AIならPMやデザイナーでもボタンの色を変更できる プロダクトチーム向け開発支援ツール「Matter」発表:軽微なタスクから開発者を解放
JetBrainsは、プロダクトチーム向けの開発支援AIツール「Matter」を発表し、早期アクセスプログラムを開始した。
JetBrainsは2025年10月23日(チェコ時間)、プロダクトチーム向けの開発支援AI(人工知能)ツール「Matter」を発表した。同日、早期アクセスプログラム(EAP)を開始した。
Matterは、AIを活用したクラウドベースのツールだ。新たなコードを書くことなくプロダクトを改善するためのアイデアを適用したプロトタイプを作成したり、テストを行ったりできるようにするという。
PMやデザイナーがAIで「既存コード」をベースにプロトタイプを作成
JetBrainsは、Matterによる開発プロセスの流れを次のように説明している。
- プロジェクトに接続:既存のGitHubリポジトリ(Webベースのプロジェクト)に接続すると、本番のコードに影響を与えない隔離された環境が構築される
- チームを招待:PM(プロダクトマネジャー)、デザイナー、開発者などメンバーを招待し、コラボレーションを開始する
- Matterで修正:シンプルな自然言語によるプロトタイプを使用し、コーディングなしでWebアプリケーションを修正できる
- 確認と共有:変更はリアルタイムに反映され、チームの参加者やステークホルダーと共有できる
- 成果物の共有:Matterのインタフェースを通じてGitHubのプルリクエストを作成したり、Issueの下書きやドキュメントを自動生成したりできる
JetBrainsは「開発者は『ボタンの色を変更する』といった軽微なインタフェースの調整やテキスト修正作業から解放され、高度なエンジニアリング作業に多くの時間を割けるようになる。PMやデザイナーは開発者とのスケジュールを調整せずに、本番のコードベースを通じて、自律的にインタフェースの変更や新しいフローのテストが可能になる。これらにより仮説を迅速に検証し、新しいアイデアを市場投入するまでの時間を短縮できる」と述べている。
JetBrainsが掲げるのは、プロダクト開発におけるPMやデザイナーと開発者の間で生じるコミュニケーションや作業依頼といったボトルネックを、AIによって解消することだ。軽微な修正を依頼するチケットが減り、開発者がアーキテクチャ設計やコアとなる機能の開発に集中できることは、生産性向上などプロダクト開発の大きなメリットにつながると考えられる。
一方、PMやデザイナーが自律的に修正できる範囲が広がることは、品質やガバナンス面で新たな課題に直面する可能性もある。開発者の設計思想やコーディング規約から逸脱した変更が、AIによって容易に持ち込まれるリスクがあるためだ。AI開発支援ツールを活用する上では、変更内容をどのように評価し、品質を保証するのか、並行して検討する必要があるだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
AIエージェントは「活用、導入」から「最適化」のフェーズへ 課題は“統合の複雑さ”
クラウドエースは、AIエージェント活用の実態調査結果を公開した。それによると回答者の51.4%が「既存システム連携の難しさ」を課題と捉えていることが分かった。
AI活用で他社を上回る成果を生み出す企業の共通点とは? Ciscoの年次調査
Cisco Systemsは、企業におけるAIの投資、導入、活用状況をまとめた年次調査「2025 AI Readiness Index」を発表した。全ての指標で他社を上回っている企業を先行者と位置付け、共通点をまとめている。
IBM、複雑なネットワークトラブルの「原因特定」を自動化するAIエージェントを発表
IBMはAIでネットワーク運用を支援するソフトウェア「IBM Network Intelligence」を発表した。ネットワーク障害の検知や原因特定をAIが担うことで、負荷が高まるネットワーク運用の課題に向き合えるようにする。