「SNS上のプライバシーは自分だけでは守れない」、バーモント大学の研究:一切投稿しなくても内容を予測できる
バーモント大学とアデレード大学の研究チームによれば、ソーシャルメディアにおけるプライバシーは個人では守ることができず、周囲の人の発言に左右されてしまうことが分かった。
米バーモント大学とオーストラリアのアデレード大学の研究チームによる最新の研究によれば、ソーシャルメディアにおいて個人のプライバシーを守ろうとしても難しいことが分かった。例えば、ある個人がTwitterに加入していなかったとしても、「友人」のオンライン投稿から、投稿した場合の傾向が分かってしまう。
研究によれば、ある人物とつながりがある8〜9人のツイートに含まれる情報を得ることができれば、その人物が投稿するであろうツイートを、その人のTwitterフィードを直接見ているかのように正確に予測できることを示した。
また、この研究により、ある人物がソーシャルメディアプラットフォームへの登録を解除しても(あるいは、全く登録しなくても)、その友人のオンラインの投稿や文章から、その人の将来の行動について、95%の「潜在的な予測精度」(potential predictive accuracy)が得られることが分かったという。
この研究は2019年1月21日に「Nature Human Behavior」で発表された。
研究チームは、2014年4月の時点で英語でツイートしていたTwitterユーザーを研究対象とした。非アクティブなアカウントや著名人のアカウント、botアカウントを取り除き、残った1万3905人から、3085万2700件以上の公開ツイートを収集し、このような結論を得た。
高度にネットワーク化された社会では「個人」は隠れることができなくなる
「Facebookなどのソーシャルメディアプラットフォームに登録するとき、ユーザーは、自分の情報を提供することを覚悟するが、実は友人の情報も提供することになる」と、研究リーダーを務めたバーモント大学の数学教授ジェームズ・バグロー氏は語る。
この研究は、「プライバシーの根本的な本質は何か」「高度にネットワーク化された社会では、個々人の選択やアイデンティティーはネットワークにどのように組み込まれるのか」という深い問題を提起する。また、ある人がソーシャルメディアに登録したことがなくても、あるいは登録を解除しても、少なくとも理論上は、企業や政府などがその人について、友人が発信した情報から、正確にプロファイリング(支持政党、お気に入りの商品、宗教活動などについての)を行えることを示す研究でもある。
バーモント大学の博士研究員で、現在はオーストラリア アデレード大学の応用数学の上級講師であるLewis Mitchell氏は次のように結論づけた。
「ソーシャルネットワークには、隠れられる場所がない」
FacebookやTwitterのようなソーシャルメディアプラットフォーム上での情報の流れは、抗議行動や国政選挙、商品ブランドの命運に大きな影響を及ぼすようになってきた。人々はこうしたプラットフォームで自分自身や友人について多くの情報を披露している。
研究者はこれまで、こうしたデータの動きから得られる予測可能性に、根本的な限界があるのかどうか分からなかった。これを解明することが、今回の研究の目的でもある。今回の研究では、ツイートの分析を通じて、ソーシャルネットワークが予測に関わる情報をどれだけ保持できるのかについて、数学的な上限があることも示した。
だが同時に、ある人の友人がソーシャルネットワークのユーザーであれば、当人がソーシャルネットワークのユーザーでも、あるいはユーザーでなくても、その人のプロファイリングや行動予測を行う上で、ほとんど違いがないことも示した。
「ソーシャルメディアプラットフォーム上のプライバシーは、自分だけではコントロールできない。友人の発言にも左右されてしまう」(バグロー氏)
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