分断されたAIコーディング界隈を統合する「Agent HQ」 GitHubが新構想を発表:利用状況の可視化やAIアクセスを管理する新たな機能もリリース
GitHubは、OpenAIやAnthropicなどの主要なAIコーディングエージェントを統合する「Agent HQ」構想を発表した。AIの利用状況の可視化やAIアクセスを管理する機能も提供するという。
GitHubは2025年10月28日(米国時間)、主要なAI(人工知能)コーディングエージェントをGitHubに統合する「Agent HQ」構想を発表した。
Anthropic、OpenAI、Google、Cognition、xAIなど、各社がコーディングエージェントをリリースしている。GitHubは「現在のAIを取り巻く環境は、Git登場以前の混沌とした世界をほうふつとさせる。開発者は強力なAI機能にアクセスできるが、それぞれが連携せず、分断されている」とする。
そこでAgent HQ構想では、サードパーティー製の主要なAIコーディングエージェントを、GitHubフローにネイティブ対応させる計画だ。今後数カ月以内に、GitHub Copilotのサブスクリプションの一部として、Anthropic、OpenAI、Google、Cognition、xAIのコーディングエージェントが、GitHub内で直接利用可能になるとしている。
構想の最初の取り組みとして、GitHub Copilot Pro+ユーザーが「Visual Studio Code Insiders」(VS Code Insiders)を通じて、OpenAIの「Codex」を直接利用可能になるという。
GitHubは、Agent HQ構想で提供されるアップデート内容について、次のように説明している。
複数のエージェントを指示、管理する「ミッションコントロール」を実装
Agent HQ構想を実現するための中核となる機能が、「ミッションコントロール」だ。GitHub.com、VS Code、モバイルアプリ、CLI(コマンドラインインタフェース)など、開発者が作業する場所を問わず、複数のコーディングエージェントに対して作業を指示したり、タスクの実行状況を監視したりできるようになるという。
またVS Codeにもミッションコントロール機能が搭載され、単一の画面から各プラットフォームで実行されているコーディングエージェントを確認できるようになる。
VS Codeで3つの機能を提供
VS Codeでは、次の3つの機能に対応し、コーディングエージェントの計画、カスタマイズ、接続を支援する。
- Planモード:開発者と対話しながら作業計画を策定する機能だ。開発者が承認した計画に基づいてタスクを実行するため、要件の誤解や考慮漏れを防ぎ、GitHub Copilotで生成されるコードの精度を向上させることができる
- AGENTS.mdのサポート:プロジェクト内に「AGENTS.md」ファイルを作成して、プロジェクト固有のコーディングルールやガイドラインをGitHub Copilotに指示し、プロンプトを再入力することなく、エージェントの振る舞いを制御できる
- GitHub MCP Registryのサポート:MCP(Model Context Protocol)サーバを1クリックでインストール、有効化できる
「GitHub Code Quality」(パブリックプレビュー)
組織全体のコードの保守性、信頼性、テストカバレッジを体系的に改善するための可視性やガバナンス機能を提供する。GitHub Copilotのセキュリティチェックが拡張され、変更がコードの保守性に与える影響も調査する。
「Copilotメトリクスダッシュボード」(パブリックプレビュー)
組織全体におけるGitHub Copilotの利用状況や、開発ワークフローに与えている影響をメトリクスで可視化するダッシュボードを提供する。
エンタープライズ向けのAIアクセスを管理する「コントロールプレーン」
AIエージェントへのアクセスを管理するガバナンスレイヤーを提供する。セキュリティポリシーの設定、監査、ロギング、アクセス管理を一箇所で行えるようになる。管理者は、許可するエージェントの制御やモデルへのアクセス管理ができるようになる。
開発現場に限らず、企業が許可していないAIが使われる、いわゆる「シャドーAI」の課題が顕在化しつつある。IT部門にとって、セキュリティポリシーの運用やコスト管理を困難にする「ガバナンス上の課題」だ。GitHubの新構想は、開発者の「多様なAIコーディングエージェントを活用したい」という利便性を満たしつつ、管理者の「利用状況を把握し、統制したい」という要求にも応える姿勢を明確にしたものといえるだろう。
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