ゲーミフィケーション導入でソフトウェア開発効率向上 近畿大学の研究グループ:「時間割引率」と作業時間の関係性も調査
近畿大学の研究グループは、ゲーミフィケーションを導入することでソフトウェア開発の作業効率が高まることを明らかにした。プログラムの作成時間が平均で約20%短縮した。
近畿大学理工学部情報学科の准教授である角田雅照氏と同大学経済学部の教授である佐々木俊一郎氏らの研究グループは2019年9月18日、ゲーミフィケーションを導入することでソフトウェア開発の作業効率が高まることを明らかにした。同研究グループは人工知能やFinTechなどのシステムの開発にも応用が期待できるとしている。
ゲーミフィケーションとは、ゲーム以外の作業にゲーム要素を取り入れることによって、作業者のやる気を刺激する方法。例えば得点を与えたり、グループ内で順位を付けたりする。近畿大学の研究グループは、プログラム開発作業にゲーミフィケーションを導入した。具体的には、作業時間の短さが得点となるルールを決め、13人の学生に作業させた。その結果、プログラムの作成時間は平均で約20%短縮したという。
一般に、こうしたルールを与えると、心理的焦りによって作業に悪影響を与えることがある。だが今回の実験では、こうした悪影響は見られなかった。
せっかちの特徴である「時間割引率」
一方、作業する人の性格によって、ルールの効果が異なる可能性があることが分かった。そこで、この点を行動経済学に基づいて、性格とルールの効果について検証した。せっかちな性格だと作業時間を気にすることによる影響があるとの仮説を立てて、せっかちの特徴である「時間割引率」と作業時間の関係性を調べた。その結果、性格は作成時間の短縮効果に影響を与えないとの結論に至ったという。
なお、時間割引率とは、将来の価値よりも現在の価値を重視する傾向のこと。今すぐにもらえる報酬よりも将来もらえる報酬の方が大きく、今か将来のどちらか一方の報酬だけを受け取れる場合、将来の報酬が今よりもどの程度高ければ将来を選択するかの傾向だ。例えば、行列に並んでグルメ店で食事をするか、すぐに買えるコンビニのおにぎりで済ませるか、あるいは夏休みの宿題をすぐに済ませてしまって残りの期間を遊ぶか、夏休みが終わるまで遊んでぎりぎりになってから宿題に取り掛かるかなど。時間割引率が高い人は、今の楽しみを我慢できない傾向にあり、「せっかち」な性格だとされる。
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