日本企業の92%が「AIを悪用した攻撃への対策ができていない」と回答 アクセンチュアが調査結果を発表:「AIシステムを守るセキュリティ」と「セキュリティのためのAI」
アクセンチュアは、調査レポート「サイバーセキュリティ・レジリエンスの現状2025」を発表した。AIの急速な普及によってサイバー脅威の規模や巧妙さが増しており、既存のサイバー防御態勢では対応が追い付いていないことが明らかになった。
アクセンチュアは2025年7月28日、調査レポート「サイバーセキュリティ・レジリエンスの現状2025」(State of Cybersecurity Resilience 2025)を発表した。同レポートは、大企業でサイバーセキュリティを担当するエグゼクティブを対象に実施した調査の結果をまとめたもの。
調査は世界17カ国(北米、南米、欧州、アジア太平洋、中東、アフリカ)で、売上高10億ドル超の大企業に所属する最高情報セキュリティ責任者(CISO)または最高情報責任者(CIO)を対象に実施し、2286人から有効回答を得た。レポートでは、AI(人工知能)と企業のセキュリティに関して、「AIのためのセキュリティ」(企業のAIシステムの安全対策)と「セキュリティのためのAI」(AI技術を活用した防御強化)の2つの側面から分析している。
77%が十分な「AIのためのセキュリティ」を確保できていない
AIシステム自体の安全対策の現状について、調査結果は深刻な課題を浮き彫りにした。全体の77%(日本では82%)の企業が、重要なAIスモデルやデータパイプライン、クラウドインフラを保護するために必要なセキュリティ対策を十分に講じられていないことが判明。また、生成AIの活用に関して明確なポリシーと研修を導入している企業の割合は、わずか22%(日本は19%)に過ぎない状況だった。
AIシステムの包括的なインベントリー(システムに関する情報の一覧管理)を整備している企業は極めて少なく、データ保護体制も依然として不十分な状態にあることが分かった。機密情報の保護に暗号化技術やアクセス制御を十分に活用している企業の割合は、全体の25%(日本は31%)にとどまっている。
こうした課題に対し、アクセンチュアは3つのアクションを提言している。1つ目は、AIによる環境変革を前提としたセキュリティガバナンスの確立だ。同社は「目的に即した枠組みと運用モデルの構築が必要だ」としている。2つ目は、生成AIの安全な活用に向けた対策強化として、開発、展開、運用の各プロセスにセキュリティを組み込み、設計初期からセキュアなデジタルコアを構築することだ。3つ目は、検知能力の強化、AIモデルのテスト、対応メカニズムの高度化によって、安全な基盤を備えた回復力のあるAIシステムを維持することだ。
AIを悪用した攻撃への対策は「セキュリティのためのAI」
AI技術を活用したサイバー攻撃に対する防御態勢の整備状況については、調査対象の90%(日本では92%)の企業が十分な対策を講じられていなかった。アクセンチュアは「統一されたサイバーセキュリティ戦略とそれを支える必要な技術力の双方が不足している」と指摘している。
同社はサイバーセキュリティの成熟度を3つのゾーンに分類。最も成熟度が高い「変革準備完了ゾーン」(Reinvention Ready Zone)に分類された企業は全体の10%(日本は8%)、中間層の「進展中ゾーン」(Progressing Zone)は27%(日本は32%)を占める。最もリスクが高い「脆弱ゾーン」(Exposed Zone)に該当した企業は63%(日本は60%)で、このゾーンに属する企業はサイバーセキュリティ対策が不十分で、脅威に対して受動的な対応にとどまっている。
注目すべきは、変革準備完了ゾーンにある企業の優れた防御実績だ。これらの企業は高度なサイバー攻撃に遭遇する危険性が69%低く、攻撃をブロックする効果も1.5倍と高いという。さらに、IT環境とOT(運用技術)環境全体の可視性は1.3倍向上し、技術的負債を8%削減、顧客からの信頼も15%向上している。
変革準備完了ゾーンに到達するための具体的なアクションの一つとして、アクセンチュアは生成AIを活用したセキュリティプロセスの自動化による、サイバー防御の強化と脅威の早期検出の実現によってサイバーセキュリティの在り方自体を再構築することを提言している。
アクセンチュアのグローバルデータ&AIセキュリティの責任者、ダニエル・ケンジオール氏は、次のように述べている。「生成AIの急速な進化は、サイバーセキュリティの領域において根本的なパラダイムシフトを引き起こしている。AIを悪用したサイバー攻撃など従来の枠組みでは対応しきれない新たな課題とともに、企業のセキュリティ対策におけるAI活用の可能性の大きさも示唆している」
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