・ブログ」主宰。「シナプスマーケティングカレッジ」講師。
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